時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

8日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~中国の今 「核心」の真価はいかに~

スタッフです。
8日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:「核心」となった習近平がたくらむ、1億人大移動計画から見えるもの

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【別格の存在を示す習近平氏】
本日は中国を取り上げたい。先日中央委員会総会が閉幕したばかり。その中で習近平氏は「核心」という「中心の中の大中心」という意味の位に位置づけたと発表。この「核心」という言葉は党指導者として別格の存在であることを意味する呼称として、最近の中国メディアに頻繁に登場している。

「核心」というのは、毛沢東や鄧小平、江沢民・元総書記に使われたが、 胡錦濤前総書記には用いられなかった。習氏は来年秋に開催される5年に1度の中国共産党全国代表大会度の大会で人事が決定するため、この時期に権威づけをしているのだろう。


【その主な要因は・・・】
自分は格別な存在になったということを世界に知らしめたわけだが、主な要因は来年秋に政治局常務委員7人が決定されることだと思う。定められた定年規定により68歳以上は中央政治局は退かなくてはならない。そのルールに則ると、習近平国家主席李克強首相は続投の予定だが、その他の5人は退かなくてはならない。

そのため、今回「核心」ということを発表すると共に、党員の政治活動の指針となる準則を定めた。これにより、引き締めの重点を 政治局常務委員や政治局員、中央委員ら「高級幹部」に置いたり、政権の求心力を維持するために「反腐敗」運動を続ける姿勢を明確に示すことで習近平一強体制をさらに強めた。


【日本の列島改造論に救いを求める!?】
背景には中国国内の経済状態が芳しくないため、ここで大胆な計画を進めていこうという思惑も見え隠れしている。この計画とは、中国は総人口13億7千万人のうち農村には6億2千万人の人口がいるが、その内の1億人を都市に移動させることを目標としている。そして、残った農村の跡地を再開発し、都市部に変える。その後、さらにそこに別の農民を移動させていく施策によって、経済を活性化させて行こうとしている。

中国経済は以前は2ケタ成長だったが、3年前から6~7%の成長率に留まり、実質は3~4%ともいわれる。いわば、田中角栄氏の「列島改造論」のようなことをしようとして、農民を労働者にしようともしている。


【強制移動により、各地でデモが頻発・・・】
中国では1958年以来、都市住民と農村住民は「戸籍」で区分され、 双方の移動は厳しく制限・管理されてきた。そのため農村の戸籍を持った人は、都市に行くことが難しかった。たとえ、行ったとしても医療や教育サービスを受けることができない。また、農民が農地を離れると土地の「使用権」を取り上げ、土地に縛り付けてきた。

ところが、今回の新たな施策により役人が突然来て「ここが再開発地区となったため、1ヶ月以内に出て行け」と告げている。その後農耕具を強引に奪い、仕事が出来ないよう追い込み、農民は強制的に都市部に移動させられている。

移動にあたって、土地の使用権の買取や職の斡旋はしてくれる。しかしながら、これまで農民として生きてきているのでなかなか新たな仕事は見つからない。労働者やアルバイトでなんとか食いつないでいる状態で不満がたまり、中国各地でデモが頻発しているという状況に至っている。


【カギは農村部への対応】
習近平氏は田中角栄氏の施策をまねしたかどうかは定かではないが、こうした施策によって経済の向上を図ろうとしているのだろう。

軍部においても軍のあり方を変えようとしていることから軍を辞めた人たちがデモを起こしている。さらに、党幹部に対する腐敗の締め付けが厳しくなり、党内部にも反発がある。

今後、今回の施策によって失業者が増える可能性もある。中国は「工業国家」になりたいと奮闘しているが、ポイントとしては農村部をどうするのかがカギであり、日本をまねた施策がうまくいけばよいが、これが上手くいかなかったときにどうなるのか「核心」の真価が問われるだろう。

※画像は中国農村部河南省

トランプ思想の軸は? まだ見えない政治哲学

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外務省をはじめとする日本の官僚にとっては、来年1月20日のトランプ政権発足までの約1ヶ月は、これまでになく頭の痛い厄介な月日になるだろう。まさかの大逆転で、ヒラリー・クリントン氏が敗北したため、各省庁とも外交チャネルを一から作り直さなければならないからだ。

アメリカでは政権が代わると、閣僚や官僚トップ、中堅どころが総入れ替えになり、その数は数千人に上るとされる。さながらワシントンD.C.の民族大移動が行われるのだ。閣僚や次官、次官補などの幹部は議会の承認が必要なので、1月20日までに全員が決まることはまずない。大体8割ぐらい決まれば“良し”とされるほどである。

■新たな人脈構築の苦労も
特に今回の場合は、オバマ大統領の後を継ぐとみられた同じ民主党の本命ヒラリー・クリントン氏が敗北したため、その影響は大きい。ヒラリー氏なら同じ民主党の人脈の中から発掘できる。オバマ大統領も支持を約束していたから政権移行はスムーズに出来るとみられていたし、ワシントンにある各国の大使館も新たな人脈作りにそれほど苦労をしないで済んだだろう。

しかし今回選ばれたトランプ新大統領はアメリカの政治経験、軍隊経験を持たない、いわば一匹狼的な不動産ビジネスマンだ。その上、トランプ氏の思惑、考え方は選挙中の発言を聞く限りTPP反対、NAFTA北米自由貿易協定)にも否定的だし、メキシコ国境に壁・フェンスを作り移民を入れない、不法移民のうち200-300万人に上る犯罪歴を持つ者も直ちに追い返すという激しさだ。

■今後は人事案がカギに
アメリカが戦後掲げてきた自由貿易、市場主義、移民受け入れなどの価値観には否定的で、保護主義思想、さらに女性蔑視や人種的偏見の発言も多い。アメリカの掲げてきた自由、民権、公正、包容力のあるアメリカ的思想を否定し保護主義的であり偏狭な人種差別さえ感じられる発言が多い。日本に対しては、世界を守る軍事的負担が少ないとか、農業の関税、特に牛肉に課している関税38%は高すぎるので、現行の対米自動車の輸出関税2%を牛肉の税率と同じにすることも考えるなどと発言。これまで積み上げてきた貿易ルールなどにも批判的だ。いわばアメリカ・ファーストの考え方でアメリカが有利となるようにルールを改正し、アメリカの経済をよくし、雇用を増やすと述べている。今後その方針を強行するか、修正しつつ海外とうまく調和してゆくかは“政権移行チーム”が選択する人事案にかかってくる。

■早くも懸念される移行チーム
政権移行チームの責任者にはマイク・ペンス次期副大統領(下院議員6期経験後、インディアナ州知事)が就任、政権の要となる首席補佐官には共和党の穏健派ラインス・プリーバス氏(共和党全国委員会委員長)、そして新たに設けた首席戦略官には右派の参謀役スティーブ・バノン氏(保守系オンラインメディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の会長)を充てると発表した。バノン氏は超右派で移行チームがはたしてうまく機能するか懸念されており、早くも内紛の報道も出ている。トランプ氏は早くもビジネスマンとしての手腕ではなくステーツマンとしての資質が問われている。

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マイク・ペンス氏(Wikimedia Commons)

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ラインス・プリーバス氏(Wikimedia Commons)

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スティーブ・バノン氏(Wikimedia Commons)

■安倍首相は世界の不安を拭えるのか
アメリカが戦後世界のリーダー役を担えたのは、軍事力、経済力が世界一だったからだけではない。アメリカが掲げる思想・価値観(自由、公正、人権尊重、多様な価値の承認、努力すれば報われる社会風土――等々)が、世界から支持されていたからだ。ロシアや中国などが世界の覇権を握るに至らず、崩壊したり、変容したのは、まさに社会主義的な思想、価値観に世界が共鳴しなかったからだろう。その意味でトランプ新大統領がどんな思想で世界を引っ張る基軸となるべき考え方を表明していくかのかが今後の最大の注目点だろう。過激な発言について一部では修正されつつあるが、本心はまだよく見えていない。世界中が1月20日までの人事、その後の所信表明で何を言うかに注目している。トランプ氏の一挙手一投足に、まだまだ大揺れすることだろう。安倍首相は先進国で最初に会う首脳だ。言うべきことは言い、世界のトランプ不安を取り除く責任は重い。

(この記事は日本時間18日、安倍ートランプ会談の内容が出る前に入稿したものです)
【Japan In-depth 2016年11月19日】

※トップ画像は安倍首相とトランプ氏の会談の様子。内閣広報室撮影

トランプ氏のFacebookには当日の会談感想が掲載された。
日本語訳:安倍晋三首相が私の自宅を訪れ、素晴らしい友情が芽生えたのは光栄なことだ。


トランプ氏の投稿を受けた安倍首相のFacebookへの投稿

19日(土) BS朝日「ザ・インタビュー」にインタビューアーとして出演 ゲスト:山本陽子様(女優)番組公式Facebookの情報が更新

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スタッフ。19日(土)に嶌がインタビュアーとして出演し、女優の山本陽子様をゲストにお迎えしたBS朝日「ザ・インタビュー」の画像が番組公式Facebookに掲載されました。

平幹二朗氏から会食の時にかけられ人生の転機となった言葉や、第二の母と慕う宇野千代氏からかけられた言葉から今後の抱負までお伺いいたしました。

明治座での公演を控え、楽屋にもお邪魔いたしました。山本様ご出演の「祇園の姉妹」は今月27日まで明治座にて上演中です。

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19日(土) BS朝日「ザ・インタビュー」にインタビューアーとして出演 ゲスト:山本陽子様(女優)

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スタッフです。今週土曜日19日のBS朝日「ザ・インタビュー」に嶌がインタビューアーとして出演し、ゲストに女優の山本陽子様をお迎えいたします。

 

高校卒業後、野村証券に入社。会社員生活や、つらかった日活入社後の生活から“視聴率女王”へ。自身がどん底の時に共演者・平幹二朗氏や、第二の母と慕う宇野千代氏からかけられた言葉など、芸能生活53年を迎えた今も猛進し続ける山本様の人生や素顔に嶌が迫ります。

番組公式FacebookにPR動画が掲載されましたので、合わせてご紹介します。

レガシーはハードよりハートで!!

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 2020年の東京五輪についてまわる言葉は「レガシー(legacy)」だ。1964年のオリンピックはいくつかのレガシー(遺産)を残し、今日も語り継がれているものが少なくない。新幹線、首都高速道路、国立競技場など目に見えるハードのものが多く、当時は高度成長期への入口にあたり、オリンピックの大義名分は日本のインフラを整備するには格好の〝ご印籠〟だった。

 2020年の東京五輪も財政難の時期ながら、将来へのレガシーをつくる都合のよい旗印となっている。立候補時(13年)の招致計画では7340億円の予算が、招致が決まった途端、各組織やスポーツ団体が予算を積み上げ、結局3兆円以上にふくらんだ。

 財政難の折りに”3兆円は多すぎるだろう”という常識論が高まり、”コンパクトで質素な五輪”という世論が高まった。しかし、各委員会、スポーツ団体とも多くは無視。競技団体理事は「議論を重ね作りあげてきたのに、思いつきで一気に壊すことはしないで欲しい。コスト削減は必要だが譲れないものがある」「競技団体に意見を聞くこともなく噂話で聞いたことを元にしているようで不信感がある」──など不満たらたらで、団体の抵抗が強い。

 すべての流れが変わったのは、小池百合子都知事の登場からだ。オリンピックの主催権は開催都市にあるため、その意見は無視できない。無駄のないコンパクトな五輪、情報をすべて公開、都民・アスリートファーストなどの原則をかかげ、それぞれの組織・団体に切り込み、都に調査チームを作って中間報告を行い、東京都の下で一元管理すると述べたので各組織が慌て出した。開催費用の総額が判明しないのは、国と大会組織委員会、主催の都庁がそれぞれに予算を試算し、横の連絡がないからだと指摘。全体予算の上限を決め全体ビジョンを打ち出す司令塔がなくいくらかかるかについて誰も計算していない。まるで社長や財務部長がいない事業だ、と批判した。

 大会組織委員会のトップは森喜朗元首相、日本JOCトップは竹田恒和会長、国の五輪担当相は丸川珠代議員だ。これらの組織と生身のトップを小池知事はどう治めてゆくのか。築地魚市場の移転、持論の電柱の地中埋め立てなど多くの課題を抱えながらどうさばいてゆくのか──。

 ただ、東京五輪後の候補地選びでは、ローマ市が降りるなど、カネのかかるオリンピックは市民に不評になりつつある。リオ五輪の活躍選手パレードには80万人の都民が見物に集まったというがその熱気は4年後まで続くのか。レガシーはハードだけではない。おもてなしの原則に立ち返るなどカネのかからない国民の心と真夏の開催時期を変え秋晴れでレガシーを作ったらどうか。

【財界 2016年11月15日号 435号】

※画像はWikimedia commons 1964年東京オリンピック開会式

論客たちによるシンポジウム「アメリカ大統領選後の世界と日本」が無事閉幕

昨日、私が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催のシンポジウム「アメリカ大統領選後の世界と日本」が旧日比谷図書館の大ホールで行われました。

一流の論客の方々にパネリストを務めていただいたおかげで、事前の申し込みは定員の200名を超え、来場は雨の影響か少し減ったものの187名の方にお越しいただきました。

足元が悪い中にも関わらず、多くの方に来場いただき本当に感謝申し上げます。

今回、米大統領戦後最も早いタイミングでのシンポジウム開催ということで、一段と意義のあったものとなり、成功に導くことができたことを本当に喜ばしく思っています。

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今回、パネリストに岸井成格氏(元毎日新聞 主筆)、高橋和夫氏(国際政治学者、放送大学教授)、田中均氏(日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長・元外務省)、富坂 聡氏(拓殖大学海外事情研究所 教授、ジャーナリスト)をお迎えし、司会は私(嶌信彦)が務めました。

なかなかこのメンバーが一堂に会することはなく、パネリストの方自身も楽しまれていたようでした。 

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本日、多くの方より議論内容が非常に面白かったとの感想を電話やメール等でご連絡いただき、非常にうれしく思っています。また、来場された多くの方が「非常に面白かった」と昨日の帰り道でお話しされているのを聞くこともでき、重ねてお礼を申し上げます。 

多くの方の関心事ということもあり、みな熱心に耳を傾けられ、熱心にメモを取られている方が多かったことが非常に印象的でした。

今回、一流の専門家の方々にパネリストを務めていただいたおかげで、表に出ていない話が聞け楽しめた一日でもありました。

昨日の感想はウズベキスタン協会の広報紙やコラム等で紹介したいと思っています。 

昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:江上剛様(作家)音源掲載 2夜目

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、作家の江上剛様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

映画『金融腐蝕列島 呪縛』のモデルにもなった江上様。企業は不祥事をなぜ繰り返すのか、組織の内部にどんな問題があるからなのかなど、銀行内で「隠蔽の天才」と呼ばれていた江上さんが、支店長も務めた後、退行して小説家になった経緯などについてお伺いいたしました。

前回放送の第一勧銀(現みずほ)総会屋事件で混乱収拾に尽力したものの、歴代頭取も含めて十数人の逮捕者が出た上、元頭取の一人が自殺するという悲惨な事件に発展した背景などにつきお伺いした放送は水曜お昼頃までお聞きいただけます。

 お聴き逃しの方は合わせてご利用ください。

 

次週は、株式会社テムザック 代表取締役社長 高本陽一様をお迎えする予定です。

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日本人の覚悟―成熟経済を超える

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首脳外交-先進国サミットの裏面史

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嶌信彦の一筆入魂

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ニュースキャスターたちの24時間

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