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ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

15日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲストに池澤夏樹様(作家)をお迎え 2夜目

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スタッフです。15日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに芥川賞を受賞され、多くの翻訳作品も手がけられている作家の池澤夏樹様をお迎えする予定です。

本日アマゾンの全集部門のランキングで池澤様が手がけられた日本文学全集の「枕草子/方丈記/徒然草」が1位となっております。

世界を辺境から見つめ、文学の眼鏡と科学の眼鏡を携え旅先で執筆を続けたこと、「日本文学全集」の編集を引き受けた理由や、父で作家の福永武彦氏への思いなどをお伺いする予定です。

前回放送の30代の3年間をギリシャに住み、40代の10年間を沖縄に暮らし、60代の5年間をフランスで過ごし、現在札幌在住の池澤様に、詩や翻訳、小説、エッセーなど多くの著作物を手がけてこられた作家人生につきお伺いした放送は、来週水曜日まで番組サイトにてお聞きいただけますので、お聴き逃しの方はぜひ合わせてご利用ください。

池澤様の新たな本が「知の仕事術」が昨日発売になりました。混迷を深める現代という時代を知的に生きていくためには、1「情報」、2「知識」、3「思想」が必要です。それをいかにして獲得し、更新していくか、 自分の中に知的な見取り図を作るために、どうすればいいのかということを、新聞や本との付き合いかた、アイディアや思考の整えかたまでを指南されている本です。

さらに、17日には話題の古典新訳を手掛けた作家たちは作品についてどう捉え、どう訳したのかなど作品の魅力や訳の工夫を語った、大好評の古典講義をまとめた本「作家と楽しむ古典 古事記 日本霊異記・発心集 竹取物語 宇治拾遺物語 百人一首」も発売となります。

【年末傑作選】30日のTBSラジオ「日本全国8時です」にて~シベリア抑留から70年 井上靖、司馬遼太郎をも魅了した 文化人類学者の逝去~が再放送 21日のウズベキスタン協会新年会では夫人の定子様をお迎えしたトークショーを開催

スタッフです。
年末年始のTBSラジオ森本毅郎・スタンバイ」では「日本全国8時です」の傑作選として昨年放送された中から選りすぐりの話を放送されました。その一つとして、12月30日に嶌の加藤九祚(きゅうぞう)先生の訃報や人生を取り上げたテーマが放送されましたので、改めてご案内いたします。

テーマ:海外で大々的に報じられたある日本人の訃報

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【世界で著名な文化人類学者が逝去】
本日は加藤九祚さんをご紹介したい。この方は文化人類学者で考古学者でもある。立正大学の顧問や国立民族学博物館の名誉教授を務められており、シルクロード仏教遺跡を中心とする考古学や発掘調査で世界的に著名な方。

先週11日にウズベキスタンの発掘調査の現場で体調を崩され、94歳で亡くなられた。海外の報道ではロイター「人類学者、加藤九祚が死去」、韓国の新聞「シルクロード権威者の死去」、何よりウズベキスタンでは大々的に報じられ、ウズベキスタン政府は「国民にとって大きな損失」と悼む声明を発表している。


【5年近くもシベリア抑留を経験、司馬遼太郎氏も称賛】
加藤さんは上智大学の学生時代に出征。満州で敗戦を迎え、シベリアに抑留された。シベリア抑留時に独学でロシア語を学び、1年間でマスター。ロシアのスパイと間違われるほどにロシア語の達人となっていた。4年8カ月も抑留されたが、ロシア語を学ぶことで自分の生きがいを見つけ、ロシア文学に触れていくうちに一人の人物を知る。

その人物は戦時下の軍部の弾圧で死を遂げた親日学者ニコライ・ネフスキーで、ソ連の東洋学者で奥さんが日本人。その生涯から悲劇の天才言語学者と呼ばれ、1915年に留学生として来日したが、その間ロシア革命が起こり帰国を断念。加藤さんは自分の境遇と似ていることで共感し、「天の蛇」を上梓し、第3回の大佛次郎(おさらぎじろう)賞を受賞された。大佛次郎賞とは、第1回が英文学者・中野好夫さん、 哲学者・梅原猛さん、第2回が女性解放運動家・山川菊栄さん、吉田秀和さんなどが受賞されている。 

加藤さんのロシアでの生き方に司馬遼太郎氏は感銘を受け、著書「菜の花の沖」の中に「加藤氏はシベリア抑留時代、生命をしぼりとられるような労働の中で、シベリアを観察し(中略)ロシア語をみごとに独習した」と賞賛されている。


ウズベキスタン西遊記のルーツを発見】
先ほどウズベキスタンで大々的に報じられたと紹介したが、何故かというと・・・
大学卒業後平凡社(出版社)に就職し、ロシア文学からさらに範囲を広げユーラシアの考古学等の研究をするうちに、シルクロードに関心を持つようになった。定年となった60歳以降、本格的に遺跡の調査研究をはじめる。加藤さんの遺跡発掘デビューは65歳と遅咲きであったが、加藤さんは「人生に、もう遅いはありません。老いは免れませんが、好奇心は抑えられなかった」といい、この年からアフガン国境付近のウズベキスタン・テルメズという地区で遺跡発掘を開始した。

なんと、開始から4日ほどで発掘に成功。その後、続々と遺跡を見つけ大きな功績を挙げ、シルクロードのルーツを遺跡から発見していく。ウズベキスタンは、シルクロードのど真ん中にある国で、かつて西遊記で有名な三蔵法師がこのテルメズを通り、シルクロードを巡り、インドに渡った後仏教の経典を中国に持ち帰った。この仏教の経典が日本にやってきてシルクロードの最東端は日本だと言われる由縁でもあるが、その遺跡を見つけて西遊記のルーツを発見されたともいわれている非常に有名な方である。加藤さんは仏教のルーツを遺跡から発見したともいわれ、仏教遺跡からシルクロードに光を当てた先駆者ともいえる。ウズベキスタンを自分の第二の故郷と呼ぶくらいの拠点とし、現地に「加藤の家」を建て毎年のようにウズベキスタンに出かけ発掘調査をされていた。


ウズベキスタンの教科書にも掲載される人物】
ウズベキスタンの小学校6年生の公民の教科書には「はるばる日本がやってきて(中略)考古学的発掘に従事している 加藤九祚氏について聞いたことがあるかもしれない。 彼の犠牲的精神に富む、広範な知識は、われわれの歴史全体や 古代の遺跡のみならず、文化的・精神的遺産にも深い理解を示している。(中略)実り多い成果をあげたことにより、ウズベキスタン共和国大統領令に基づいて「友好」勲章をさずけられた」そして、最後には「ウズベクの人びともまた、彼を敬愛するがゆえに「ドラム(日本語で先生の意)」とよんでいる」との記載がある。


【夫唱婦随の考古学夫婦】
私もウズベキスタンとは深い関係があり、日本ウズベキスタン協会の会長を務めている中で加藤さんとは何度もお会いした。ものすごく開放的で、底抜けに明るい人柄で、裏表の全くない人でこの人を嫌いな人はいないという方。お酒が大好きで、自分が発掘したカラテパ遺跡の歌まで作った。今年もいくと聞いた時に仲間たちはこの暑い最中に行って大丈夫なのかと随分心配していたが、加藤さんは生前「私の希望は発掘しながらバッタリ死ぬことだ。」と語られていたがまさに発掘現場で94年の人生を閉じられた。夫人の加藤定子さんも服装史の研究家としても有名で、まさに夫唱婦随の考古学夫婦である。

今回の訃報を受け、盛り暑い時期に発掘調査に行かれない方がよかったのではないかというウズベキスタン協会の会員もいたが、先に紹介したように現地で亡くなられたのは天命だったのだろう。ほぼ同じ時期に、ウズベキスタンのカリモフ大統領が亡くなられたが、このカリモフ大統領も加藤さんの事を非常に敬意を表していた。カリモフ大統領も非常に親日で、91年にソ連から独立した際、国づくりのモデルを日本に求めていた。


【行方が注目されるウズベキスタン
カリモフ大統領の後は今の首相が本命とみられているが、ウズベキスタン中央アジアの中心の国であり、万が一混乱が起きるとイスラム原理主義の問題等、他の中央アジアの国への影響も大きい。そういう意味からも次の大統領が誰になるのかということが注目されている。

そのウズベキスタンで歴史、文化、民族、芸術に精通した加藤さんの役割は非常に大きく、「国民の損失」とまでいわれている。日本では文化人類学者・考古学者についてあまり馴染みがないかもしれないが、世界的には大きく報じられている。人柄が非常に良かったということも大きい。私がその意思を継いでというのはとてもおこがましいので、なるべくその意思を担っていけるようにはしていきたい。

※画像は2008年1月に行なわれた嶌が会長を務める日本ウズベキスタン協会の新年会でのトークショーの模様。以下は今年の新年会の模様。

最後に、司馬遼太郎氏が「歴史の世界から」(中公文庫)に記された言葉も合わせてご紹介いたします。

文化人類学というのは、学才以外に徳がなければできない学問だと思っている」と始まる序文にて、その”徳”を「仏教の慈悲、キリスト教の愛のようなもの」と説明し、「加藤九祚という研究者は、天性、この学問を耕すことに素質をもって生まれついておられるということに、私などしばし目を見はらされる思いがしている」「世界中のどの文化に属する人がみても、九祚さんの人柄というのはわかってしまうのである」

ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。 

上記が放送内容です。

加藤先生も毎年楽しみにお越しいただいておりました恒例の日本ウズベキスタン協会の新年会が1月21日(土)に開催されます。

今回は、加藤先生の奥様であり、中央アジアの服飾研究家である定子様をトークゲストにお招きし、加藤先生の思い出を語っていただく予定です。

 また、お正月を彩るウズベクダンスのほかコントラバスバイオリン、電子ピアノで「からたちの花」「ウズベクタンゴ」などお正月らしい曲の演奏で会場を盛り上げていただく予定です。なお、バイオリンを弾いてくださる黒柳紀明氏の父上の黒柳守綱氏はシベリア抑留から帰還後、NHK交響楽団コンサートマスターを務められています。

今年も在日ウズベク大使館からプロフやサムサなどの差し入れもありますので、多くの方のお越しをお待ちしております。

画像:以前大使館よりご提供いただいたウズベク料理、プロフやサムサ

[日 時]2017年1月21日(土)14:00~16:00

[会 場]日本プレスセンタービル 10 階(千代田区内幸町 2 ― 2 ― 1)

[交 通]東京メトロ 千代田線・日比谷線 霞ヶ関駅 C4

     東京メトロ 丸ノ内線 霞ヶ関駅 B2

     都営三田線 内幸町駅 A7
     ※駐車場はありません。

[会 費]一般5,000円、会員及び同伴者3,000円、学生2,000円、留学生・外国人の方1,000円

     ※本ブログをご覧になられた方は特別に会員価格にて入場いただけます。
      申し込み時に「嶌信彦のブログを見た」と添えて申し込みください。
     ※中学生以下の方は無料。立食 

     ※会場へのお問い合わせはご遠慮願います

[申込先]NPO日本ウズベキスタン協会まで

     電話(03-3593-1400)、ファックス(03-3593-1406)、

     メール(jp-uzbeku@nifty.com

     (注)満席になり次第受付終了

1月21日(土)14時からプレスセンターで日本ウズベキスタン協会新年会を開催~美男美女のウズベク人と交流~

明けましておめでとうございます。皆様にとってよき一年でありますことを祈念しております。

 今年も恒例の私が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催の新年会を開催します。

 今回は、昨年9月にウズベキスタンの発掘現場で倒れられ、94歳で亡くなられた加藤九祚(きゅうぞう)さんの奥様であり、中央アジアの服飾研究家である定子さんをトークゲストにお招きし、加藤さんの思い出を語っていただきます。11月3日に行われたお別れの会は400人以上の方が詰めかけ、後方には立たれている方も大勢おり、急遽別の会場が用意されたほどで加藤さんの人柄が偲ばれる会でもありました。

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※加藤さんのお別れの会でのスピーチ

 加藤さんはシベリア抑留が原点といい、加藤さんのロシアでの生き方に司馬遼太郎氏は感銘を受け、著書「菜の花の沖」の中に「加藤氏はシベリア抑留時代、生命をしぼりとられるような労働の中で、シベリアを観察し(中略)ロシア語をみごとに独習した」と賞賛されています。井上靖氏、梅棹忠夫氏とも深い交流があり、ウズベクの教科書にも掲載されている九祚さんの普段の生活ぶりやあの人を魅きつける笑顔は家庭でも同じだったのか――など人間加藤九祚氏を定子さんに明かしていただくトークイベントにしたいと思っています。

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※加藤さんをお迎えしたウズベキスタン協会新年会でのトークショーの様子

 また、お正月を彩るウズベクダンスのほかコントラバスバイオリン、電子ピアノで「からたちの花」「ウズベクタンゴ」などお正月らしい曲の演奏で会場を盛り上げていただく予定です。なお、バイオリンを弾いてくださる黒柳紀明氏の父上の黒柳守綱氏はシベリア抑留から帰還後、NHK交響楽団コンサートマスターを務められています。

 今年も在日ウズベク大使館からプロフやサムサなどの差し入れもありますので、プログラム終了後はウズベク中央アジアの方々とのおしゃべりや料理をお楽しみください。

画像:以前大使館よりご提供いただいたウズベク料理、プロフやサムサ

[日 時]2017年1月21日(土)14:00~16:00

[会 場]日本プレスセンタービル 10 階(千代田区内幸町 2 ― 2 ― 1)

[交 通]東京メトロ 千代田線・日比谷線 霞ヶ関駅 C4

     東京メトロ 丸ノ内線 霞ヶ関駅 B2

     都営三田線 内幸町駅 A7
     ※駐車場はありません。

[会 費]一般5,000円、会員及び同伴者3,000円、学生2,000円、留学生・外国人の方1,000円

     ※本ブログをご覧になられた方は特別に会員価格にて入場いただけます。
      申し込み時に「嶌信彦のブログを見た」と添えて申し込みください。
     ※中学生以下の方は無料。立食 

     ※会場へのお問い合わせはご遠慮願います

[申込先]NPO日本ウズベキスタン協会まで

     電話(03-3593-1400)、ファックス(03-3593-1406)、

     メール(jp-uzbeku@nifty.com

  •      (注)満席になり次第受付終了

米・英社に刺激された掃除機市場

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 米・英製の家庭用掃除機が話題となっている。ひとつは米・アイロボット社の自動掃除機「ルンバ」。人工知能が搭載されており、まず部屋全体の状況を調査し、どのような手順、方法で掃除するかを考え、クリーニングに入るという。掃除機の中にカメラが入っており汚れ具合や部屋の形状、段差などを事前に把握し、一人で勝手に掃除するわけだ。掃除を終えると自ら充電器に戻り充電も行なう。

 元々がロボットメーカーだから自走は得意で、そのロボットに必要な人工知能を組み込んだところがミソのようだ。共稼ぎ世帯にとっては、留守中に勝手に掃除をしておいてくれるのでかなり利用する人が増えているという。初めてお目見えしたのは10年以上前の2002年。TVコマーシャルに流れた時はオモチャのように見え、部屋の隅やテーブル、椅子の下などもきちんときれいにしてくれるのか、と首をかしげた人が多かった。部屋が狭くゴチャゴチャとモノを置く日本家屋には不向きとみられたのだ。
 
 ところが、いろいろ改造されたこともあって2010年頃から急速に認知され始めた。それまでは年間4万台程度だった販売台数が2010年には10万台を突破。以後毎年10万台ペースで増え、2013年には47万台まで急増した。以後も毎年30万台以上売れ、まだまだ普及する可能性があるらしい。価格は10万円前後なので30億円市場を軽く超えているのである。

 もうひとつの商品は専門メーカーの英・ダイソン社だ。こちらも最近コマーシャルでよく目にするようになった。利用している知人に聞くと、吸引力などがまるで違い、さすが専門メーカーだと感心していた。価格は日本製品の2倍以上もする高級志向だが、ジワジワと人気が出ているという。

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 米・英製掃除機の進出で、日本の家電各社は、掃除機にも新しい需要が掘り起こせるとみて次々と新機種を投入し始めている。パナソニックの「ルーロ」は本体を三角形にして部屋の隅をていねいに掃けるようにしたり、日立の「ミニマル」は小型化を追求し、狭い場所にも入り込める工夫をした。シャープの「ココロボ」は、人と挨拶も交わすことができる会話機能まで取り込んでいる。日本メーカーは日本人の感性や住宅事情を考えた新技術を開発して対抗しているが、米アイロボット社は、日本の生活に多い拭き掃除に目をつけ、水拭きのできる新製品まで出した。

 日本の消費不況について企業関係者は「最近は欲しいものがなくなっているようだ」と嘆くが、どこの家庭にもある掃除機で新風を巻き起こした米・英社の発想は、元来日本メーカーが得意としてきた発想と技術開発だったのではないか。
【財界 新春特別号・2017年1月10日号 第439回】

※トップ画像はアイロボット社サイト「ルンバ」紹介ページより。
 下の画像はダイソン社サイト「掃除機」紹介ページより。

8日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:池澤夏樹様(作家)音源掲載

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スタッフです。8日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに芥川賞を受賞され、多くの翻訳作品も手がけられている作家の池澤夏樹様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

30代の3年間をギリシャに住み、40代の10年間を沖縄に暮らし、60代の5年間をフランスで過ごし、現在札幌在住の池澤様に、詩や翻訳、小説、エッセーなど多くの著作物を手がけてこられた作家人生につきお伺いいたしました。

次週も池澤様をゲストにお迎えし、世界を辺境から見つめ、文学の眼鏡と科学の眼鏡を携え旅先で執筆を続けたこと、「日本文学全集」の編集を引き受けた理由や、父で作家の福永武彦氏への思いなどをお伺いする予定です。

池澤様の新たな本が「知の仕事術」が12日に発売となります。混迷を深める現代という時代を知的に生きていくためには、1「情報」、2「知識」、3「思想」が必要です。それをいかにして獲得し、更新していくか、 自分の中に知的な見取り図を作るために、どうすればいいのかということを、新聞や本との付き合いかた、アイディアや思考の整えかたまでを指南されている本です。

さらに、17日には話題の古典新訳を手掛けた作家たちは作品についてどう捉え、どう訳したのかなど作品の魅力や訳の工夫を語った、大好評の古典講義をまとめた本「作家と楽しむ古典 古事記 日本霊異記・発心集 竹取物語 宇治拾遺物語 百人一首」も発売となります。

12月20日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~世界が震撼「二つの中国」問題~

スタッフです。

12月20日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:蒸し返される 二つの中国

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【世界が震撼したトランプ氏の発言】
本日はトランプ氏と中国という話をしたい。トランプ氏は中国が主張する「一つの中国」に棹を刺した。70年代末から一つの中国という考え方が世界の常識として考えられてきたが、トランプ氏は「アメリカが”一つの中国”という考え方に縛られるのはおかしい」と発言し、世界に相当衝撃を与えたように思う。

事の発端は台湾の蔡英文総統に電話をしたことだ。このときは、トランプ氏がどのような考えかはっきりわからなかったので中国は看過していた。しかしながら、今回のトランプ氏の「一つの中国」発言は「中国の核心的利益」に触れる事であったため、中国は激しく反発した。そういう意味でもこの発言は世界を騒がせる発言であったといえる。

【一つの中国の始まり】
もともと1945年に国連を作るという話が浮上した際、その当時の中国は内戦状態にあった。ちなみに、当時の国連の代表は中華民国(台湾)だった。1949年に内戦が終結し、現在の共産党中華人民共和国(中国)ができ、同年に蒋介石率いる国民党を台湾へ追いやった。その後も国連の代表は国民党(台湾)で、大陸を支配している中国共産党政府(中華人民共和国・中国)ではないねじれ状態が続いていた。

その後、中国は友好国であったアルバニアに働きかけ、アルバニアは1971年に国連の代表を国民党(台湾)から大陸を支配している中国共産党政府に変えようという「アルバニア決議案」を提出した。日本はアメリカなどと共に台湾派として反対したが、共産圏や欧州の国々は中国共産党を支持。中共中国共産党)派が圧勝して台湾はメンツを潰され、国連からの脱退を表明した。その結果、台湾は中国に帰属する一つの地域であり、そこから「一つの中国」という認識になった。それをアメリカも世界もずっと守ってきたことである。

そこへ、トランプ氏の今回の発言だ。トランプ氏は、アメリカは中国の「重い関税や 「通貨切り下げ」で不当に苦しめられていると主張。さらに、「南シナ海での人工的な島の造成」や「北朝鮮の核開発問題への対応」についても批判。 中国政府が掲げる「一つのの中国」原則を堅持するのかは 中国の対応次第だと中国をけん制した。


【日本のこれまでの対応は?】
日本のこれまでの動きとしては、日本も中国と国交を結びたいという思いはあったものの、アメリカの動きがないので動けなかった。その後、ニクソン氏の1972年2月の訪中でアメリカが中国を認め、千載一遇のチャンス到来とばかりに日本も田中角栄氏が同年9月にアメリカより一足先に日中国交正常化を結んだ。

その間、日本国内では田中派、大平派は日中国交正常化に賛成。三木派、福田派や中曽根派は必ずしも賛成ではなく、親台派、親中派に別れた。その後、田中角栄氏は苦渋の選択を迫られ、日本は台湾と縁を切ることになった。それ以来「一つの中国」という考え方に触れる国はなかった。


【これまでのアメリカの動き】
アメリカは1979年に中国と国交正常化を結び、それ以来「一つの中国」ということを世界の常識としてきた。そんな中で、突如トランプ氏の「二つの中国容認」発言である。トランプ氏は、中国はアメリカに対して「輸出はするが投資をしていないではないか。アメリカの雇用問題を引き起こしている」と発言。これは日米摩擦の時の現象と同様で、日本はアメリカに対して輸出はするが、投資はしていないということだ。さらに、トランプ氏は北朝鮮問題への対処ができていないことなど、これらの問題が解決されない限り「二つの中国を容認する」と示唆した。

これは、中国がアメリカにもっと近づかない限り、台湾に近づくというある種の脅しで、本気でやろうという感じではないと思う。当初、トランプ氏が当選した際には「習近平は偉い人だ」「中国は偉大で重要な国家」などといっていたので中国は、トランプ氏の当選を歓迎していた。ところが突然、台湾の蔡英文総統に電話。その時は看過したが、その後中国の核心的利益に触れ、切り込んできた。トランプ氏は親中派の駐中大使起用するともいわれており、ロシアも親露派の駐露大使を同様に起用するといわれている。こういったところからもトランプ氏はビジネスマンとしての取引がうまいという感じがする。


【間に挟まれた日本はどうする!?】
相手の心理を揺さぶりながら、自分の交渉を有利に進めるという手法だが、果たしてこれは中国に通用するのか。中国は相当怒り、爆撃機を飛ばし、「中国側は事態の発展に注視している。いかなる人物や勢力による『一つの中国』の原則の破壊は中国の核心的な利益を損なうことにつながり、持ちあげた岩が自身の足に落下する結果しか生み出さない」と王毅外相は発言。

おそらくここで一番困るのは、間に挟まれた日本だろう。もしトランプ氏が日本に対して「二つの中国容認」を迫ってきた場合、40年近くも「一つの中国」としてやってきたことをどのように扱うのかという問題も出てくる。ここは日本にとっても非常に難しい問題である。


【日本外交の手腕を発揮できるか・・・】
日本は中国に対しても、トランプ氏に対してもあまりパイプがなく、非常に外交面でもやりづらい状況。三角大福中(三木、田中、大平、福田、中曽根)時代、台湾、中国にそれぞれ通じている人がいた。しかしながら現代の政治家には見当たらないのが、非常につらいところ。

今後の日本の針路としては、おいそれとアメリカにつくというわけにもいかない。東南アジアを中国に分断されていることから、東南アジアと日本が仲良くやりつつ、中国をいさめるといったことを考えていくのが日本の外交の主体性を表すように思う。安倍首相派手に外交を行なっているが、残念ながら成果が出ていないという批判も出始めている。そういう意味からももう少し足を地につけて近場を見てほしい。

画像:Wikimedia Commons 2014年3月30日の台湾の首都・台北市の「ひまわり学生」運動(中国と台湾がサービス貿易協定を結んだことに反対する)デモの様子。

8日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲストに池澤夏樹様(作家)をお迎え 

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スタッフです。次回8日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに芥川賞を受賞され、多くの翻訳作品も手がけられている作家の池澤夏樹様をお迎えする予定です。

30代の3年間をギリシャに住み、40代の10年間を沖縄に暮らし、60代の5年間をフランスで過ごし、現在札幌在住の池澤様に、詩や翻訳、小説、エッセーなど多くの著作物を手がけてこられた作家人生につきお伺いいたします。

どうぞ、ご期待ください。

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