時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

昨日TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:渡部悦和様(元陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー)二夜目

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー渡部悦和様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

前回の我が国を代表する軍事・戦略のエキスパートで、現在はアメリカで教鞭を執る渡部様に、トランプ政権の誕生によって、今後気になる米中関係、米ロ関係、そして日本の取るべき姿勢などをお伺いいたしました。

渡部様が昨年11月に上梓された「米中戦争 そのとき日本は」(講談社新書)が好評発売中です。先日、アマゾンの軍事ランキングで1位となっていらっしゃる本です。あわせてぜひご覧ください。

前回放送の東京大学を卒業後、自ら自衛隊に入った経緯、幹部候補生学校での訓練についてや、35歳頃激動のドイツに留学、冷戦下のプラハ東西ドイツ軍から学んだことなど、現在の各国トップなどについてお伺いした放送は、今週水曜日午前中まで番組サイトで公開中です。本番組はトランプ大統領の就任前に収録しております。

本番組内で話題に上がっていたユーラシアグループの今年の10大リスクのリンクは以下を参照ください。
原文(英):https://www.eurasiagroup.net/issues/top-risks-2017
日本語:https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Services/Top_Risks_2017_Japanese.pdf

次週は「5万回斬られた男」の異名を持ち、「ラストサムライ」に出演されている福本清三様をお迎えする予定です。

本日放送のテレビ朝日 Qさま!!「ジャーナリストが選んだこの100年で日本を変えた10人vs世界を変えた10人」

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スタッフです。本日19時からテレビ朝日にて放送される 「ぶっちゃけ寺&Qさま!! 豪華2本立て3時間スペシャル」にて「ジャーナリストが選んだこの100年で日本を変えた10人vs世界を変えた10人」が放送される予定です。

この特集に嶌も協力しており、この100年で日本と世界それぞれを変えたと嶌が思う方を推薦しております。

「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」はお笑い芸人のさまぁ~ずのお二人とタレントの優香さんが司会を務めるクイズバラエティ番組です。

12日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:渡部悦和様(元陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー)

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スタッフです。12日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、前回に続きゲストに陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー渡部悦和様をお迎えいたします。

我が国を代表する軍事・戦略のエキスパートで、現在はアメリカで教鞭を執る渡部様に、トランプ政権の誕生によって、今後気になる米中関係、米ロ関係、そして日本の取るべき姿勢などをお伺いする予定です。

渡部様が昨年11月に上梓された「米中戦争 そのとき日本は」(講談社新書)が好評発売中です。先日、アマゾンの軍事ランキングで1位となり、現在もトップ10にランクインされていらっしゃる本です。あわせてぜひご覧ください。

前回放送の東京大学を卒業後、自ら自衛隊に入った経緯、幹部候補生学校での訓練についてや、35歳頃激動のドイツに留学、冷戦下のプラハ東西ドイツ軍から学んだことなど、現在の各国トップなどについてお伺いした放送は現在番組サイトで公開中です。本番組はトランプ大統領の就任前に収録しております。

本番組内で話題に上がっていたユーラシアグループの今年の10大リスクのリンクは以下を参照ください。
原文(英):https://www.eurasiagroup.net/issues/top-risks-2017
日本語:https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Services/Top_Risks_2017_Japanese.pdf

お聴き逃しの方は、ぜひ合わせてご利用ください。

24日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~米大統領就任 過去の歴史から現状をひも解く~

24日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:トランプ大統領就任~就任時の不安を過去の歴史からひも解く~

58th Presidential Inauguration
58th Presidential Inauguration / The National Guard

トランプ米大統領が就任し、いろいろと物議を醸しだしているが、今日は過去の歴史から米大統領の就任時の不安についてひも解いてみたい。

【就任当初は不安がられていたレーガン大統領】
1981年に就任したレーガン大統領は就任わずか2カ月で襲撃されたことがあった。トランプ新大統領が就任したものの、支持率は40%台と歴代最低で幸先が非常に不安であり、国内のみならず世界各地でデモが起こっている。

レーガン大統領の事件は精神に障害のあるジョン・ヒンクリーによるもので、このニュースが入った時はかなり衝撃的だった。森本さんはニュースをNHKで読み、非常に衝撃を受け、私はワシントンに駐在していた時だった。

銃弾は心臓をかすめ、肺の奥深くで弾丸が止まるという重傷だった。そのため緊急手術を要する状態に。そんな状態にもかかわらずレーガン大統領の意識はしっかりし、ユーモアに富んでいた。さらに、レーガン大統領(共和党)は医師たちに向かって 「君たちは皆、共和党員だろうね」とジョークを飛ばしたところ、 執刀医で民主党員もいたのだが 「今日一日は皆、共和党員です」と ユーモアで返した。このエピソードはかなり印象的で、この出来事によりレーガン大統領の人気は一気に沸騰した。

【ユーモアで一躍人気者に】
レーガン大統領はこういった危機に瀕しているのに関わらずうまくユーモアで乗り越え、それ以後「タフな時にユーモアを忘れないと」皆に愛された大統領となった。それまでは二流の俳優上がりと揶揄され、「本当に世界をリードできるのか」ということを案ぜられていた。

さらに、俳優だったこともあり演説やジョークが非常にうまかった。プロンプターを使い、左、正面、右と聴衆に語りかける話し方は当時珍しく、評価された。また、狙撃後もCIAやシークレットサービスが止めるのも聞かず、 市民の中にどんどん入り込んで握手したりするので周囲がヒヤヒヤしていた。レーガン大統領は「大統領が市民とともにいなくては 信用されないだろう」と命の危険を顧みず民衆の中にどんどん溶け込んでいった。このことも人気が高かった理由の1つだろう。  

レーガン大統領を意識するトランプ新大統領】
今回の就任式をみてどうかというと、トランプ新大統領はレーガン大統領を意識しているように感じる。レーガン政権時代にトランプ氏はレーガン夫妻に会いに行っている。しかも、トランプ新大統領の発言は非常にレーガン大統領に似ている。 共通点としては、「強いアメリカ」。トランプ氏は選挙戦からレーガン氏が使っていた言葉「再び偉大なアメリカを作る」を打ち出している。

※上記は就任式を終えた後のトランプ新大統領のツイッター、参考まで放送後ではありますが2月4日にも再び「再び偉大なアメリカを作る」ことをツイートしている。

政策を比較してみると
レーガン大統領、レーガノミクス
1. 大型減税(法人税所得税率の引き下げ)  
2. 社会保障費の削減と軍事費の拡大
3. 規制緩和による投資の拡大
4. 金融政策によるインフレ率の低下を大きな柱

(トランプ新大統領の表明)
1. 大型減税
2. オバマケア撤廃による社会保障費削減
3. インフラ支出の拡大
4. 規制緩和  
5. 軍事費の増大

上記を見ると非常に類似している。しかしながら、共通項があるものの、本当にレーガン大統領のように実施できるのか否かはまだ見えない。 

 

An old picture with Nancy and Ronald Reagan.

Donald J. Trumpさん(@realdonaldtrump)が投稿した写真 -

トランプ氏が写真共有サイト「instagram」の自身のアカウントに投稿したレーガン大統領とナンシー夫人と共に撮影した画像


【合意による形成を】
トランプ新大統領は、最近の状況を見ると貿易赤字の解消などに取り組もうとしている。一番の特色は自身の「ツイッター」にて口先介入を行ない、個別の企業などを追い込み自分の意図を通そうとしている手法が目立つ。

レーガン大統領の場合は、日本も円安から円高に変わるわけだが、これはプラザホテルで行われた「プラザ合意」によって協調介入という方法でドル高是正を行なっている。このことから、レーガン大統領とトランプ新大統領の手法は全く違うといえる。

しかしながら、レーガン大統領の政策は財政赤字などを招き、必ずしも成功とはいえなかった。「双子の赤字」と言われたり、貿易摩擦も起こったため、それをどうするのかという問題があった。問題解決においては、今回のトランプ新大統領のようにツイッターによって一言でひっくり返すというようなやり方ではなく、関係者を集め合意をしたうえで物事を変えていくやり方をするべきだと思う。

【似て非なる強いアメリカ・・・】
トランプ新大統領の「アメリカ第一」は、レーガン大統領の「強いアメリカ」とは似て非なるものだ。 それは、トランプ新大統領の「アメリカ第一」は「アメリカの国益が第一」という意味だ。それに対して、レーガン大統領の「強いアメリカ」というのは、「強いアメリカにすることで世界の安定に役立つ。」という発想だ。ここに、哲学の違いが大きくあるように思う。

レーガン大統領は「アメリカは世界の警察官である」ということを前面に出していた。「自由主義」、「共産主義」や「人種差別」への反対となど、世界に目を向けた基本的な哲学があった。

それに対して、トランプ新大統領は「アメリカの国益が大事」で、「世界の警察官」はやめると表明している。国益を大事にするために、「フォード」「トヨタ」「メキシコ」などに口先介入している。これをツイッターを使い140文字という短文で表現するため、その背景にどんな哲学があるのか全く理解できないのだ。世界をどうやって引っ張っていこうとしているのかということも全く見えない。

【正念場を迎える日本外交】
「世界の警察官をやめる」というのは、各国に対する「自分たちで国を守ってほしい」という要求の表れだ。これは、日本にとっても影響は大きく、トランプ新大統領は日本に対して防衛費の増額も要求している。さらに、「日本の自動車産業貿易赤字を増大させている」と個別の会社に対して要求している。そういう意味からもアメリカは「どういった哲学や方針で世界に臨もうとしているのか」ということが皆目見当つかず、ただ単に「自分たちの利益を追求している」ようにしか感じられないため、世界が混乱している。しかも、先に述べたとおりツイッターという短文で表現することで、哲学が全く分からないことが混乱の主たる要因となっている。

今後、気になるのは米中関係だ。トランプ新大統領が当選後から就任まで米中双方で激しい応酬が続いている。以前もお話したがトランプ新大統領の「二つの中国問題」は中国の根幹を揺るがす発言。さらに、トランプ大統領の中国がアメリカの潜水艦を盗んだことに対する発言や、中国が南シナ海に基地を作ったことに対して「誰の許しを得てやっているのか」と発言したことにより、中国は台湾付近に空母を周回させたり、南シナ海に爆撃機を飛ばすなど、偶発的な事故が発生することも危惧される。

現在、衝発的なことが多く、見通しがつかないことは今後どのような影響がでてくるのか非常に心配も多い。日本がその部分をどう解決していくことができるのか、日本の外交の正念場でもある。

昨日TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:渡部悦和様(元陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー)

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー渡部悦和様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

東京大学を卒業後、自ら自衛隊に入った経緯、幹部候補生学校での訓練についてや、35歳頃激動のドイツに留学、冷戦下のプラハ東西ドイツ軍から学んだことなど、現在の各国トップなどについてお伺いいたしました。本番組はトランプ大統領の就任前に収録しております。

渡部様が昨年11月に上梓された「米中戦争 そのとき日本は」(講談社新書)が好評発売中です。先日、アマゾンの軍事ランキングで1位となり、現在もトップ10にランクインされていらっしゃる本です。あわせてぜひご覧ください。

次週は我が国を代表する軍事・戦略のエキスパートで、現在はアメリカで教鞭を執る渡部様に、トランプ政権の誕生によって、今後気になる米中関係、米ロ関係、そして日本の取るべき姿勢などをお伺いする予定です。

本番組内で話題に上がっていたユーラシアグループの今年の10大リスクのリンクは以下を参照ください。
原文(英):https://www.eurasiagroup.net/issues/top-risks-2017
日本語:https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Services/Top_Risks_2017_Japanese.pdf

5日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲストに渡部悦和様(元陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー)をお迎え 

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スタッフです。5日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ゲストに元陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学シニアフェロー渡部悦和様をお迎えいたします。

東京大学を卒業後、自ら自衛隊に入った経緯、幹部候補生学校での訓練についてや、35歳頃激動のドイツに留学、冷戦下のプラハ東西ドイツ軍から学んだことなどについてお伺いする予定です。

渡部様が昨年11月に上梓された「米中戦争 そのとき日本は」(講談社新書)が好評発売中です。先日、アマゾンの軍事ランキングで1位となり、現在もトップ10にランクインされていらっしゃる本です。あわせてぜひご覧ください。

17日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~第二創業で2017年問題を乗り切ろう 手本はリアル「下町ロケット」~

17日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:中小・零細企業の「2017年問題」はじまる。

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今日は日本の中小企業の2017年問題についてお話したい。これは2017年に日本の中小企業の廃業・休業が急増すると言われているものだ。日本の中小企業は企業の98~99%を占め、多くは従業員数が数人から数十人という規模の会社である。

【進む経営者の高年齢化】
東京商工リサーチの調査(※1)によると、 中小企業の経営者の平均年齢は2015年時点で60.8歳、20年前は47歳と言われていたので明らかに高齢化が進んでいる。今、後継者の問題をきちんと考えておかないと廃業・休業、売却に追い込まれる恐れが出てきた。

「後継者不在」や「将来的な経営不安」などで継続も難しくなっている。後継者の不在率はどのくらいかというと、帝国データバンクの調査(※2)では以下の通り。
・1億円未満: 78.2%
・1億~10億円未満の企業: 68.5%
・10億~100億円未満の企業: 57.5%
規模が小さいほど後継者が不在と言える。小規模の経営者は自分の子供に苦労をかけたくないという思いもあり、自分の企業を継ぐのではなく他の企業への就職を勧めているケースも多い。

【休廃業・解散件数も過去最高に】
また、東京商工リサーチの調査(※3)によると企業の2016年の休業廃業・解散件数は2万9583件と過去最高を記録。2009年以降は年間2万5000件を超す高水準で推移している。倒産件数は90年以来の低水準と、休廃業が増加している状況。倒産すると何も残らないが、休廃業だと会社は存続するため、誰かに譲渡するか、自分の代でお金をもらって終えてしまうケースが増加している。

そういう意味からもこの問題をこの2、3年の間にどうやって解決するのか。これを「2017年問題」といっている。本当は実の子供がやる気になって引き継いでくれるのが一番よいが、なかなか困難である。最近「第二創業」という言葉が流行っているので紹介したい。

第二創業で新たなステージへ】
戦後、自分の父や先代が会社を起業し、荒波を乗り越えてきた。ところが高度成長も終わり、苦しい状況になっている会社も少なくない。その中で、もう一度新たな会社を作る精神で事業承継し、それをきっかけに後進がビジネスを一変させていくのが「第二創業」である。新たなビジネスモデルの考え方で、 イメージとしては「まるで起業するかのように会社を引き継ぐ」ことである。

【成功事例はリアル「下町ロケット」】
成功事例として神奈川県茅ケ崎市にある「由紀(ゆき)精密」という会社を紹介したい。茅ヶ崎の本社工場と新横浜にある研究開発センターと合わせて、 従業員30人ほどの小さな会社。1950年に創業し、公衆電話を製造する大手企業の下請けとして、右肩上がりで成長してきた。しかしながら、公衆電話の需要減少により売上が激減。

その後、倒産の危機をむかえたが、初代社長の孫にあたる3代目が入社し会社を激変させた。3代目は、ものづくりのベンチャーで「技術」を学び、その後技術コンサルタントとして買収した企業に入社し事業の立て直しの経験があった。この経験から祖父の会社について「この会社の本当の強みは何か」 「チャンスのある事業領域は何か」などを自分なりに分析した。

すると、これまで培ってきた素晴らしい需要のある技術があることが判明し、祖父の会社を変えられることを確信。その技術を使い、それまで主流としていた公衆電話を作る大量生産型のビジネスから、品質の高い製品をつくるものづくりをしてはどうかと考えた。それは、時代のニーズと合い、成功できる可能性のある航空宇宙分野に新たに進出することであった。その後、会社の事業を地道に変えることによって、JAXAや航空メーカーとの取引に成功。いってみればリアル「下町ロケット」だ。

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画像は由紀精密社の公式Facebook より日本のQulead、フランスのDyshow Industrie・AS-MECA BERNARDの4社と共に日仏精密加工中小企業のアライアンス『ACT』を立上げ、参加することを表明された際の模様。右から二番目が大坪正人社長。

現在はシンガポールの企業の企業提携や世界的なプロジェクトに参加するまでに成長。2012年2月に経済産業省主催の中小企業IT経営力大賞 優秀賞を受賞している。これはお孫さんが新たな分野に進出した第二創業の成功事例だ。

【国や自治体も支援】
こういった第二創業的な支援をしようという動きが自治体にも出始めている。例えば、墨田区などでは「企業健康診断」を始めている。まず、地元の信用金庫など金融機関の担当者が「経営バトンタッチの準備の進捗状況」を日頃から取引し、訪問している社長を訪ね、探っていく。その後、申し込みをした企業に中小企業診断士や税理士などの専門家が直接訪問。事業内容や財務状況を詳細に見たうえで会社の強みを分析し、 事業の引き継ぎを無料でサポートしている。

その他にも、経済産業省が「事業引継ぎ支援センター」を全国に設置し、中小企業の能力とその能力を活かしたい人をマッチングさせる仲介を実現している。双方合意の場合はM&Aなどにより事業の引継ぎを実施。導入から約5年が経過したが、全国で1万4千社の相談を受け550件以上の事業引継ぎを実現している。確率は低いが、こういった事例もある。

【洗練したデザインで伝統工芸を支える世界屈指のデザイナー】
もう一つ紹介したい方法として少し大きな話になるが、世界の消費者ニーズと感性を十分理解したデザイン、製造を行ない、世界への売り方までを考えるということが中小企業の生き残る道として重要である。

以前お話したことがあると思うが、有名デザイナーの協力によって世界で成功した例がある。それは、創業55周年記念したプレミアフェラーリをデザインした世界屈指のカーデザイナーである奥山清行氏の取り組み。

奥山氏のオフィシャルサイトより

奥山氏は、山形出身で東北地方には優れたよい企業がたくさんあるとして、山形鋳物のコーヒーポットをデザインしたり、山形の木工で椅子や衣文掛けなどをデザインしたりすることで 山形などの文化・伝統の技術を世界に発信。ミラノなどの「国際見本市」に出品したところ、大評判となり200社近くから商品の引き合いがあった。鋳物ポットは、世界17ヵ国で3万個以上売れている。こういた方法によって新たな第二創業が起こっているのだ。 

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奥山氏が手がけた菊地保寿堂の「鉄瓶 コーヒー&ティーポット “ふく-S”」
奥山氏のオフィシャルサイト でも購入できる。

【これからは新たな創業へ】
この2017年問題を乗り切るには、各企業がどういったアイディアを出してくるかが勝負となってくる。従来の親の事業をほぼそのまま継承することは高度成長期ではよかったかもしれないが、これからは容易ではない。世界で売れることや、新たなデザイン、取り組みといった新たな創業が求められている。

(※1)東京商工リサーチ「2015年 全国社長の年齢調査」
(※2)帝国データバンク「2016年 後継者問題に関する企業の実態調査」
(※3)東京商工リサーチ「2016年 休廃業・解散企業 動向調査」

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