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ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

累計債務1千兆円超え! 借金大国日本

2月7日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

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 テーマ:日本の借金。膨らんだ先に見えるもの・・・

今日は少し気が重くなる借金の話をしたい。国の予算は家計と同様に収入の範囲内で支出を決めるのが、健全な財政といえる。政府は先日、国の資産の見通しとして2020年度の財政は国と地方を合わせ約8兆3000億円の赤字になる旨を発表した。政府は2020年に黒字化しなければ日本の財政はとんでもないことになると言っていたはずが、またも赤字になると発表している・・・

アベノミクスによって黒字化の予定も・・・】
政府の目論見ではアベノミクスによる経済成長で財政を再建し、2020年度には財政を「黒字化」させる方針だったはずなのだが、予定通りにいかないどころか借金は膨らむ一方だ。先に紹介したように赤字は8兆3000億円の見込みと発表し、いったいどこまでいくのかという様相。今日はこの問題をよく考えてみたい。

【世界の破綻事象に目を向けると・・・】
まず、世界の経済危機といえば、以前この番組でも紹介したギリシャの例を紹介したい。ギリシャは4人に1人が公務員で労働時間が非常に短く、午前中しか仕事をしていないといわれていたほどだ。主な国の収入源は観光だが、芳しくなく赤字が増えた。決定的になったのは、2009年に政権交代後の新政府が財政赤字の対GDP比が12.7%であることを発表した。それまでは3.7%と公表していたのだが、国ぐるみの粉飾が疑われ国としての信用が失墜した。この数値であればEU加盟基準を満たすが、実態がかなり厳しいことからEUから改善対策の提出を求められた。

そこでギリシャ政権交代後にEUやIMFに対して緊縮財政策を約束し、12兆円を超える融資を受けることになった。そして、この見返りに増税や行政サービスの歳出カット、公務員のリストラなどを実施することで300億ユーロ(およそ3兆6千億円)の財政赤字を削減することを約束した。公務員や多くの国民はこれに強く反対し、テレビで報じられたようなデモやストライキが繰り返されている。

ギリシャの対策を日本に置き換えてみると】
このときギリシャが取った対策を日本に置き換えるとどのようになるのかを探ってみたい。まず、付加価値税(日本での消費税に相当)の軽減税率を観光客が多く所得が高い島から段階的に廃止。レストランや公共交通などに適用されている消費税を現在の13%から23%に引き上げた。これは従来の1.78倍となり、日本に置き換えると、いまの消費税8%から14.24%に引き上げることになる。この場合1000円の買い物をすると税込で1142円となる。

さらにギリシャでは年金の支給開始年齢を、これまでの62歳から67歳に引き上げた。日本は原則65歳からの支給なので、これを5歳引き上げるとなると70歳からの支給開始となる。これはまさに生活を直撃する問題であり、ギリシャはいまなお厳しい状況が続いている。

【豊かだったアルゼンチンも今や】
もう一つ海外の事例を挙げたい。アルゼンチンは南米のパリと呼ばれるほど20世紀前半まで豊かで、その当時の1人当たりのGDPは世界4位だった。しかしながら、その後政策の失敗でインフレが悪化し、輸出が急減。輸入もほとんど不可能な状況に陥った。そして、消費者物価指数がマイナスとなった。つまり日本と同じデフレの状態から一気に+25%のハイパー・インフレへと猛進したことによって、アルゼンチン国債とアルゼンチンペソが暴落した。アルゼンチンにおカネを貸してくれる国はなく、最終的に破綻に追い込まれた。それによってアルゼンチン債などを買っていた企業などは打撃を受けた。日本の借金は国内資金による国債購入が大半であるためこういった事態には直結はしないが、海外から国債を買ってもらっている国では破綻に追い込まれてしまうという怖さもある。

このように海外の事例を見てみるとなかなか厳しい状態で、厳しい状況に一旦陥ってしまうとその後の回復が容易ではない。日本国内においても北海道の夕張市の状況は非常に有名だ。

【日本国内の破綻事例】
夕張市の事例は国と自治体では財政規模が違うので同様には扱えないが、破綻するとどうなるのかというシミュレーションとしてはわかりやすいので紹介したい。夕張市は2007年に353億円の財政赤字を抱え破綻。現在、財政再建中で今年11年目に入り95億円を返済したが、そのシワ寄せは市民にきている。重い負担と最低限の住民サービスを嫌がり、人口が1万3千人余から9千人にまで減少。市議会定数は18人から9人とし、さらに今年の1月末に全国最小の8人にまで削減した。

そして、市長の給与も86万2千円から25万9千円に減額。東京から派遣された若い鈴木直道さんが市長を務めている。さらに、東京23区より広い地域だが児童・生徒数が半減し小学校は一つ。スクールバスを全域に配備できないため児童・生徒の6割が一般のバスで通学。市の病院は規模縮小で診療所となり病床は171床から19床となった。財政破綻はこのように地域住民などが困難な状況に陥る。このまま日本全体に当てはまるとはいえないが、財政破綻国債が売れなくなったら金利は急騰し、抜本的なリストラが必然で国民生活にシワ寄せがくることは間違いない。

【累積債務は1千兆円!】
先に挙げた2020年度の借金およそ8兆3000億円は一人あたりに換算すると815万5000円だが、労働人口で割ると一人あたり1600万円となる。日本は世界からお金を借りていないから大丈夫とは言ってはいられない状況で、これまでは財政の不足分を国債の発行で補っていたが国債の人気が芳しくないのでそれを日銀が買っていた。そういうことができなくなる可能性は十分にある。

とにかく収入の範囲内で支出を抑えるのが第一。安倍首相含め民間が外に向けておカネをばらまいているが、もうそのようなことはできない状況だと正直に言った方がよい。消費税率の引き上げをこれまで2度延期したが、8兆円の赤字をなくすためには13%くらいの消費税率にしなくてはならないが、現状を考えるとこれは現実的ではない。社会保障費の無駄をなくすよう国民全体で考えることも必要だ。すでに、累積債務額(公債残高)は1千兆円を超えている。この金額からも日本の借金はのっぴきならないところまで来ている状況であるということを我々国民も一人ひとりが気が付かなくてはならない。

※本番組は昨日で放送7000回を迎えられました!

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:七江亜紀様(色のひと®、カラーキュレーター®)二夜目 音源掲載

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)にライフスタイル全般のカラーコンサルティングをされている「色のひと®」「カラーキュレーター®」の七江亜紀様をお迎えした二夜目の音源が番組サイトに掲載されました。

全国から1カ月で十数件の予約が入り半年待ちも珍しくないと云う今。これまでおよそ2万人の顧客を見てきて思うことや、色の専門家であり案内人である「色のひと®」になった理由などをお伺いいたしました。

前回の肌や髪質、瞳、骨格を踏まえて似合う色を提案するカラーキューレーターは、ファッション、食、インテリア等ライフスタイル全般のカラーコンサルティンクをする。その実際の仕事や、自分の長所を引き立たせる色使いの楽しみ方などにつきお伺いした放送は今週水曜日の正午までお聞きいただけます。お聴き逃しの方は合わせてこちらもご利用ください。

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次週は、財政学の第一人者東京大学名誉教授の神野直彦様をお迎えする予定です。

1月31日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~更なる分断の可能性も!? 米大統領令の功罪~

1月31日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。(以下内容は放送当時の内容です。)

White House
White House / Diego Cambiaso

テーマ:アメリカ大統領令の功罪

ここのところトランプ大統領の話題でもちきりだが、本日は「アメリカ大統領令」の功罪についてお話したい。トランプ大統領はここのところ次々と大統領令を発し、就任からの10日間ですでに17本となっている。例をあげると、移民・難民の制限、オバマケアの撤廃、TPPの離脱などである。特に難民の制限に関する大統領令の影響により、世界中の空港で多くの人が足止めされるなど大混乱に陥っている状況。そういったことから、大統領令とはいったい何かということを過去の事例も振り返りながら考えてみたい。

【大統領の一存でできる命令】
よくテレビで大統領が署名している場面を見かけるが、大統領の署名で容易に発令できる行政命令のことだ。私がワシントン駐在していた間もいろいろ出ていたのだと思うが、あまり意識したことはなかった。いったい大統領令はどんな権限を持つのかを一言で表すと、「大統領の一存でできる命令」で、最高裁判所違憲判断を出した場合のみ対抗措置をとれるが廃止には時間を要する。
今回、移民・難民制限においては発令後世界中が混乱してしまった。サイン後、即効性のある発令であり、停止には時間を要することから問題の大きさによってその間混乱状態に置かれてしまう。

この権限を歴代の大統領は使ってきた。大統領令は1789年就任のワシントン初代大統領から存在しているが、1900年代に入り過去にさかのぼって通し番号を振ることになった、初の大統領令はリンカーン大統領が1862年に発令した「奴隷解放令」がNo.1であり、「奴隷解放宣言」になっているものだ。これはアメリカの歴史にとって重要なものであることから、これを1番にしているともいえる。アメリカの「自由」「平等」というメッセージがよくあらわされており、アメリカの精神を発露するものであるともいえる。
南北戦争によって多大の犠牲を出したものの北部が勝利し、奴隷解放宣言をすることによって建国以来の大問題であった「黒人奴隷制」の問題は一応の決着をみせアメリカの奴隷制は廃止された。

ルーズベルト大統領はダントツの多さ!】
歴代大統領の中で誰が一番多く大統領令を発令しているのかを探ってみると、それはフランクリン・ルーズベルトで3522本も発令していた。在任期間が12年強と長かったこともあるが、1年間あたり平均で293本発令していることになる。単純に考えると1年365日と考えると3日のうち2日は発令していた。前任のオバマ大統領に目を向けると、在任期間の4年で277本と結構発令している。しかしながら、その重要性に我々はこれまで着目してこなかった。

【暗殺の要因になった大統領令も!?】
歴史上において重要な大統領令はいくつかある。その1つは、1963年にケネディ大統領が発令したNo.11110。これはアメリカの財務省が「政府紙幣を発行できる」ものだった。実際に42億ドル(現在の日本円で4830億円)の政府紙幣が発行された。政府紙幣は政府が直接発行した紙幣に通貨としての効力を与え、中央銀行が発行する流通紙幣と同等の価値を持つものとなる。
しかし、既存の世界的に流通している貨幣の効力を低下させる上に、政府紙幣が無制限に発行された場合には猛烈なインフレーションを発生させる危険性がある。そのため、世界で導入しているのは香港など一部に限られている。この大統領令発令から半年後にケネディ大統領は暗殺されてしまうが、一部にはこの大統領令が暗殺の原因だったのではという陰謀論もささやかれている。
実際のところ、暗殺と大統領令の因果関係はわからないが、その後ひっそりとこの政府紙幣は姿を消した。ケネディ大統領が政府紙幣を発行した理由は、政府紙幣によって予算を捻出するのに有利だと考えたからではないかと思われる。

こうやってみてくると、大統領のサイン1つで発令できる大統領令というのは問題に対して素早く効力を発揮できるという利点もあるが、大きな危険性を含む側面もあるといえる。

【アメリカ史に残る汚点の大統領令は日本関連・・・】
さらにひも解くと、日本に関する大統領令もあった。第二次大戦中に大統領令によって、全米各地の収容所に約12万人の日系人が強制収容された。この大統領令は戦後40年以上経ってから、ようやく「人種的偏見と戦時のヒステリーに基づくものだった」とアメリカ政府は謝罪、賠償したがアメリカ史においては汚点とされている。

トランプ大統領が発令している大統領令は世界的にも問題となっており、世界は混乱している状況だ。大統領令は「素早く政策を実行」でき、「大統領の実行の宣伝力になる」という意味からもトランプ大統領自身そこに目をつけ、世の中的にも大統領令の注目度が高まっている。これまであまり問題にならなかったのは、いい大統領令もあり、世の中の役に立っていたということなのかもしれない。

【議会の歯止めが重要なカギに】
トランプ大統領はパフォーマンスとして大統領令を使っているようにみえるため、賛否両論入り乱れている。本来、大統領令として出すような問題に対してはきちんと議会で議論を重ね、民主的な手続きを踏むべきだと思う。メキシコに壁を作るという問題やNAFTAの再交渉などの問題に関しても、アメリカだけの問題ではなくメキシコに進出しているトヨタといった企業やさまざまな国も関係してくる。国会で議論し、世界各国の意見を聞くという形から大統領令発令に進むべきだと思う。

アメリカ国内においてもスターバックスシリコンバレーのIT企業(※)などでは社員に対して「出国しないよう」呼びかけている。そういう意味からも功罪は非常に大きいと思う。今回の移民制限の問題は本日の読売新聞でも報じられていたが、閣僚でも発令することを知らなかった人も多く、ごく限られた人で決められたものであったようだ。これがトランプ政権の大きな特色だということになると、気をつけなくてはならない。独裁につながる危険性もあるだけに議会がそれを止めることが非常に重要だ。

(※)ロイター通信は2月6日付(現地)でイスラム圏7か国からの入国などを制限する大統領令を巡り、憲法違反だとして提訴したワシントン州を支援しているアップルやグーグルなど米企業127社(当初96社、後に31社が追づい)は、大統領令に反対する意見書をサンフランシスコの控訴裁判所に提出したと報じている。

(参考情報)報道各社は3月6日付(現地)でイスラム教徒が大多数を占める6カ国(イラン、リビア、シリア、ソマリアスーダン、イエメン)の市民を対象にした新しい入国禁止の大統領令に署名したと報じた。16日に発効し、90日間の入国が禁止されるほか、すべての難民受け入れを120日間停止する。
ホワイトハウスによると、連邦裁判所に執行停止が命じられた前回の大統領令で禁止対象の7カ国に含められていたイラクは、イラク政府がビザ審査強化と情報共有に合意したため、新たな大統領令の対象から除外された。新大統領令によると、国務省がすでに受け入れを認めた難民は入国できる。またすべてのシリア難民を無期限に入国禁止にするという前回大統領令の規定は、解除された。米国永住権(グリーンカード)を持つ対象国の国民は、禁止の対象から除外される。

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:七江亜紀様(色のひと®、カラーキュレーター®)音源掲載

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スタッフです。昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)にライフスタイル全般のカラーコンサルティングをされている「色のひと®」「カラーキュレーター®」の七江亜紀様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

肌や髪質、瞳、骨格を踏まえて似合う色を提案するカラーキューレーターは、ファッション、食、インテリア等ライフスタイル全般のカラーコンサルティンクをする。その実際の仕事や、自分の長所を引き立たせる色使いの楽しみ方などにつきお伺いいたしました。

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5日TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:七江亜紀様(色のひと®、カラーキュレーター®)

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スタッフです。5日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)は、ライフスタイル全般のカラーコンサルティングをされている「色のひと®」「カラーキュレーター®」の七江亜紀様をお迎えいたします。

肌や髪質、瞳、骨格を踏まえて似合う色を提案するカラーキューレーターは、ファッション、食、インテリア等ライフスタイル全般のカラーコンサルティンクをする。その実際の仕事や、自分の長所を引き立たせる色使いの楽しみ方などにつきお伺いする予定です。

七江様が上梓された書籍が好評発売中です。合わせて参照ください。
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どうなっちゃった韓国

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 一体、韓国はどうなってしまったのか。一時は日の出の勢いで、社会も経済も先進国に肩を並べる地位にあったのにここ2、3年で国は混乱を極め、かつての輝きは全くない。

 最も懸念されているのは政界だ。朴槿恵大統領の生い立ちは悲劇に包まれている。学生時代は西江大学電子工学科を首席で卒業後、フランスのグルノーブル大学に留学した。留学中に文世光事件が発生し、母の陸英修さんが暗殺されたことから悲劇が始まる。74年に帰国すると、父の朴正煕大統領のファーストレディー役を務めていたが、その父も79年に暗殺される。

 その後、財団理事長などを務め、98年に国会議員となり政界入りした。2004年にハンナラ党首に就任し中国の胡錦濤国家主席小泉首相とも会談している。だが06年に顔を暴漢に切り付けられ60針を縫う手術も受けた。盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イミョンバク)大統領の後を受け、ハンナラ党を改称したセヌリ党から大統領選に立候補して13年2月に第18代大統領選に就任し、親娘二代が大統領となったのである。当初は支持率が63%に達するほど人気もあった。

 しかし16年10月末に発覚した友人崔順実(チェスンシル)女史が国政に関与。財団などから金銭を受け取り、朴大統領もそのことを知っていたのではないかと報道された途端に支持率が4%台にまで急落した。国民の大抗議デモを背景に国会で弾劾訴追が可決され、12月から大統領の職務が停止されてしまった。朴一族はまるで呪われた運命に翻弄されているかのようだ。

 こうして政局が混乱している間に韓国の財閥も次々と問題を起こし経済界も混乱中だ。大韓航空の趙顕娥(チョヒナ)副社長が客室乗務員の態度に腹を立て機体を離陸直前に引き返させた"ナッツ・リターン"事件、ロッテグループの裏金工作とお家騒動、最大財閥サムスングループトップの収賄問題、ハンファグループやSKグループ最高幹部クラスの横領や背任などの犯罪も次々報道されている。

 さらに日韓間では日本総領事館前の公道に慰安婦像設置の嫌がらせや、長崎県対馬市の寺から仏像を盗んだ事件などについて、日本政府が抗議しても解決にあたろうとしている気配がない上、日韓中の首脳会談も韓国政局の混乱で延期されたままだ。また社会も出自の違いが出る「金の匙、銀の匙、土の匙」というスプーン階級論まで話題となっている。こうした不満が大々的な大統領弾劾や反日デモの底流になっているとみられる。

 韓国は、新興国の優等生として成長してきた。しかしながら、ここ2、3年で政、経、社会とも混乱の極に至りつつある。韓国は激しく動きだすと止まらなくなる傾向がある。混乱が止まないと北の思う壺に陥ろう。
【財界 2017年3月7日号 第442回】

解体的運命となった東芝 今後の収益を何に見出すか

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 東芝が重篤な危機に陥ることがあるなどと、一体誰が予想し得ただろうか。1875年(明治8年)7月に創業され、資本金2000億円、連結売上高5兆7,000億円、従業員数約18万8,000人(単体では3万6,601人)の巨大重電企業である。

――カラクリ技術の歴史をもつ名門企業――
 歴史をたどれば、大英博物館に収められたカラクリ人形など精巧なカラクリ技術で様々な人形、玩具などを作ったカラクリ儀右衛門(田中久重)を創業者の1人とする伝説の会社でもある。戦後になってからも冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器など家電製品の国産化1号も多数手がけており、日本人のライフスタイルを発展させてきた白物家電のパイオニア的存在だった。その後、重電機器やエレベーター、原子力発電、パソコン、半導体関連などにも手をのばし、日本を代表する巨大企業になっていった。

――原発が事の発端――
 東芝危機のウワサが出始めたのは2-3年前からだ。東日本大震災で福島の原発が事故を起こし、原発に対する不安感が国民に広がっていた頃に、東芝原発部門にも経営的問題があると言われていたのである。ところが、原発だけでなく主要部門のインフラ関連工事、半導体、パソコンなどの分野でも利益水増しがあると言われ、2015年に不正会計が発覚した。この不正会計をめぐり経営陣による強い圧力があったことも判明し、田中久雄氏ら歴代3社長と役員ら計8人が引責辞任に追い込まれた。その結果、東芝の経営は大混乱に陥り、15年5月に予定していた決算発表が9月までズレ込む事態となった。

――新体制になっても動乱続く――
 2015年11月には、東芝が買収したウェスチングハウス(WH)が買収の後に個別に計1,156億円の減損を行っていたと公表。そのWHの減損処理が東芝の連結決算にも影響し、翌16年4月にWHののれん減損が2,600億円に上ると発表した。原子力以外でも減損があり、16年3月期は7,087億円の営業赤字となってしまった。このため医療機器子会社を売却し損失を埋めようとしたが、それでも最終赤字は4,600億円となった(いずれも連結ベース)。

 問題はさらに続いた。WHの関連企業や子会社の工事費コストが急増したせいか、WH内部でも損失が増大し、それらが東芝本体に再び影響してきたのだ。もはや原子力部門の損失は同部門だけでは処理できなくなっている。原発部門の損失はアメリカを中心に7,100億円を超えることが分かったのだ。結局、東芝の優良部門を次々と売却せざるを得ない状況に追い込まれていくのである。

――次々と資産売却――
 その結果、東芝は2015年7月に東芝エレベーターが外資系の昇降機大手の持株を1,180億円で売却したのを皮切りに、同年9月には測量機大手のトプコン株を全株売却(491億円)、同年12月に大分工場のウエハー製造ラインをソニーに190億円で売却、その後、同年12月に東芝家電製造インドネシア社の株を全株売却(30億円)、さらに2016年に入ると東芝ライフスタイルの株80%を中国企業に売却(537億円)、東芝メディカル(医療関係)の全株式をキヤノンに6,655億円で売却などと続き、所有の土地や建物も次々と売却した。さらに東芝を支えていた2大事業部門にも手をつけざるを得なくなっている。

――二大収益部門もまだ立ち直れず――
 2大収益事業とは原子力事業と半導体部門だ。原子力部門では、事業を統括していた志賀重範会長が退任。原子力事業を社長直轄とし、さらに精査を続けるとともに海外の原子力は設計と機器供給に特化し、国内は保守作業や廃炉作業を継続するとしている。海外の新設工事からは撤退する模様だ。原子力分野はほぼ解体の運命になったともいえる。

 一方、稼ぎ頭の半導体部門は数千億円の利益を出す分野だが、原子力部門の赤字が7,000億円を超え、東芝全体の最終利益も赤字の見通しとなった。場合によって資本を食いつぶし債務超過となる懸念も出てきたため、当面は分社化し20%程度の株を売却する方針だった。しかし、それでは間に合わないかもしれないので「株売却は過半数にこだわらない」とし、全株式売却もあり得ることを示唆し始めている。

 さらにリストラも厳しい。綱川社長は月額報酬を90%減額する意向といい、人員整理も数万人単位に及びそうだ。

―今は出血防止に必死。将来は?――
 今は出血をいかに防ぐかに全力を尽くしているが、問題は稼ぎ頭の分野や将来の有望分野を売却した後、今後の東芝は何を柱に再建していくのかという問題だ。綱川社長は「社員たちの心が折れないように全員で頑張っていく」と決意を述べているが、再建戦略を描けるかどうかだ。

 残った事業の中では社会インフラやエレベーター、鉄道、車部品、空調などのほかフラッシュメモリー以外の半導体事業IOT(あらゆるものがネットにつながる)などでイノベーションを目指し、収益をあげられるかどうか。

 かつては家電、重電業界の雄として電機メーカーのトップに立っていたが、今後はライバルだった日立の売上の半分位の規模になる可能性が強い。

 本稿で私は数年前から何度も“大動乱時代”が来ると書いてきたが、経団連会長を輩出し財界のリード役だった名門・東芝があっという間に転落する様を見るにつけ、現代という時代の恐さと経営者の責任の重大さを改めて感じる。
TSR情報 2017年2月21日】

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