時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:TBS「クレイジージャーニー 」でおなじみの遠藤秀紀様(東京大学総合研究博物館教授)二夜目 音源掲載

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スタッフからのお知らせです。

昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)は、ゲストにTBS「クレイジージャーニー 」やウルトラマンや特撮好きとしてもよく知られている、東京大学総合研究博物館教授の遠藤秀紀様をお招きした二夜目をお届けいたしました。音源が番組サイトに期間限定で掲載され、来週水曜正午までお聞きいただけます。

遺体との格闘であり遺体の中に手を入れて触ってみないと分からない発見や、死体を見る解剖学は、過度の経済合理性優先の圧力で、研究対象となる資料や標本の維持がきわめて難しくなっていると云う現状についてお伺いいたしました。

今回、ジャイアントパンダの第7の指を発見されたエピソードも交えてお話いただいております。また、自分で面白いと思ったら執着し、諦めずに粘り強くくいついていくという言葉が非常に印象的でした。

前回の死んだ動物を解剖し進化の歴史を研究しながら、将来の研究に役立てるため標本に残す「遺体科学」についてや、自分の手で動物の秘密を解き明かすことになった原体験についてお伺いした放送音源は、今週水曜正午まで期間限定で配信中です。

上記画像でアシスタントの安田様が持たれている骨は、遠藤様がお持ち下さったキリンの前足の手首から先、指の付け根までの間の骨です。前回放送の冒頭部分でご説明頂きました。

遠藤様がお勤めの東京大学総合研究博物館ではさまざまな展覧会が行なわれており、無料でご覧いただけます。詳細は以下リンクを参照ください。

東京大学総合研究博物館 The University Museum, The University of Tokyo

合わせて、遠藤様が上梓された書籍の一部をご紹介します。
 

次週は作曲家の浜圭介様をお迎えする予定です。

あきれる政治・官僚の質低下 朝鮮半島の将来展望語る時期に

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 「政治の説明能力が大事な時代に、政治の信頼そのものが問われている。国民は信頼できない人間の言うことを聞くだろうか。我々は深刻さを今一度感じなければならない」

 最近の政治に対する国民の信頼低下は著しいものがある。その危機感を政治家自身が講演で率直に認めたのは自民党岸田文雄政調会長である。自民党三役の一人でポスト安倍首相候補の最有力ともいわれる人物が“政治の信頼を問われている”と嘆くのだから由々しき事態だ。しかし、最近の政治に対する不信に多くの国民はうなずくだろう。

続きは、本日18:00頃に配信のメールマガジンまぐまぐ」”虫の目、鳥の目、歴史の目”にてご覧ください。(初月無料)

www.mag2.com

日曜(10日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:TBS「クレイジージャーニー 」でおなじみの遠藤秀紀様(東京大学総合研究博物館教授)二夜目

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スタッフからのお知らせです。

日曜(10日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)は、ゲストにTBS「クレイジージャーニー 」やウルトラマンや特撮好きとしてもよく知られている、東京大学総合研究博物館教授の遠藤秀紀様をお招きした二夜目をお届けいたします。

遺体との格闘であり遺体の中に手を入れて触ってみないと分からない発見や、死体を見る解剖学は、過度の経済合理性優先の圧力で、研究対象となる資料や標本の維持がきわめて難しくなっていると云う現状についてお伺いする予定です。

前回の死んだ動物を解剖し進化の歴史を研究しながら、将来の研究に役立てるため標本に残す「遺体科学」についてや、自分の手で動物の秘密を解き明かすことになった原体験についてお伺いした放送音源は、来週水曜正午まで期間限定で配信中です。

上記画像でアシスタントの安田様が持たれている骨は、遠藤様がお持ち下さったキリンの前足の手首から先、指の付け根までの間の骨です。前回放送の冒頭部分でご説明頂きました。

合わせて、遠藤様が上梓された書籍の一部をご紹介します。
 

日本は米朝会談にどう向き合うのか ~朝鮮戦争の終結合意もありうるか?~

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 歴史的な米朝首脳会談まであと数日。果たして南北朝鮮の非核化への道筋はできるのか――。

 一時は米朝首脳会談中止の危機に陥ったが、北朝鮮が韓国の文在寅大統領に仲介を依頼し、中国もこれを支援したため、再び当初の予定通り6月12日にシンガポールトランプ大統領金正恩朝鮮労働党委員長の会談が実現する見通しになった。むろん会談当日まで金委員長の出方に予断を許せないが、既にニューヨーク、南北朝鮮の軍事境界線シンガポールの三ヵ所で米朝双方の高官らが予備の事前協議を行なってきたため、もはや北が放棄を言い出すことはなさそうだ。

 むしろ北朝鮮にとっては追い詰められているといった認識にあるのだろう。北の要求は非核化の見返りに北朝鮮の体制の保証と経済的支援を得ることだとみられている。アメリカの主導する北への輸出制裁で経済的苦境に立っているほか、例え核を持っていても本気で北への攻撃を仕掛けてくるかもしれないトランプ大統領の本気度に、真剣な対応が必要と腹をくくったのだろう。

 アメリカは直前にも「我々は朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化に関与していく」とたとえ一度の首脳会談でなくとも非核化の達成を求めるとしている。ただ非核化の具体的内容はまだ明らかになっていない。“朝鮮半島の非核化”という以上、在韓米軍が保有しているとみられる核をどう扱うのか、非核化の検証をどうするのか、どんなスケジュールで実現してゆくのか、非核化の見返りとして北朝鮮への体制保証をどのように行なうのか、また経済支援をどうするのか、など細かい具体的内容がどこまで詰まっているのか――など、まだ一つも公にされていない。

 今回の米朝会談は、そもそもほとんど準備なしに決まっただけに、本当に完全な非核化まで到達できるのか、という疑問がつきまとっている。ただ、これまでの外交交渉とは違う予想のつきにくいトランプ流のディール(取引き)や脅しがどこまで通用するのかという点も注目の的なのだ。

 それにしても何らかの成果をトランプ大統領は手にしたいだろう。非核化の内容を詰めることはムリだとすると、朝鮮戦争の休戦協定を“平和協定”に変え、朝鮮戦争終結を宣言するというミヤゲを付けることはそう難しくないという気もする。“朝鮮戦争終結”の見出しが世界中のメディアに流されれば、今回の首脳会談は“成功”ということになるだろう。その上で非核化の条件、スケジュールはもう少し時間をかけてという辺りが最高の落とし所かもしれない。

 朝鮮半島の非核化だけでなく、ミサイルなどの取扱いや、今後の朝鮮半島の政治情勢などは、日本にとっても気になるところだ。これまで日本は北朝鮮に対し“圧力”をかけるアメリカの路線につき従ってきただけだった。そのアメリカが北とどんなディールで非核化を実現しようとしているのか、その方針と詳細を知らなければ日本の朝鮮外交は一から再考しなければなるまい。

画像:本日、米ホワイトハウスが発表した会談場所とされる「カペラ・シンガポール」サイトより 
以下リンクはただいまアクセスが集中しており、つながりにくい状況となっております。

新創刊「角川ebook nf」より昨日から「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」の配信が開始されました

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スタッフからのお知らせです。嶌が2015年9月末に角川書店様より上梓した「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」が昨日(5日)に「角川ebook nf」として発売になりました。

本サービスは、4月5日に角川書店様が「角川ebookカドカワイーブック:一般文芸系作品)」「角川ebooknf(カドカワイーブック エヌエフ:ノンフィクション作品)」を創刊されたラインナップの一つとなります。

話題となっている単行本を文庫本になる前に、単行本よりも安価な価格で気軽に読みたい読者のニーズに応えるため開始されました。BOOK☆WALKERAmazon kindleストア他、 電子書店各店で発売されています。

本書が発売された2015年は戦後70年目の節目の年でした。本書は、ウズベキスタンタシケント市で1947年11月のロシア革命30周年までにビザンチン風造り、3階建て1400席の「ナボイ劇場」建設にあたった457名の日本兵捕虜の実話を描いています。

いま、その劇場はウズベキスタンの誇りや親日の象徴です。嶌は、敗戦で満州からウズベキスタンに移送された捕虜の皆さんが2年かけて建設した旧ソ連の三大オペラハウスのひとつ「ナボイ劇場」の秘話を世に知らせることと、厳しいシベリア抑留の別の側面を歴史に残しておきたいという思いを持ち、記したものです。

発売から3年近くなりますが、5月13日に放送された日本テレビ世界の果てまでイッテQ!」でタレントのイモトアヤコさんがウズベキスタンを訪問し、冒頭部分で「ナボイ劇場」を紹介されるなど、今なお本書を読んで感想を寄せて下さる方がおり感謝申し上げます。 

本書は、電子版として2015年12月25日に配信を開始した単行本「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」をレーベル変更した作品で、内容に変更はございません。既にお読みになられている方はご注意ください。 

なお、本書の元となるナボイ劇場建設のお話を聞かせてくださった抑留者の皆様と共に設立した「日本ウズベキスタン協会」は今年20周年を迎えました

20周年を記念した総会を16日(土)に日本プレスセンターにて開催いたします。

ゲストに、今年2月に新大使としてウズベキスタンから日本に赴任されたばかりながら、エネルギッシュに日本各地を回っておられるファジーロフ大使をお招きして日本の印象や大使の人柄がわかるエピソードなどをお聞きしたいと考えています。

また、この20年で日本でもウズベキスタンの名が広く知られるようになり、ウズベキスタン料理の人気も高まっています。今回はウズベキスタン料理のあれこれを東京学芸大学日本語教育を学ばれ、当協会のウズベク語講師を務めて下さっているフェルザホンさんアラブ料理、ロシア料理にも似たウズベク料理の話をお聞きし、日本料理の感想も話して頂こうと考えています。どうか堅苦しい話ではないウズベキスタンのエピソードをお楽しみ下さい。多くの方のご参加をお待ちしています。

詳細は以下リンクを参照ください。 

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:TBS「クレイジージャーニー 」でおなじみの遠藤秀紀様(東京大学総合研究博物館教授)音源掲載

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スタッフからのお知らせです。

昨日のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)は、ゲストにTBS「クレイジージャーニー 」やウルトラマンや特撮好きとしてもよく知られている、東京大学総合研究博物館教授の遠藤秀紀様をお招きした音源が番組サイトに掲載されました。

死んだ動物を解剖し進化の歴史を研究しながら、将来の研究に役立てるため標本に残す「遺体科学」についてや、自分の手で動物の秘密を解き明かすことになった原体験についてお伺いいたしました。

上記画像でアシスタントの安田様が持たれている骨は、遠藤様がお持ち下さったキリンの前足の手首から先、指の付け根までの間の骨です。本放送の冒頭部分でご説明頂きました。

合わせて、遠藤様が上梓された書籍の一部をご紹介します。
 

次週も引き続き遠藤様をゲストにお招きし、遺体との格闘であり遺体の中に手を入れて触ってみないと分からない発見や、死体を見る解剖学は、過度の経済合理性優先の圧力で、研究対象となる資料や標本の維持がきわめて難しくなっていると云う現状についてお伺いする予定です。

ロマンと経済の楽しみな地域に -日本と縁の深い中央アジア-

 

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 この6月に私が会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会が設立から20周年の“成人式”を迎える。発足した当初は、まさか20年も続くとは予想もしていなかった。20年前に「ウズベキスタン協会」といっても、多くの人は「ウズベキスタンて、どこにあるの?」と言い、パキスタンアフガニスタンの「スタン」の連想からか、「パキスタンの一部?」などとよく聞かれたものだ。

 ウズベキスタンカザフスタントルクメニスタンタジキスタンキルギスのいわゆる中央アジア5ヵ国は、1991年に旧ソ連邦から独立した。国土が一番広いのはカザフスタンで日本の約7倍。ただし人口は約1700万人。一方のウズベキスタンの国土は日本の1.2倍で、人口は2100万人を超え、中央アジア諸国の中では最も多く中心的な存在だ。このため世界各国の中央アジアの代表部は、日本も含め大体ウズベキスタンに設置している。中央アジアの人口は、2050年を過ぎると1億人になるとみられている。

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大航海時代までは陸の要衝
 中央アジアは砂漠と山々が多く、近代世界ではあまり重視されていなかったが、15-16世紀の大航海時代がやってくるまでは、西洋と東洋を結ぶ陸の要衝であり世界の中心だった。西洋の文物と中国の絹などの製品を交易する中継拠点で、特にウズベキスタンタシケントサマルカンドなどの諸都市はオアシス国家として栄え、東西の人々が行き交い、紀元前から今日の世界遺産となっている壮麗な宗教施設のモスクや建築物が建てられていた。私達が中央アジアにロマンを感ずるのは、そうした歴史があり、仏教なども当時のシルクロードを通じて伝えられたからだろう。

 また東西の様々な人種、人々がシルクロードを往来していたので数多くの言葉や文化が重要な意味を持っていた。現在は中央アジア各国の現地語のほかにトルコ語系、ペルシャ語系の言葉が通ずるようだが、大昔からグローバル化の中心であり多様性の“るつぼ”として存在感を発揮していたのである。

■21世紀に蘇ってきたシルクロード
 大航海時代に入ると、交易は海路が中心となり陸のシルクロードは次第に影をひそめロマンの場所として人々の記憶に残っていった。その後、空の時代、宇宙の時代となり、ますます人の記憶から薄れてゆき交通的にも遠くて行きにくい場所となってしまった。

 しかし、21世紀に入り再びシルクロードが蘇ってきた。世界のど真ん中にあり、もし今後ドバイのようなハブ空港が作られれば欧州、中東、アジア、アフリカなどへ行くのに最も短時間でいける近い場所になるからだ。

 実際、中央アジアを通る輸送路の建設構想が進んでいる。一つは中国が提唱する現代版のシルクロード経済圏構想だ。欧州と中国を結ぶ鉄道網の建設でシベリア鉄道とも繋がれる。現代の貿易は輸送インフラの有無が貿易だけでなく、地域の発展にも欠かせない大きな要件になっているからだ。この鉄道計画はカザフスタンを通って中国を結ぶ北路とサマルカンドタシケントなどウズベキスタンを通って中国と結ぶ南路となるようだ。

 このほか中東のドバイのようなハブ空港の建設と、海のないウズベキスタンには無関係だが、東アフリカからパキスタンバングラデシュなどを寄港地とするインド洋では海のシルクロードの構想実現化も進んでいる。いわば輸送路をめぐる覇権争いに大国の中国やロシア、インドなどが絡んでいるのだ。しかも中央アジア諸国はイスラム教を信ずる人が多いものの、どこも穏健なイスラム国なのでイスラムをウォッチする場としても地政学的に欧米や中国から重視されるようになってきた。

■日本ウズベキスタン協会の設立
 日本ウズベキスタン協会の設立は、アジア開発銀行総裁だった故千野忠男さんの勧めもあって、私が1996年にウズベキスタンを訪れたのがきっかけだった。当時はまだ低開発国の状態にあったが、各地をまわってみると親日的な人々が多く、新興開発国を目指して国を挙げ努力している姿が目立った。特に日本は、明治維新から近代へ移る過程で途上国から近代国家へ猛スピードで国づくりに成功したことを知られており、“日本に学べ”という空気が強かった。 

 しかも、第二次大戦の敗戦で満州などに抑留されていた日本兵捕虜数万人が中央アジアに連行された際、鉱山や道路建設森林伐採などで働かされていた日本人を目の当たりにしていた現地人が多かった。

 中でも満州からウズベキスタンタシケントに連れてこられた日本人航空工兵の技術者たち約500人が建設したオペラハウス「ナボイ劇場」は日本人が中心となって建設した。その現場で一緒に働いたウズベク人は、日本人の働きぶりや真面目さ、手先の器用さ、一つのことを皆で協力してやり遂げるチームワークの素晴らしさなどに舌を巻いた。

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 さらに劇場を2年の約束期限の2日前に完成させたり、親切に技術を教えてくれる日本人に敬意を持つようになる。しかも劇場完成から10年余りした1966年にタシケントで大地震が発生。市内の建物の大半は壊れたのにナボイ劇場だけはビクともせず建ち続けていた光景を見たウズベク人は改めて日本人に尊敬の念を持ち、中央アジア全体に日本人の評判が伝わっていった。

出征当時の永田行夫氏

 工兵部隊の隊長だった永田行夫大尉は当時まだ24歳。自分より年上の職人や若い兵たちを前に次のように説いたという。 

 「自分たちは捕虜なのだから真面目に仕事をやらなくてもよい、と思っている人も多いだろう。しかし、ソ連側はロシアを代表するようなオペラハウスを作りあげて欲しいと言っている。いい加減な仕事で手抜きをすることもできるが、この劇場が10年も20年も残るものだとすれば、いい加減なものを作って日本人が笑い物になるより、後世に残る立派な建築物にして“さすが日本人は違う”といわれた方が後々まで誇りを持てると思う。諸君らにはいろいろな思いがあるだろうが、ここはひとつ日本人の底力、素晴らしさを見せてやりたいと考えているがどうだろう」

 このひと声で、ビザンチン風3階建ての壮大なオペラハウスは今も残る歴史的建造物になったのである。予定の期限内に建設を終えた時、日本人収容所と工事現場を預かっていたロシア人将校は永田隊長の手をとり何度も感謝の念を表明したという。

 後に建物の銘板が作られた時、ソ連から独立したウズベキスタンのカリモフ大統領(当時)は「この劇場は日本の捕虜たちによって建てられた」と書いてあった“捕虜”という言葉に反対し、「ウズベクは日本と戦争をしたことがない。それなのに捕虜という言葉を使うのはふさわしくない」として捕虜という言葉を消して“日本人が建設した”と書き換えたと言い伝えられている。その銘板は今もナボイ劇場の壁に張られており、劇場を訪れる日本人旅行者はそのエピソードを知って涙を流す人が多いという。またその日本人の働き方を間近で見ていたウズベク人のジャリル・スルタノフ氏は、日本人の働いている姿や建設中の劇場の写真などを集め自宅を改造して資料館を建てている。(詳しくは拙著のノンフィクション「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」角川書店を参照下さい)

 f:id:Nobuhiko_Shima:20180601162821j:plain劇場のプレート

 このオペラハウス建設の物語は日本とウズベキスタンを強く結びつける絆となり、故カリモフ大統領の後を継いだミルジヨエフ現大統領も日本との絆を重視し、多くの留学生を日本に送り込んでいる。

 ウズベキスタンは多くの鉱物資源を持ち、農業や果樹園栽培も盛んで、現在は7%前後の成長率を誇る新興国として注目を浴びている。かつてはイスラム過激派集団の侵入を恐れて閉鎖的な国家運営を強いられていたが、新大統領ミルジヨエフ氏が登場してから日本など信頼をおける国々からのビザ無し交流などオープンな国づくりを目指し始めた。中央アジアの人口は今後50年以内に1億人を突破するとも見られている。中央アジア各国が密接に連係し、輸送インフラが整ってくれば日本を上回る市場にもなり得るといえる。ロマンとビジネスがある楽しみな地域になってきた。
TSR情報 2018年5月30日】

 トップ画像:完成直後のナボイ劇場 映画「ひいらぎ」より


 なお、嶌が会長を務めるNPO法人「日本ウズベキスタン協会」は今年創立20周年を迎え、6月16日(土)に会員向けの総会と終了後にファジーロフ大使をお招きして日本の印象や大使の人柄がわかるエピソードなどをお聞きするイベントを開催いたします。  

 この20年で日本でもウズベキスタンの名が広く知られるようになり、ウズベキスタン料理の人気も高まっています。そこで本イベントにもう一方、ウズベキスタン料理のあれこれを東京学芸大学日本語教育を学ばれ、ウズベキスタン協会のウズベク語講師を務めて下さっているフェルザホンさんもお招きいたします。アラブ料理、ロシア料理にも似たウズベク料理の話をお聞きし、日本料理の感想も話して頂こうと考えています。

一般の方のご参加を歓迎しており、堅苦しい話ではなくざっくばらんにウズベキスタンのエピソードをお伺いしたいと思っていますので、多くの方のご参加をお待ちしています。詳細は以下リンクを参照ください。

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