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9日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:新浪博士様(埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科センター長)音源掲載

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スタッフです。9日(日)のTBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)の先週に続き埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科センター長の新浪博士様をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

順天堂大学助教授時代に師事した天野篤氏から直々に伝授されたことや 、ローソン代表取締役CEOを務める兄の新浪剛史氏から学んだことなどをお伺いする予定です。

 

前回の外科医を「職人」であり「手術は生活の一部」と考え「生活の8割は心臓外科医」と 言い切る理由や、日本の心臓外科医でトップクラスの手術数をこなす中、集中力を維持する秘策など についてお伺いした音源は明日の午前中まで番組サイトにてお聞きいただけますので、お聞き逃がしの方は合わせてご利用頂けると幸いです。

リンク:埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科センター様のサイト 


次回は書道家武田双雲様をお迎えいたします。

世界で相次ぐ強権政治の登場

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――ポピュリズムで支持率は高騰―― 

 世界のさまざまな地域で“強権支配”が広がりつつある。ロシアのプーチン政権、中国の習近平政権、トルコのエルドアン政権、フィリピンのドゥテルテ政権、あるいは日本の安倍政権もその中に入りつつあるのかもしれない。しかしその強権支配は、まだ多くは一国内にとどまりつつあり、世界や地域の覇権を担うには至っていない。一方で、企業社会でも技術や新しい構想力で独占的支配の競争が始まっているように見える。人口知能、自動運転技術、ビッグデータの活用と技術の世界などで激しい世界競争が起きており、次の時代の支配をめぐる戦いか、あるいは世界全体の凋落なのか、いずれにせよ激しい動乱がすさまじく展開されている。

 かつての戦後世界は、アメリカと旧ソ連の2つの国が自由主義圏と社会主義圏を支配し、ぶつかり合いながらも、ある種の秩序を保っていた。しかし、社会主義圏の雄・ソ連が市場競争で敗北する一方、新興の社会主義国・中国が急速に台頭し社会主義の衣をまといながら自由主義競争の世界に入り込み急速に力をつけてきたことで、世界は乱れ始めた。また、自由主義圏もアメリカの力が弱体化し、日本やドイツなどの新興国が力をつけてくるに及んで、自由主義社会圏の秩序も乱れ始めた。

 21世紀に入ると、世界の覇権国は大動乱の時代に入ってきたと言える。そんな動乱期の中で、最近目立つ動きはポピュリズム(大衆的人気)をバックに強権支配をする国が増えてきたことだろう。

 

――プーチン政権はEUと日本へ流し目――

 たとえばロシアでは、プーチン大統領の権力的支配と同時に、往年の大ソ連邦を目指す動きが大衆の支持となっている。ウクライナへの進攻と一部の領土の実効支配やEUの切り崩し、バルト三国、トルコなど南への圧力などはプーチン政権の支持率に大きく影響していよう。人口減少に危機感をつのらせるシベリア問題に、日本を誘い込む戦略もそうした流れの中で読むことも重要だろう。ロシアの広大な地域を占めるシベリアの人口は600万人くらいに減り、プーチン政権にとってはシベリア経営と統治は重要な課題なのだ。日本の北方領土問題と取引する姿勢を匂わせながら、はたして領土問題を本気で解決する気があるかどうかは、まだ謎のままだ。

 

――習政権は汚職退治と海洋進出――

 中国の習近平政権は汚職追及と国営企業の幹部、陸軍や地方首長の粛清などで国民の人気を集めつつ、一方で人権派や民主派の人々を次々と拘束、また南シナ海への海洋進出を強引にはかり、フィリピンやベトナムなどと対立しASEANを分断しつつある。その一方で“一帯一路”の新シルクロード構想やアジアインフラ銀行を設立し新たな公共事業で世界のおカネを集め、雇用を増やそうとしている。人権派や国際社会は中国の勝手な振る舞いに批判的だが、国民は喝采し習政権は求心力を高めるとともに、政敵の李克強首相の力を弱め一極化を強めている。

 

――トルコ、フィリピンも大衆人気バックに強権政治へ――

 トルコではエルドアン大統領が強権をふるっている。トルコ政治の原則とされている世俗主義イスラム色を政治に持ち込まない)を徐々に弱体化させる動きに対し、軍の一部が反乱したもののクーデターは未遂に終わり、政敵ギュレン師(アメリカ在住)の支持勢力を排除するとして拘束者は2万6,000人、官庁や学校などで処分を受けた公務員は8万人を超えた。エルドアン氏は2003年の首相就任以来(後に大統領)、国民1人当たりの国内総生産GDP)を2倍以上に押し上げ、トルコの国際的地位向上にも力があったとみられ、大衆的人気は高く支持率は70%近くに上ると言われる。このため、大量の解雇を行っても政権は安泰なのだ。ただテロも相次いでおり、事件以後観光客は激減し経済損失は10兆円に上るとも言われているので、粛清がいつまで続くか予断を許さない。

 フィリピンのドゥテルテ新大統領は、これまでのフィリピン政治家とは異質の人物だ。麻薬関係の取り締まりに強権を発動、600人を処刑したとされるほか、「フィリピンはアメリカの愛玩動物ではない」とオバマ米大統領を口汚なくののしるなど、言うことや、やることが破天荒なのだ。しかし国民の人気は高く、そのことが強権政治の基盤になっていると見られる。

 アジアでは北朝鮮の横暴が目にあまる。ただ、金正恩総書記の権力の源泉は大衆的人気ではなく、恐怖政治にある。核開発のスピードを早め、核実験も相次いで行っており、一歩間違えれば韓国などと一触即発の状態になるかもしれないし、日本が巻き添えになる危険もある。

 EUでも難民問題や不況から右派勢力が各国で力を伸ばしており、ドイツの統治力が弱まっている。そのうえ、もしアメリカでドナルド・トランプ氏が新大統領に就任するような事態になれば、世界の政治と経済は大混乱に陥ろう。ヒラリー・クリントンの健康状態が問題にされたとたん、支持率は2~3ポイント差まで縮まったというから気になる動きだ。トランプ氏の人気も白人の低所得者層をバックとしており、トランプ氏の歯に衣を着せぬ発言やメキシコとの国境に壁を作り移民を防ぐといったアイデアが、大衆人気となっている。

 世界がポピュリズムをバックとした政治で動くことになれば、いずれ歪んだ民族主義同士でぶつかる懸念もある。国ばかりではない。企業間競争も強権的力を持って独占的な支配を目指すようになると、いずれ消費者の反発を食らうことになろう。
TSR情報 2016年9月28日】

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