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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

黄砂、PM2.5対策は?

コラム(電気新聞)

 最近、マスク姿の歩行者をよく見かける。花粉症対策かと思うと、「いや中国の黄砂やPM2.5も日本に飛来しているからね」という。これまでは中国の黄砂などの飛来地域は九州や中国地方の一部と思っていた。しかし最近は関西、関東まで飛んできている。

 

 黄砂は黄河流域や砂漠から風に乗って運ばれてくる砂塵だ。しかし最近は黄砂だけではなくPM2.5といわれる微小粒子も飛んできていることがわかり一段と不安感を増幅させている。PM2.5とは大気中に浮遊している2.5㍃㍍(1㍃㍍は1㍉の千分の一)以下の微粒子で目に見えないし、捕集することもむずかしい。マスクなどをしても繊維を通して楽々と口や鼻から体内に入って対応できないのだ。

 

 アメリカでは軍隊が砂漠や砂塵地帯で訓練や戦闘を行なうので特殊マスクを配布するそうだが、日本では今のところ手に入りにくく、友人の医者に聞いたら「いまうちでは4つ確保しているが、このマスクをつけて生活するのは息苦しいし大変だ」と言っていた。

 

 黄砂やPM2.5と聞けば、日本の昭和40年代の”公害列島”のことを思い出す。私が中学、高校の頃で熊本や新潟のメチル水銀カドミウム中毒によるイタイイタイ病四日市の工業地帯では四日市喘息などがはやった。今の北京ほどではないかもしれないが、東京から青空が少なくなり、わが家の近くでも小学生の頃水遊びや釣りなどができたのに高校時代になると汚染物質が流れ、いつも泡のようなものが出没、誰も多摩川(東横線近辺)では遊ばなくなった。

 さすがに国も自治体も放置できず公害防止法ができ、環境庁が設置された。また公害反発の住民運動も各地でおこり、企業は社会的責任から各種の公害対策を次々と行うハメに陥った。70年代の鉄鋼や化学工場を取材した当時を思いおこすと石炭の粉塵対策で貯蔵場所に水をかけネットをかぶせたり、脱硫装置設置など様々な対応に追われカネもかけていた。美濃部亮吉氏が「東京に青い空を」のスローガンで都知事に当選したことも思い出す。

 

 ただ当時の企業は、公害対策に追われるだけでなく問題を逆手にとって次々と公害技術を開発し、いつの間にか日本は公害・環境技術で世界一を誇り、輸出までするようになったのである。

 

 問題は中国の黄砂、PM2.5対策などである。日本では中国の砂塵を恐れて国内対策や個人防衛に関心が集まっているが、一方で中国に対策を求めることが本質であり、日本の技術協力を活用するよう提言すべきだろう。黄砂などに悩んでいるのは日本だけではなく、まずは中国国民だし韓国や台湾、東南アジア諸国も同様なのだ。

 

 だとすれば日本で身を守る対策を考えるだけでなく、党の中国や被害を被っているアジア諸国とも連携をとる対策ネットワーク会議などを早急に大臣級で作るべきではないか。

 

 日本の火力発電所の技術や植樹による砂塵防御と砂漠化防止策は世界で効果を発揮している。また家電や自動車の省エネ製品、地域の小水力発電エネルギー対策も飛躍的に進みつつあり、全体として大きな環境対策になっている。

 

 世界の砂漠化現象は中国だけでなくアメリカ、アフリカ、中央アジアなどでも進んでおり水不足も深刻化している。こうした事情を考えるなら黄砂、PM2.5対策などは個人防御にまかせるのではなく、世界の地球環境の問題としてとらえ、公害先進国の日本は対策を問題提起し世界ネットワークで解決してゆくべきだろう。【電気新聞 201343日】

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