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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

キプロス騒動にひそむ影は? 投機か、ロシアへの嫌がらせか

コラム(財界)

 エーゲ海の美しい島・キプロスが世界の注目の的となっている。トルコとギリシャがかつて領有権を主張しあい、今も島はトルコ系とギリシャ系に分かれ境界線がもうけられている。〝エーゲ海に浮かぶ島〟と聞いただけで、何か豊かな気分になれるし、実際、世界の観光リゾートとして有名だ。私も1980年頃、トルコへ行った時、エーゲ海で泳いでみたいと思いトルコ領キプロスに行った。当時のデンクタス大統領と会見したが、いわば〝村長さん〟と思えばいいんだなと感じた途端、大統領との会見なんていう緊張感は全くなかったし、実際会ってみると村長さんのような人物だった。

 

 そのキプロスが、いま世界の金融界の話題になっている。経済危機から脱するためユーロ圏から支援を受けることになったが、何とその条件は国民の預金に課税するというのである。預金したら預金にみあった金利払いをうけるのが常識だが、ユーロ圏から総額100億ユーロの支援を受ける条件として、一般国民が預けている10万ユーロ以上の預金に税金をかけるという。預金額に税金をかけるといえば、誰も預金する気になれないし〝そんなバカな〟と思って預金引き出しに走るのは当たり前だろう。

 

 キプロスの人口は約80万人、面積は四国ほどの観光リゾート、海運などで成り立ってきた風光明媚な〝夢〟の島だ。また法人税が10%とEUで最も低い税率なので、海外からの金融資産の預け入れも多く、国内の銀行資産は国内総生産(177億ユーロ)の8倍でEU平均の3.5倍を大きく上回っている。なかでもロシアからの支援や資産が大きく、その資金額は310億㌦(約25000億円)にのぼっている。破綻もしていない銀行、預金者から税金をとれというのはドイツなどの強い圧力があったためだ。しかしキプロス議会はEUの提案を否決、最終的には高額預金者に課税。第二位の銀行を破綻処理にした。ただ、EU0.2%GDPの小国キプロスに世界が混乱するのは、結局、投機ファンドなどが小康状態を保っているユーロを煽るタネをみつけて騒いでいるようにみえて仕方がない。

 

 あるいは、キプロスが困ればロシアを揺さぶれるとみたのだろうか。昔から南の〝柔らかい下腹部〟に進出するロシアの南下政策は伝統的な戦略だ。アフガニスタン侵攻やトルコ、ボスボラス海峡に南への出口を求める動きは以前からあったし、グローバル化時代となりカネの動きが自由になればエーゲ海の暖かな島・キプロスも魅力的に映ったに違いない。

 

 しかしEUからすれば、ロシアがEUの裏庭にあたるエーゲ海で大きな存在感をもつことに不気味さを感じても無理はあるまい。そんな風に考えると今回のキプロス混乱の背景に対ロシア問題があるとみることもできる。ロシアは国際社会で孤立感を深め、中国に接近したり、日本に資源開発の協力を呼びかけるなどプーチン外交を活発化させている。もしロシアへの牽制とすれば、投機ファンド対策と同時にEUが裏で対露工作を行っているようにもみえる。【財界 2013年4月23日号 第349回】