読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

オンカロ── 10万年後の安全

コラム(財界)

 オンカロ──フィンランドは、世界で初めて高レベル放射性廃棄物の最終処分場を決め、いまその建設を行っている。オンカロONKALO)とは、フィンランド語で「洞窟、空洞、穴、渓谷」などの意味があるそうだが、いまやオンカロは放射性廃棄物の最終処分場の別称として有名になった。正式には首都・ヘルシンキから北西240㌔のオルキルオト島の地下500㍍の場所に建設中の地下都市のような巨大なシステムともいうべき空間で、放射性廃棄物を何と10万年間保持されるよう設計されているという。

 

 フィンランドでは4基の原子炉が稼働中で、さらに2基の建設を予定しているが、使用済み燃料は再処理せず高レベル放射性廃棄物として直接処分する計画という。高レベルのまま処分しようとすると、放射線の影響がなくなるまで10万年かかるとされる。このため18億年前にできた固い岩盤をジグザグに掘り進み、地下500㍍の巨大空間に最大9000㌧の使用済み燃料の廃棄物を処分場に入れてコンクリートで密閉。その作業は2100年に終了する予定で、閉鎖後は巨大空間も坑道もすべてトンネルを掘る以前の状態に戻し、地上には木や草、場合によっては建物をたてることもあり得るらしい。

 

 6万年後に氷河期が来てツンドラの地帯になり、忘れ去られることがもっとも望ましいとされているが、学者たちは未来の人間たちがオンカロを発見し、侵入した場合のことも検討している。それは300500年後の人類社会のあり方は予測つかないので、碑を建設し主要言語やムンクの「叫び」のような絵で侵入しないように警告すべきか、等々の案を議論しているのだ。人類の歴史を10万年前にさかのぼるとネアンデルタール人が登場した頃になるという。そこから10万年後を類推すると、はたして現在のような人類が存在するかどうかすら予測できないわけだ。そう考えると、人類はとんでもない〝新しい火〟を発見してしまったのかもしれない。

 

 このオンカロの実情は、デンマーク人のマイケル・マドセン監督が「10万年後の安全」と題して撮影し、現在はDVDで見ることができる。様々な映画祭でドキュメンタリーのグランプリなどを受賞している作品だが、マドセン氏は「この映画は環境映画ではなく、オンカロが何を意味するのかを、原発に賛成、反対ということよりももっと深いレベルで理解してほしい。フィンランドではオンカロを隠し、忘却に沈めてしまうことが最善策だと検討しており、その際に一番脅威になるのが人間の好奇心だといっていることだ」としている。しかしどうやって人間の本質を封じ込めることができるのか、哲学的問いかけをしている点が興味深い。

 

 日本では福島原発の廃炉作業が始まり、どうやって燃料棒を安全に取り出すか、に焦点があてられている。だが私たちは当面の事態の推移だけでなく、今から最終処分場と新たな廃炉技術をどう進化させるか、なども考えていかなければなるまい。日本が廃炉技術、方法で革新的な手法やシステムを作り出せれば、人類や自然に貢献できることになるのではないか。【財界 新年特大(201417日)号 第365回】