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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

グローバル化と地域主義

コラム(電気新聞)

 ウクライナオレンジ革命2005年にユリヤ・ティモシェンコさんが首相として登場したとき世界中の目が彼女の姿に釘づけとなった。超美人で44歳、金髪を三つ編みにして巻き上げた伝統的なウクライナ女性のスタイルは、オレンジ革命の指導者として世界中が注目した。オレンジカラーをシンボルマークとし、親欧米派のリーダーとしてその演説は常に注目を集めた。2005年のやり直し大統領選で親ロシア派のヤヌコビッチ前大統領を破ったユシチェンコ前大統領政権の首相となったのだ。

 

 しかし2010年の大統領選で立候補すると、首相時代の大統領との主導権争いやロシアからのガス輸入の不正疑惑などで敗北、その後職権乱用罪で投獄されてしまった。しかし再登場した親ロシア派のヤヌコビッチ大統領はEUとの連合協定を見送り、ロシアに接近を強めたため、ウクライナ西部地域を中心とする親EU派が昨年から反政府運動を強め、ヤヌコビッチ大統領は、議会で大統領の解任決議を可決されたため、逃亡をはかってしまった。

 

 ウクライナは、旧ソ連邦時代にあってロシア、カザフスタンに次ぐ国土(日本の1.6)を持ち、古くから”ヨーロッパの穀倉地帯”と呼ばれていたほか、石炭など資源も豊富な地域だ。それもあってか、昔から紛争の地帯でもあった。中世は首都、キエフと同名のキエフ大公国として存在していたが、13世紀にモンゴル帝国に滅亡させられると、その後はリトアニア大公国、ポーランド王国に属し、1718世紀間はウクライナとコサックの興亡が続き、そして帝政ロシアの傘下に組み入れられる。第一次大戦の時、独立を宣言するものの、ロシア帝政がレーニンの主導する社会主義革命によって1917年に倒されるとそのまま社会主義圏の旧ソ連邦の一員に。ようやく旧ソ連邦が崩壊した1991年に独立したのだ。

  

 人口は4500万人。宗教は東部がロシア正教、西部がカトリック、民族的にはウクライナ人が78%、ロシア人17%のほかベラルーシモルドヴァタタールハンガリーポーランドグルジアユダヤ人など20以上の人種構成となっている。

  

 親ロシア派のヤヌコビッチ政権崩壊とティモシェンコ元首相の釈放に欧米は歓迎の意を表明し、ロシアのプーチン大統領ソチ五輪閉幕直前の政変劇に激しく反発している。今後大統領選挙が行われることになるが、はたして正常に行われるかどうか。かつて人気者だったティモシェンコ女史が再び登場するのか。いまやティモシェンコ女史はその激しい性格で政治指導者としての人気は衰えていると言われ、国民の前に車椅子で出てきた先日の姿にはかつての輝きとオーラが全く失われているようにみえた。貿易額はロシアが3割を占めるがEU全体ではロシアを上回る。しかし、天然ガスはロシアの供給に依存しておりロシアとの関係が悪化すると再び供給を遮断されたり、高価格の受け入れを強要されたりする懸念がある。プーチン大統領は旧ロシアの再編を夢みているといわれるだけに、まだまだウクライナの前途は厳しそうだ。

 

 いま世界を見渡すと、グローバル化の影響で国境を越えた広範囲な協定が相次いでいる。EU、ユーロ、アメリカと中米、ASEANなどのほかTPP(環太平洋)RCEP(日中韓東南アジアなど)の経済協定も進められている。しかし一方でグローバル化が進むとナショナリズムが燃え上がりスコットランドバスク(スペイン)、クルド族などの独立運動もうごめいている。行きすぎたグローバル化に反省の機運が出ているのかもしれない。【電気新聞 201434日】