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したたかなベトナムの根性 日本も国際的アピールを

 さすがにベトナムはしたたかだ。大国・中国を相手に国際社会を味方に引き入れる作戦に出た。南シナ海西沙諸島近海で衝突を繰り返している中国船とベトナム船の緊張状態について、国際的に実情をみてもらおうと外国メディアをベトナムの用意した船に乗って観察してもらおうという挙に出たのだ。

 朝日新聞のルポによると、5月27日朝、複数の海外メディアがベトナム海上警察の巡視船に乗って危険海域へ近づく。中部ダナンの港を出て十数時間後、ベトナムのメディア船と漁船2隻、監視船2隻の計5隻が中国海公船「海警」9隻に囲まれ「ここは中国の海域。直ちに退去せよ」と警告。その後中国海警船がサイレンと警笛が響かせベトナム船が離れるまで1時間半以上にわたり追走が続いたとしている。

 ベトナム側によると近くの海域に中国軍艦3隻、偵察機1機、ヘリ1機もいたという。ベトナム海警によると5月25日頃に確認した中国船は軍艦1隻、海警局などの公船44隻、貨物運搬船18隻、小型船14隻、漁船50隻の計127隻。上空に航空機4機が旋回。これに対しベトナム側は海警や監視船など約60隻で、問題となっている中国の海底油田掘削現場までの約7㌔に近づくのがやっとだったという。

 すでにベトナム漁船が中国船に体当たりされ沈没した事例が報道されているが、朝日の報道によると西沙諸島近辺で手荒な扱いをうけるベトナム漁民がふえているらしい。5月16日には12人乗りの漁船に中国監視船の約30人の係官が乗り込んできて操舵室の窓をたたき割り、電気棒で殴ったり無線機器のケーブルや漁群探知機をハンマーでたたき壊されたうえ、8㌧の魚も没収されたと報じている。

 ベトナム側は「以前から中国船の妨害があったが、石油掘削活動開始後に一段と激しくなった」としている。軍事力などでは対抗できないため、ベトナム側は監視船に国際メディアを乗せ、実情を世界に報道してもらい、国際批判を高めることで中国に対抗しようとしているようだ。ベトナムといえば、かつてはフランス植民地から独立を勝ちとり、ベトナム戦争ではアメリカに勝った。中国がベトナム国境を越えてきた中越紛争でも撃退した歴史をもつ強靭な民族だ。

 中国とは日本も尖閣列島付近で最近、一触即発の衝突が頻発している。海だけでなく、空でも中国が一方的に航空識別圏の範囲を日本の空域と重なるところまで広げて懸念されている。つい先日は中国機がスクランブルをかけて日本の自衛隊の数十㍍近くまで飛行したという報告も出ている。一番恐ろしいのは、偶発的な接触から大事故、死傷者が出て国際的事件になることだ。

 日本政府は、今のところこれらの近海の事件に関し警戒にあたるとともに中国側に抗議を繰り返しているが、中国側は「侵犯しているのは日本側だ」と反発するだけだ。日本もベトナムのように具体的証拠を集め、国際社会に訴えたり、東南アジア諸国と連携する具体的行動を示したほうがよい。大事件、事故がおきてからでは遅い。

【財界 2014年6月24日号 第377回】

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