キャッチコピーから解く中国
中国はキャッチコピーの作り方がなかなかうまい。特に政権の交代期や重要大会があると、政策や外交方針などについて気の利いた造語や〝何だろう?〟と注目させる新しい言葉を作るのだ。
旧くは「改革開放路線」「文化大革命」、最近では「和諧社会」「新常態」「対日新思考」「中国の夢」「核心的利益」「愛国教育」など数えあげるとキリがないほどだ。しかし、これらの言葉は中国とその時代、情勢変化に応じた方針の本質が盛り込められているので、しっかり読み解くことが中国理解には不可欠だ。和諧社会とは権力層の腐敗・汚職が横行し、中国の階級格差が激しくなって社会不満が広まっている状況を改革しようというシグナルだった。
しかし胡錦濤政権時代はその手法が生ぬるく、環境汚染の激化もあって社会不満は、社会不安に広がった。それを徹底究明したのが汚職・腐敗摘発キャンペーンだ。習近平政権になって事情聴取をうけたり、権利をはく奪された人数は十万人にのぼったとされる。〝虎もハエもたたく〟のスローガンの下、徐才厚大将や周永康前常務委員、薄熙来元重慶書記などの大物も拘束された。
経済・社会では〝新常態〟社会に入ったと宣言している。高度成長時代は終わり、安定成長の時代に入ったというわけだ。そのため構造改革や国営企業の改革、内需型社会への移行なども説いている。安全保障・外交では「核心的利益」の重要性を叫び、海洋進出に熱心である。成長発展の中心となるアジア太平洋地域をアメリカと話合い統治しようとする意図も透けてみえる。20世紀に入り欧米先進国や日本に遅れた社会となってしまったと見て、再び大国として蘇える「中国の夢」を説いているように見える。それには愛国者も必要、ということなのだろう。
最近、中国の雑誌などでよく目にする言葉は「二つのシルクロード」「新シルクロード」といった言葉である。かつての西安からローマの道よりもずっと長い。EUはオランダのロッテルダムからスタートし、モスクワ、イスタンブール、中央アジア、西安に至りさらに韓国、日本まで地図に描かれている。もうひとつはベニス、アテネ、紅海、東アフリカ海岸(ナイロビ)を通りインド洋を横断してスリランカ(コロンボ)、バングラデシュ、クアラルンプール、ジャカルタを抜けて海口・広州、韓国、日本へ至るもので、いわば〝海のシルクロード〟である。
中国はこれらの新シルクロードこそ、グローバル化時代において中国がEU、中央アジア、アフリカなどをつなぐ重要な流通の大動脈とみているのだ。習近平主席は、昨年から各地で〝現代のシルクロード〟構想を語り、協力を呼びかけている。さらに東南アジア、西アジア、アフリカなど港湾建設を援助している。
陸のシルクロードを経済ベルト(帯)と呼び、海の方を「路」と呼んで中国では一帯一路と総称している。中国の新シルクロード戦略は、高度成長期を終え、〝新常態〟(安定成長)の中から〝中国の夢〟をめざす政権の新経済戦略の柱なのかもしれない。【財界2014年12月2日号 第388回】