時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

~BS-TBSグローバルナビ3月28日で終了~ ―約750人の社長から聞いた15年間の日本経済―

 15年間続いてきたBS-TBSの経済番組「グローバルナビ・フロント」が3月末で終了した。毎週土曜日午前、生放送で続けてきたが、それは同時に21世紀に入ってからの日本経済、日本企業、世界経済を毎週ウオッチしてきた定点観測の絶好の番組でもあった。

 ゲストは足掛け15年で約750人、9割以上は現役社長、会長で、後はエコノミスト、地域おこしの責任者、それとマハティール・元マレーシア首相、リー・クアンユーシンガポール元首相、タクシン・元タイ首相、サマーズ・元米財務長官、金大中・元韓国大統領、インド首相など多種多彩だった。ほぼ日本全国の企業を直接現地取材し、海外取材も数十回に及んだ。土曜日午前の経済番組としては、実にユニークで、その企業のことだけでなく業界のことや日本・世界経済の大きな潮流の変化も伝えてきた。またコメンテーターの榊原英資元大蔵省財務官が翌週のマーケットのポイントや予測を伝え、市場関係者には大いに参考とされたようだ。視聴者から番組や出演会社への問合せも多く、作り手側としては嬉しい限りだった。

f:id:Nobuhiko_Shima:20150401161423j:plain※画像は2001年6月18日出演時のリー・クアンユーシンガポール元首相

 BS放送には視聴率をとる習慣がなかったが、2~3年前から「優良放送番組推進会議」(委員長 有馬朗人元東大総長)ができて、スポンサーや文化人らが内容を観察、検討し公表していた(ネットで閲覧可)。月1回程度の対面調査で300~500人を対象としたものだが、有難いことにグロナビは全番組の中で常にベスト10、報道・情報番組系ではベスト3(週1回の番組ではベスト1)以内となる良質番組にランクされていた。スポンサー4社(神戸製鋼所、Jパワー、三菱商事三井不動産)はここ10年ほとんど同じで、暖かく支援して頂いたことも長く続けられた大きな要因だった。

 

――失われた20年の真最中に番組発足――

 さて、この15年といえば、2000年12月に日本で初めてBS放送が開始されたから、BS放送の歴史でもあった。地上波放送と違い衛星を活用して放送するので、日本全国で同じ時間に同じ放送を同時に見られるメリットがあった。ただ放送開始当初は、BS放送を見るためにはBS用チューナーなどを別個に取り付けねばならなかったので、視聴可能世帯数は1万戸にも満たなかっただろう。

しかしその後、ケーブルTV、CS放送、テレビ受像機に内蔵されるに及んで、視聴できる世帯がぐんぐんと増大、いまや地上波とあまり変わらないくらいの世帯で見ることができる。最近は「どのTVを見ても地上波は同じようなお笑いタレントの同じような番組ばかりで、局の個性が感じられなくなった。むしろBSの経済、旅、音楽、対談、スポーツ、ドキュメンタリーなどの方が落ち着いて楽しめるし勉強になる」という人が増えている。 

昔はBSといえば買い物情報やTVショッピングなどが多く、チャンネルをまわしてくれる人が少なかったのだが、放送内容が充実してきた今、シニア層、インテリ層などは「BS中心にみるという人が増えている」のが実情だ。その結果、BSの収支はどこも単年度で黒字、累積でも黒字になるところが出ており、番組におカネをかけて力を入れているところが増えている。ようやくBS時代が到来してきたわけで、その先駆的役割を務めたグローバルナビのスタッフたちも誇りをもって終了することができる。

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 ※画像は、最終放送後の記念写真(左から四代目アシスタント山元香里様、嶌、榊原英資様、そして三代目アシスタント原英里奈様も駆けつけてくださいました)

――冷戦崩壊からグローバル化を生き抜いた企業――

 この15年間の経済の歩みをグローバルナビの番組からなぞって振り返ってみると、さまざまなことが見えてくる。1990年に冷戦が崩壊すると、社会主義圏の中国、ソ連、東ヨーロッパの国々、社会主義的政策をとっていたインド、東南アジア社会主義的な国などが自由主義的な市場経済圏に参入してくる。その結果、世界経済の様相が大きく変わるきっかけとなったのだ。これまでの自由主義経済圏、社会主義経済圏、低開発国経済圏が次第にまざりあい、世界はグローバル経済へと動いていく。この過程で中国、東欧などが先進国の投資をどんどん受け入れ世界の生産基地となり、さらに技術移転も行われて競争力も強化してゆく。90年代末になると中国の高成長も続き、大消費市場にもなっていくのだ。また韓国、タイ、マレーシア、東欧なども新興国として競争力をつけてきた。

60~90年初めまでは、欧米先進国は成熟国化し、中国や韓国など新興国はまだ先進国の競争市場に登場していなかった。つまり60~90年は日本の一人舞台だったと言って過言でなかった。このため、日本はアメリカ、欧州、アジアの国々と経済摩擦をおこし続けていたのだ。

 

――中国、韓国、新興国の台頭――

 ところが90年代後半になると様相が変わってくる。日本はいつでも60~90年の頃のように競争に勝てると感じていたが、いつの間にか旧社会主義国新興国が安い労働コストや資源力などで力をつけており、日本の景気はいつまでも回復しなかったのだ。まさに“失われた10年”の時代になってしまうのだ。

 21世紀に入ると、日本は「新しい世紀に入って再び成長を」と考えるが、甘くはなかった。アメリカは90年代後半からインターネット、バイオ産業、エネルギーなどで再び力をつけてきたし、ヨーロッパも90年代に入りEU(ヨーロッパ連合)を結成、「ヒト・モノ・カネ」の自由化を実現しEUという大市場とコスト競争力をつけてくる。さらに中国や韓国、タイ、マレーシアなどの新興国も思った以上の力をつけており、日本はかつてのように競争力を発揮することができなかったのだ。むしろ中国、韓国などの後塵を拝し、日本企業はバブルの後始末としての再編合併に追いやられる時期が続く。それは金融、鉄鋼、家電、小売り、造船、機械、薬品、生損保などあらゆる産業に及んだのである。

 こうした最中にグローバルナビはスタートし、再編・合併の意味や新会社、新体制などの方針を各産業のトップに聞いていった。メガバンク、商社、鉄鋼、金属、機械、生損保、不動産、建設、食品、通信、などあらゆる産業の大企業、中堅企業などのトップをお呼びして業界や日本経済、世界経済と世界企業の動きを追ってきた。この間に国際社会と日本では、リーマン・ショックギリシャ危機とEU・ユーロの危機、ゼロ金利時代、シェールガス革命と原油価格の急落、ウクライナを巡る欧米などによる対ロシア制裁とルーブルの暴落、IS(イスラミックステート)の台頭とテロの多発――など大動乱の時代に突入したと言える。

 

――翻弄されながら生き抜いた企業――

 この大動乱時代に多くの日本企業、経済は翻弄され続けたと言えるだろう。ただ日本企業は伝統的に優れた技術や人材を持ち、会社の理念、軸がしっかりしているところが多く、企業存続への意志も強い。そうした視点からみると、グロナビに登場した企業の多くはしっかりと時代の潮流を見つめ、グローバル化を図りつつ荒波を乗り切って来たように思う。

 ここ数年で感しることは、中小・中堅企業に、面白く元気なところが増えていることだ。またベンチャーも急増しており、それもIT関連だけでなくモノづくりや社会的貢献などを視野に入れた企業が出現し始めていることが印象深い。

 戦争直後の日本は、まさに廃虚と化し、産業は農業、漁業などの一次産業を除くと壊滅状態にあった。そんな中から若い人が起業し、今日の日本の基礎を作っていくのだ。最近は苦境に立っているが、高度成長期に世界を席巻したソニーは、井深大氏が敗戦直後の1946年5月に社員20人弱でビルの1室を借りてスタートした企業だ。井深氏37歳、「ソニーにしか出来ないことをやる。技術にはいくらでもスキ間がある。技術の力によって祖国の復興に役立てよう」と必死になって次々と考え出す。短波放送を聞ける周波数変換器、ラジオの修理と改造、テープレコーダー、トランジスタラジオ、そしてウォークマントリニトロンカラーTV、ハンディムービーカメラ、オートマチックカメラ――など次々と新しい魅力的な商品を生み出し一躍世界企業に変身していくのだ。

 電機メーカーでは松下(パナソニック)、シャープ、三洋などのほか重電メーカーの東芝、日立、三菱なども家電製品を手掛け、日本の社会を豊かにしていった。

 また、自動車ではトヨタ、ホンダ、日産、日野、富士重工などが乗用車やトラック、軽自動車を開発していき、日本を自動車王国に育てていった。このほかにも、戦後の日本人が生活に必要としたあらゆる製品、商品を日本人たちは会社を興して生産していったのだ。

 

―頼もしい社会的使命もった新起業群―

 日本はアメリカなどに比べ、起業数が少ないとされる。アメリカ人は大学で優秀な成績をおさめた者ほど起業し、会社を大きくして夢を果たすという。今世界を席巻するITのアップル、グーグル、マイクロソフトフェイスブック電気自動車のステラにバイオ産業などアメリカをけん引している企業の大半はここ20~30年に出来た企業ばかりだ。

 しかし、最近は日本にも20代から40代早々ぐらいまでの若い人たちが起業するケースが目立ってきた。アメリカ発のITを活用したケースが多いが、そればかりでなくバイオやものづくり、第一次産業などで新しく発想して果敢にリスクに挑んでいる人々も目立つのだ。

 これまでグローバルナビで起業まもない頃紹介した企業で、その後上場したり、注目され、大企業と提携しているケースは極めて多くなっている。それらの企業のいくつかはこの欄でも紹介したが、今後も折をみて記載していきたい。3月28日が最終回で2時間スペシャルとなり、ゲストに黒田東彦日銀総裁、薮中三十二・元外務省事務次官をお迎えした。なお、これまでに登場した企業・人物名は私のサイト「嶌信彦オフィシャルサイト ゲストの一言」内のゲスト一覧を見て頂ければ、すべての人物の名前が出ています。
TSR情報 2015年3月31日】

※番組にお越しいただいたゲストの一覧は以下を参照ください。
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