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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

車検と同時に〝家検〟制度を

コラム(財界)

 家は一生の買い物──といわれる。数千万円、場合によっては1億円前後のおカネを払って住宅購入する日本人もいる。しかし、そんな高額の買い物をするのに、住宅に限って商品をあらかじめ点検することが少ない。

 住宅メーカーの品質を信用しているからあえて自分で調査しなくてもよい、と考えているのだろうか。日本人は商品の質にうるさいことで知られる。車、家電商品、日用品、食料品などでも、乗り心地、使い心地、欠陥はないかどうか──など、結構念入りに聞いたり試したりしてから買うケースが多いし、いざという時は保証書などもつけてもらい、問題があるとクレームをつけるのが普通だ。

 しかし、住宅を買う時は、まだ住宅が完成していないのでパンフレットとメーカーの説明だけで購入の是非を決定することが多い。関心をもつのは、住宅価格や間取り、周囲の環境、駅からの利便、住宅のスタイル、マンションなら何階か──などといったことが中心で、住宅の設計や構造、耐震、音対策がきちんとしているか、などの住宅の品質についてはあまり気にしていないようにみえる。品質にうるさいことで有名な消費者が、こと住宅に関しては業者まかせになっているから不思議だ。

 ただ10年ぐらい前に、マンションの耐震偽装問題が発覚してから消費者の関心も強まってきた。柱に入れるべき鉄骨の本数が少なかったり、コンクリートの量がごまかされていたり、柱や梁がきちんと工事されてなくて天井裏の宙に浮いていたりなど、まさに次々と欠陥工事、欠陥住宅が暴かれた事件だった。しかし、住宅を購入する際、消費者は鉄骨やコンクリートが正しく使用されているか、屋根裏の工事がズサンかどうか、などを調べる手立てがない。そこで当時の調査委員会で役所の点検や規制を強化することになったものの、人手が不足してまだ満足する状況には至っていないようだ。

 そこで新たな取り組みが民間から出てきた。車検ならぬ、〝家検〟制度の導入だ。住宅メーカーのプロが訪問して窓やドアの開閉状況、外壁が浮き始めたりヒビが入っていないか、配管の水もれ、劣化や床の基礎、傾きは大丈夫か、耐震強度は十分か──などを専用の測定器などを使って家の健康診断をするというサービスだ。1回の時間は3~4時間で費用は約1万円。

 住宅業界(戸建て)はいまや飽和状態で新築は年間90万戸を割り、数年後には人口減少もあって50万~60万戸台になると見られている。しかしリフォームの需要はふえているので、家検サービスをリフォームに結びつけようという狙いがある。車検のようにまだ国の制度とはなっていないが、1万円程度で家検ができるなら消費者も安心だろう。集合住宅がふえ、戸建ての家をみてくれる街の工務店が減っているだけに、修繕を頼みたくても依頼先も見つけにくくなっている。是非、多くの住宅メーカーで〝家検〟を取り入れ、日本で未発達の〝中古住宅〟市場も大いに活性化させて欲しいものだ。

【財界 2015年5月26日号】