時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

~LCC活用の地方観光政策を~ ――海外LCCが続々地方空港利用――

――来日客が増加――

 日本が“失われた10年”と言われた90年代末頃から、私は「日本はもっと観光に力を入れて外国人訪問客を迎え入れ、外貨を稼ぐべきだ」と、この欄でも何度か提言してきた。

 日本の観光客は海外にどんどん出かけ、買い物を楽しんでくるが、海外から訪日客は数年前まで、さっぱり増えなかったからだ。

 たとえば、日本への外人観光客はアジアの中で中ぐらい以下だった。円高やビザ規制、言葉の壁などが増えない要因だったが、ビザ規制緩和で中国の伸び率は83%、フィリピン70%、ベトナム47%と近隣国が増え、日経MJ・2014年のヒット消費番付けではインバウンド(訪日外国人観光客)消費が東の横綱となり、買い物代が宿泊費を上回った。デパートの売上げも単月で09年以来初めて100億円を突破した。また、買い物商品は医薬品、健康グッズ、化粧品などが人気で電化商品、服飾品も相変わらずという。ホテルも高級ホテルよりビジネスホテルが人気で、稼働率も90%以上で増床しているところが多い。

 クール・ジャパンがブームになり、アジアの新興国の中間層が増えて日本も入国ビザ規制を緩和したため、来日客がどんどん増えだ

したのだ。とくに中国の入国規制を緩めたところ、日本中に中国人客があふれかえるようになった。先日も石川県金沢市兼六園へ行ったところ、中国人が列をなし、おみやげ屋さんもいっぱいだった。

 

――外国人観光客の消費2兆円超す―-―

 昨年(2014年)の訪日観光客は1,341万4,000人、消費金額は2兆305億円にのぼり過去最高を記録した。3年前までは、目標としていた訪日客800万人になかなか届かなかったが、今はウソのような盛況だ。中国との関係が経済往来では好転してきたことや、日本の円安、東南アジア新興国でも中間層が増えて日本への関心が増大、ビザの関係が緩和されたため、気楽に日本へ来られるようになったことが大きな背景となっている。

 

――トイレが清潔にビックリの外国人――

 もともと日本の観光資源は豊富なのだ。和食をはじめグルメでは世界一だし、自然と四季変化の美しさも有名だ。ショッピング、エンターテインメント、伝統や歴史的文化とその遺跡、温泉など癒しの施設、さらには旅行に欠かせない安全・安心の居心地、清潔さもピカイチだ。いまや、駅や公衆トイレは世界一だろう。ちょっと困ってもデパート、スーパー、コンビニ、ビルなどのトイレも自由に使える。日本の若者は海外旅行というと、まずトイレを気にするが、日本にはそんな心配はない。最近の駅や公共施設などの場もつねに掃除が行き届き、世界のどこと比べてもきれいな街と胸を張れるのではなかろうか。

 昔から外国人観光客の招致の声は、常にあった。しかしいつも掛け声だけで、観光地は常に日本のお客さんを対象とした商売に中心を置いていたのだ。外国人は言葉が面倒だし、習慣や食事も好みが違い、扱いにくいと敬遠していたのだろう。しかし、失われた20年などで不況が深刻化し、日本人も旅行にあまりカネをかけなくなったため、ようやく外国人旅行客に本腰を入れ始めたのだ。やってみると中国人は“爆買い”し、日本人の数倍もおカネを落としてくれることがわかり、急速に外国人観光客ブームが到来したといえる。

 

――観光ルートを多数に――

 しかし、外国人を呼び込む方法やルートはまだまだ未開発だ。ゴールデンルートは相変わらず京都、大阪、東京などばかり、北海道、九州、四国、瀬戸内海、北陸、山陰、北関東、東北などは、まだまだである。ゴールデンルート以外にこそ日本の良さや美しい四季、親切な人情、楽しいお土産などがたくさんあるのに気付かれていないし、その努力も未だしなのである。今回、政府は日本観光“7つのおすすめコース”を発表し、北海道、九州、東北、紀伊半島などを紹介し、旅行会社社にも売り込むよう働きかけているようだが、問題は“足”である。

 このことも数年前から私は“LCC”(格安航空)と地方空港をもっと活用すべきと提案しているが、最近になってようやく少しずつその機運が出てきたようだ。外国と地方空港をつなげるLCC活用に力を入れれば安いし、地方の活性化にもつながるうえ、外国の中間層ニーズにはぴったりだろう。最近はホテルもビジネスホテルの利用が多くなったと聞くが、外国の若者も安くて面白い、隠れた地域を望んでいるのだ。北海道新千歳空港にはエアアジアグループバンコク路線が5月に開設されタイ人の北海道観光客が急増している。冬になると雪を見たことのないタイやインドネシアなどからの客も増えそうだ。新千歳はバンコク以外にソウル、上海とLCC4社がつながっており、2020年には300万人を迎え入れる計画という。

 

――新千歳、名古屋、佐賀などにLCC――

 前評判の割に鳴かず飛ばずだった中部国際空港は香港のエクスプレス、フィリピンのセブパシフィックが14年から就航、今年5月から中国春秋航空が中国5都市と結んだ。エアアジアジャパンは中部を拠点に国内線の就航をめざす計画だ。中部ではこのため、LCCの専用ターミナルや4つ目のホテルをオープンするという。年200万人の利用を見込む。

 このほか佐賀空港には国内2路線、国際2路線が就航、開港以来最高の利用者(年55万人)となった。中国春秋航空は週4便で、利用者の最多の年4万人、韓国のティーウェイ航空も週3便が入っている。

 これまでLCCは羽田や成田の乗り入れにこだわっていたようだが、地方の方が着陸料は安いし手続きに時間がかからず便利なのだ。地方空港からチャーターバスで目的の温泉地、観光地、ショッピング、エンターテインメント、和食などに行く方が成田や関空、羽田より便利かもしれない。東京近郊には、富士山に近い静岡、東京に近い茨城空港などもある。

 外国人の方がLCCの利用、活用に慣れており、アジアやヨーロッパ、アメリカなどではメーン航空会社よりLCCの方が利用客が多く、LCC時代になっているのだ。日本の観光地もLCCとどう組んでいくかが、今後の地方観光活性化の目玉となろう。LCCと空港到着後のバス会社、温泉地などとの連携、空港で地方特産品の販売などもっとLCC利用を柱とした観光政策を考えたらどうだろう。
TSR情報 2015年6月25日】