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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

ラグビー対南ア戦の興奮

 久しぶりに興奮し涙した。ラグビー・ワールドカップ初戦の日本対南アフリカ戦だ。南アフリカは世界ランク3位、日本は12位。その体格の相違と精悍な面魂に「これはやはり勝てないな」と思ってしまう。

 スタートは五郎丸のキックでリードして始まった。だがすぐさまトライを奪われて逆転される。日本がよく国際試合で負けるパターンだ。

 しかし、その後の試合展開は、まさに手に汗にぎる目まぐるしい攻防だった。体格で劣っていた日本勢のタックルが素晴らしく、ほぼ一発で相手を止めていたし、スクラムも決して負けてなかった。日本が点をとるとすぐ取り返されるパターンはあまり変わらなかったが、日本もスクラムで押しこんでゴールするなど「もしかすると大金星をあげるかも……」という期待も出てきた。日本がトライすると観客の年輩者と共に、こちらまでもらい泣きしてしまった。

 とにかく前半は南ア12点に対し日本9点。まさに僅差で南アの選手も「勝手が違うぞ」と、顔つきが必死になっているのがよくわかった。

 これまで南アはワールドカップ2回優勝、3位1回、ベスト8が2回という強豪だ。黒人差別への抵抗で27年にわたり牢につながれ、出所した後、故マンデラ大統領の願いで黒人、白人融合のラグビーチームを作り、遂にワールドカップで優勝する映画「インビクタス」でも有名になった強豪なのだ。試合は緊迫の展開で、あと2分のとき南ア33、日本31の僅差。しかしボールは日本にあり、つないでつないで相手ゴール数ヤードの所で南アのミス。PGを選んで入れば同点で試合終了。しかし日本はPGを選ばずあくまでもゴールをめざし逆転作戦に出る。

 残り時間のないまま、ボールを右に左にとまわしパスをつないで最後はヘスケスが左隅にトライし逆転に成功して笛となった。その後、幾度も逆転シーンを見続け余韻にひたった。

 ラグビーのチームには外国人も数人いる。ただ国際化時代、多様性の時代にふさわしいとみる人が多いものの、国別対抗なのだから外国人を入れて補強することに批判的な声もあった。名監督・清宮克幸氏は「私は常々、選手や監督、スタッフは日本人じゃなきゃダメだといった発言をしてきたが、それは実はささいなことだとこの日試合をみて人生観が変わった」と語り、ジャパンの中心メンバーである五郎丸歩は「日本代表にいる外国人選手にも注目して欲しい。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ」とその精神を訴えていた。五郎丸のキック前の独特のポーズと並んでその言葉に共感した人は多い。

【財界 2015年10月20日 第409回】
※本記事は先週の財界誌に掲載されたものですので、掲載に若干のタイムラグがありますことをご了承下さい。