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時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

26日の産経新聞「書評倶楽部」にて新著ノンフィクション「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」が掲載されました。

スタッフです。12月26日(土)の産経新聞「書評倶楽部」にて嶌の新著ノンフィクション「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」の書評が掲載されました。

評者は「開運! なんでも鑑定団」の鑑定士としてもお馴染みの古美術鑑定家 中島誠之助様。産経新聞サイトにも掲載頂いております。

以下記事抜粋
恥ずべき仕事はしない

 この本を読み終えた後、しばし涙のにじむのを覚えた。涙の理由は過酷な捕虜生活であろうか、それとも望郷の哀(かな)しさであろうか。いや目がうるんだのは、そのどちらでもない。ひたむきな日本人の真面目さと、可憐(かれん)なまでの人間愛に感動したからだ。

 物語は敗戦直前の満州国から始まる。活況を呈していた戦闘機の修理工場が、日を追うにつれ閑散とし戦況の悪化が身に迫ってくる。そしてソ連の参戦で満州国は壊滅し、祖国日本が敗戦する。その状況を満州国建設の当初から、極めて簡潔に記述して、現代社会に生きるわれわれに歴史の真実を理解させてくれる。

 捕虜になった日本兵数十万人の労働力を、ソ連の指導者スターリンはなぜ必要としたのか。シベリア抑留は日米戦争開始当初からのソ連の方針だった。それを必要としたソ連の労働事情があったことを教えてくれる。

 読みやすい文章は、まるで著者が虜囚となって記した日記をひもとくがごとく、読者を中央アジアにいざなう。

 ソ連は飛行機工場の技術者集団だった捕虜たちを、手先の器用な日本人としてタシケントのオペラハウス建築に使役するのだ。統率者をつとめた永田行夫隊長は「全員無事に帰国すること」を第一の目的として、ソ連四大劇場の一つである壮大なナボイ劇場の建設に取りかかる。

 ノルマ達成の力量によって不均衡に配られる食料を、隊の全員に均一に分配させるための交渉。そして永田を大きな人物だと一目置き、やがて友情が生まれてくる収容所長のアナポリスキーの心情。

 ウズベク人を不思議がらせた日本人の仕事ぶり。その源は、「和の心」であり日本人として恥ずべき仕事はしないという信念だったのだ。中央アジアを襲った大地震にもびくともしなかったオペラハウスは現在、ウズベキスタンと日本との友好の印になっている。

【プロフィル】中島誠之助
 なかじま・せいのすけ 昭和13年生まれ。東京・青山の骨董通りの名付け親。著書に『句集 古希千句』ほか


なお、この掲載によりアマゾンの「日中・太平洋戦争」部門の1位に再びランクインしております。年末年始にぜひお読みいただけると幸いです。