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面妖な閣僚らの疑惑

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 千葉県の建設会社が甘利明前経済再生担当相の秘書、事務所に〝口利き〟を頼んだとする事件は〝いまどきこんなことをまだ行っていたのか〟と、あらためて日本の政治土壌のひどさを国民に印象づけた。

 建設会社は「独立行政法人都市再生機構(UR)」と道路建設に伴う補償を巡って、2011年頃から補償協議を始めており、同社の資材置場が道路建設に伴い使えなくなることから何度も交渉を続けた結果、13年に約2億2千万円の補償金を支払うことで決着したという。同社は当初5億円を求めたが協議が難航したため、建設会社側は甘利氏の秘書に相談し、秘書がUR側と面談。14年に新たなトラブルが出て、この時も甘利氏の事務所に相談し、UR側と16年にかけ10回以上面談。UR側は「提示した補償額は基準の限度いっぱいだ」と突っぱねたが、甘利氏の秘書は「もう少しイロをつけて……」と頼んだらしい。

 UR側は「この件は甘利大臣もご存知なのか。これ以上の深入りはよくないと思う」と回答したとしている。

 問題はこの間に甘利氏秘書に建設会社から500万円支払い、さらに13年と14年に甘利氏に50万円ずつ渡したとされていることだ。50万円は菓子折りの下の封筒に入っていたようだが、甘利氏は封筒をそのまま受け取り、内ポケットに入れたと述べている。菓子箱の下に現金入りの封筒を入れて渡すやり方やその封筒を黙って受け取る感覚も正常ではない。「この封筒の中は何ですか」と聞き、50万円も現金が入っていたら「これは受け取れない」と返すのが常識的応対だろう。中身も見ず受け取り、ポケットに入れるということは、事前に知っていたと疑われても仕方あるまい。

 甘利氏側は〝口利き〟はしていないと主張しているが、政権の実力者が建設業者とURの間に入って仲立ちをしている図はどうみても正常ではないし、そこに大金が動いている図を知ると「いまだにこんなことが……」とあきれざるを得ない。

 それから1週間もしないうちに今度は遠藤利明・五輪担当相が外国語指導助手(ALT)を派遣する会社から5年間で約1千万円の個人献金を受けていたニュースが出た。遠藤氏は以前からALT派遣事業にからみ国の予算をつける働きかけを文科省に行っており、16年度予算で具体化し、企業側から約1千万円の献金を受けていた。政治資金については「適正に処理している」と突っぱねている。

 甘利氏の問題は捜査当局も調査する模様だが、政府関連機関や五輪などにからむカネの疑惑は下手をすると安倍内閣の致命傷になるかもしれない。五輪や教育が醜文化すると国民の応援気分もますます低下しよう。
 【財界 2016年3月6日号 第418回】

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