時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

新潟地震に遭遇して感じた「人と国土」

スタッフです。この度の熊本県を中心とする地震により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

19日のTBSラジオ森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」では新潟県中越地震に遭遇した話より今後に活かせるお話をお届けいたしました。本日は、新潟県中越地震に遭遇したことを2004年の「財界」誌のコラムに綴っておりましたのでご紹介します。

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 新潟県中越地震に遭遇してしまった。10月23日午後5時19分新潟発の新幹線「とき322号」に乗車。帰京する最中の5時56分、突然、新幹線の「とき」がガタガタと揺れて急停車し、社内の明かりも消えた。余震がすさまじく「これは只事ではない」と直感し、直ちに持参していた携帯ラジオをつけた。ほとんどの局が聞き取れなかったが、ようやくNHKにぶつかり、耳をすますと「震度6強新潟県中越地方が震源地」という。

 まもなく車内放送により、「とき」の停車位置は「浦佐」駅と「越後湯沢」駅間で、浦佐から約3キロとわかった。脱線した新潟行きの「とき325号」は、浦佐駅長岡駅間で立往生していたわけだから、まさに両列車がすれ違って2~3分もしないうちに大地震が発生したことになる。以後、私は約7時間にわたって新幹線内ですごし、午前1時過ぎにようやく近くの大和町・大和中学校に避難した。停車中、余震は連続しておこり、時折強震にも襲われたので、列車が横倒しになるのではないか、という不安が何度も胸中をよぎったものである。

 こんな経験はむろん初めてのことだ。それだけに、7時間の車中でいろいろ考えることが多かった。

 何といっても、日本は今後、「安全の公共事業」を本気で実現すべきだということだ、大地震、台風、大雨が日常化し、道路、橋、堤防などが破壊されて死傷者が続出したり、集落が孤立する状況を目の当たりにし続け、「安全」を第一に考えた社会インフラ整備や情報網確保が、いかに重要かを身にしみて感じた次第である。

 たとえば最初の情報源となった携帯ラジオ。私はたまたま30分ほど聴取可能で、大ざっぱな地震状況をつかむことができたが、トンネルや地下鉄、地下駅などではほとんど聴取不可能だ。また携帯電話も通話不能となる。情報がなく、自分の置かれている状況がわからない時ほど不安になり、そのことがパニックにもつながるのである。情報の重要性を考えると、ライフラインとして携帯ラジオや通信のインフラ整備を早急に実施すべきだろう。

 もうひとつは、地方の危険な道路、橋、堤防などを最優先に考える公共事業政策を打ち立てたらどうか。二十世紀の公共事業は、日本の高度成長を実現するための国土開発が中心だった。いわば「経済と国土」を軸とする開発思想で公共事業を推進、その開発が危険な道路を多くし、土砂崩れなどをおこしやすくしているといえよう。洪水や堤防の決壊、地下への水の進入なども開発のツケだろう。今回の地震被害をみていると「安全」すなわち「人と国土」を軸とした思想に変える時代となったのではないか。
【財界 2004年12月7日号 149回】

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