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恥ずかしい政党力

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 参院選はさっぱり燃えなかったが、都知事選はなかなかエキサイティングだ。火付け役は小池百合子衆院議員の突然の出馬宣言だった。


 テレビ東京の番組で人気キャスターの座を突然捨て、細川護熙氏が立ち上げた日本新党国会議員へ転進。その後、小沢一郎氏の新進党自由党、保守党などを経て自民党に移り、小泉内閣時代に三度の環境大臣安倍内閣防衛大臣をつとめるなど閣僚経験も豊富だ。また選挙区は2005年の郵政選挙の際に地元の兵庫を捨て東京10区へ〝刺客〟の落下傘候補になった。つねに1人で決断、行動し群れない点が真骨頂で当選回数は衆院8回、参議院比例区1回。学歴がまた異色で国連公用語アラビア語が加わると知ってエジプトのカイロ大学に進学、アラビア語を修得してアラブ圏各国に人脈をもつ数少ない政治家となった。


 自民党都連は人気アイドル櫻井翔さんの父親、桜井俊総務省事務次官に白羽の矢を立てたものの説得に失敗。結局自民党とは無関係で地方創生を唱えていた増田寛也・前岩手県知事に鞍替えした。この間、俳優の石田純一氏、日本弁護士連合会の宇都宮健児氏らも立候補を口にしたが、元毎日新聞記者の鳥越俊太郎氏が4野党の統一候補に決まると結局、増田氏、小池氏と鳥越氏の3人の戦いに絞られた。


 小池氏は環境相時代にクールビズを日本に定着させた実績などがあるものの、地方自治や東京論などでは増田氏に一日の長があることは否めない。ただ増田氏は地方の危機を訴え続けてきた人で東京の一極集中には批判的だった。都知事になったとき、地方創生と東京集中の両立をはかる新たな説得力ある構想を打ち出さなければなるまい。鳥越氏の強みは記者時代から現場を歩き人脈が豊富なことだ。新東京構想をどう打ち出すかが課題だろう。


 煮え切らず、選挙をつまらなくしているのは既存の政党、政治家たちだ。いつも勝てそうな候補を第一の狙いとし、理念や構想、人間力より知名度優先である。1300万人の都民を囲い込むには一日で名前が知れわたることと政党の組織力さえあれば大丈夫、とタカをくくっている。これではいつまでたっても真のプロの政治家は生まれまい。


 東京は世界最大の都市の一つであり、少子高齢化、交通、環境、犯罪など都市のシンボリックな課題を抱える街だ。豊かな税収を効率よく活用し世界一快適な街にできるかどうか。2020年の東京オリンピックはたんなるスポーツの祭典でなく東京の都市機能や住み心地なども世界から注目される。もう恥ずかしい知事だけはご免こうむりたい。
【財界 2016年8月23日 第429回】

※本コラムは都知事選の結果が出る前に寄稿しております。

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