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15日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~今後アメリカ・世界の秩序は保てるのか!?~

スタッフです。
15日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:トランプ新大統領で、アメリカは世界の外交の軸になるのか?

Donald TrumpDonald Trump / Gage Skidmore


【世界中がトランプ氏の話題でもちきり】
もういまや世界中がトランプ氏の話題でもちきりだ。実は昨日(14日)パネルディスカッション(日本ウズベキスタン協会主催「アメリカ大統領選後の世界―米欧、中国、イスラム、日本―」)を行ないアメリカ、中国、イスラム、日本の専門家に登壇いただいたのだが、「皆、まさかと思った」と衝撃を受けていた。

衝撃を受けたのは日本だけではなく世界中がそうだった。「トランプWho? トランプ氏はいったいどういう人物なのか?」と各国首脳がトランプ氏を探っているという状況。安倍首相は17日にトランプ氏に会う予定で、メキシコのペニャニエト大統領も早期会談で合意。オーストラリアのターンブル首相は電話会談でTPPを批准した理由を滔々と説き、考え直してほしいと懇願。中でも面白いのは、フィリピンのドゥテルテ大統領はこれまで激しいことを言っていたが「トランプ氏のいるアメリカとはけんかはしたくない」と言った。さらに中国の習近平国家主席も電話会談をするなど、各国あわただしい対応をみせている。

そこで本日は、トランプ氏の注目すべき点についてお話ししたい。

【急がれる人事】
まず、トランプ氏は不動産ビジネスで成功した人で、政治や軍隊の経験は皆無。そういう人がいったいどういうかじ取りをしていくのかということを皆注目している。当面の注目は「人事」。政権移行チームを立ち上げ、1月20日の就任式までに現政権から人事を引き継いでいく。およそ4000~5000人もの人が変わるといわれ、うち700~800人は議会の承認が必要である。過去の大統領の人事を振り返っても就任までに8割程度しか任命を終えられてないというのが実態である。政権移行期間中は、現政権が強い指導力を発揮しにくく、行政機構が「最も脆弱な期間」とされている。この間にイスラム過激派などによるテロ攻撃がされる可能性もないわけではないので、ゆっくり人事を決めている暇はない。

【首席人事の重点がポイントに・・・】
新政権の人事の名前が徐々に明らかになってきており、マイク・ペンス次期副大統領(下院議員6期経験後、インディアナ州知事)、首席補佐官には共和党の穏健派でさまざまな人脈をもつラインス・プリーバス氏(共和党全国委員会委員長)。首席補佐官とはいってみれば日本の官房長官のような役割。今回はこの首席補佐官のほかに新たに首席戦略官を設け、右派の参謀役スティーブ・バノン氏(保守系オンラインメディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の会長)が就任。まったく正反対の二人が横並びになり、いったいどう調整していくのかが今後のポイント。なぜこの二人を並べたのか、いまひとつわからないところがある。

プリーバス氏に重点を置くとこれまでの支持者が不満を持ち、バノン氏に重点をおいても「いったいどこにいくのか」という不安も生じる。そういう意味でもこの二人のかじ取りに注目が集まっている。

【過去をひも解いても非常に重要な役職】
首席補佐官という職は、過去の例をみてもかなり重要なポスト。常に大統領と顔を突き合わせ、一番の理解者である。例えばニクソン共和党政権時のアレクサンダー・ヘイグ氏(退任後は国務長官に就任)、フォード政権時はドナルド・ラムズフェルド氏。レーガン政権時はジェイムズ・ベーカー氏(ブッシュ政権時代は国務長官に就任)とドナルド・リーガン氏。リーガン氏は当初財務長官で1985年のプラザ合意の際、強いドルを変え、当時240~250円だったドルを、200円台まで円安にどんどん変えていった。この二人はアメリカのドル政策を変えた人たちである。

これらの意味からも首席補佐官の意味は大きい。また、レーガン政権時に首席補佐官を務めたハワード・ベーカー氏は後に駐日大使を務め、日本とアメリカの橋渡しをした人物でもある。それゆえ、首席補佐官が誰になるのかというのは非常に重要だ。オバマ政権下ではジェイコブ・ルー氏が首席補佐官を務めた後、財務長官に就任している。

こうやって見てくるとプリーバス氏が中心になってくるのかどうか。また、バノン氏の立場も気になる。いったいどちらが主導権をとりトランプ政権を支えていくのかというのがこれからの大きな問題で、そのことによってアメリカの方向も変わってくるだろう。これはアメリカの外交にも影響するとみられる。

【これまでのアメリカの価値観はどうなる?】
アメリカの外交の特色は、自由主義、環境、多国籍、移民を認めるということである。しかしながらトランプ氏は、保護主義イスラムへの嫌悪、移民反対といったような発言をしており、これまでのアメリカの価値感の大半を否定しているようにみえる。そういう意味からも、首席補佐官、首席戦略官のどちらの意見をとっていくのかということは非常に重要である。

また、トランプ氏は中国との問題において「中国からの輸入品に45%の関税をかける」「TPPに反対」「同盟国におカネを出させる」と発言。メキシコに対しては「メキシコの負担で壁を作る。」と発言。途中から壁をフェンスという表現に変えた・・・

さらにNAFTA北米自由貿易協定)の見直しやWTO(世界貿易機関)からの脱退も示唆している。これまでのアメリカの自由貿易を徹底的に否定し、保護主義に変わろうというしており、アメリカが本当に内向きな政策になっていくのかどうかという点に各国が注目している。

【本音が見えぬトランプ氏】
トランプ氏がこれまで発言したことを本当に実行し始めると世界秩序が乱れ、本当に大変なことになる。いったいどこまで実行するのか、今はまだ不明である。そうすることによって、20世紀型の資本主義が壊れ、どの方向にトランプ氏が引っ張っていくのか、さまざまな問題が出てくるように思う。

選挙の時の発言をすべて実行するというのは、過去の例をみてもあまりない。オバマ大統領もそうだったように、少しづつ変えていって現実的になるだろう。そういう意味からか、最近トランプ氏は多少現実的なことも言い出している。本質がいったいどちらにあるのかは、まだよく見えない。日米関係においても「現在の自動車関税2.5%を、牛肉と同様の38%にする」などと発言している。これが現実になると日本は本当に大変な状況に陥り、どちらが本音かということがまだはっきりわからない。

【今後の行方に注目】
安倍首相は17日にトランプ氏と会談を行なうが、日本の主張をきちんと伝え、「アメリカは世界を主導してきた国であるから秩序を守ってほしい」ということをアドバイスすることも大事である。

TPPに関しては気持ちを変えられるかということが不安視されるが、元々はアメリカが言い出したことである。安倍首相はアメリカのいうことを聞くばかりではなく、アドバイザーになるという気概をもってぶつかっていってほしい。先進国の会談としては一番最初に行われるので、いいポジションをとったという感じはする。はたしてどういう内容になるのか注目したい。

※なお、本放送時点の内容であるため、現時点の情報と若干の相違があります。

※なお、本放送時点の内容であるため、現時点の情報と若干の相違があります。