時代を読む

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アメリカ理念の没落か

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「トランプはポピュリズムで権力を握ったが、その後の統治手法はポピュリズムではない。今後、上院も下院も最高裁判所も保守一色で染まるだろう。しかしアメリカ社会の分断にも深い傷跡を残した。新大統領選後1週間以上も反トランプの大衆行動が各地でおこっていることは、分断の深刻さを残している」

「アメリカは世界一の軍事力を世界安定の国際公共財として使うケースが多かった。また、自由貿易の旗頭であり、パリ協定(環境)、核不拡散、反テロなど優れた課題設定能力で世界を引っ張ってきた。それがアメリカファースト、メキシコ国境に壁建設、TPP反対、NAFTA北米自由貿易協定)反対、日本の軍事負担をさらに増大──など一人よがりの主張が目立つ」

「良しとされたグローバル化のスピード違反が世界各地で起こっている。自動車の街・デトロイトはいまやデストロイ(破壊)状況だ」

「チャイナマネーがデトロイトの街を復活させつつあり、米国各州のトップが中国に資金協力を求めている。世界全体の衰弱の動きの中で、中国からみていると個別的には世界が必死に動いているようにみえる。中国はまだ覇権国にはなれないし、その気もないと思う」

「世界はプーチン習近平、トルコのエルドアン、比のドゥテルテ、北朝鮮金正恩、それにトランプと安倍政権など一強支配の国が目立ちはじめた。一方でEUはイギリスの離脱、難民問題でガタガタだし、中国・ロシア経済も悪化し、日本も依然消費がふえない。健全な自由主義市場経済、国際協力が崩れ始め21世紀型の世界理念がみえない点が気になる」

「中東も、アメリカとシリア、ロシア、ISなどの合従連衡が複雑で変化しつつあるが、ISがこれ以上力をもつことはありえないのではないか。アメリカ国内のテロが気になるが、今のところ国内のイスラムテロ対策は案外しっかりしている」

「ロシアはEUと対抗するため中国に顔を向けたが、しっくりいっておらず最近は日本に接近している」

 ──これらは11月14日、日本ウズベキスタン協会主催の「アメリカ大統領選後の世界と日本」と題するシンポジウムの中で各パネリスト(岸井成格氏、高橋和夫氏、田中均氏、富坂聡氏、司会嶌信彦)が語った骨子だ。大統領選直後の一流論客の討論会だったので雨の降る悪天候の中、200人の定員に対し187人の人が参加された。質問も多く討論会終了後は、「いい討論会だった」「来た甲斐があった」などの感想も多かった。皆さんの出されたキーワードは「大変動時代の始まり」「世界の軸はどこへ向かうか」「アメリカ一強時代の終焉」などだった。
【財界 新年特大号2017 第437回】

※画像:今年3月のトランプ氏への抗議デモの様子(Wikimedia Commons)

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