時代を読む

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13日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~大動乱の世界 日本の立ち位置は?~

スタッフです。
13日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:ドゥテルテ、トランプ、次は欧州。右傾化する世界に警鐘を!

最近世界を俯瞰してみるとイギリスのEU離脱がきっかけといってもいいと思うが、トランプ氏の登場にも象徴されるように世界のトップリーダーの印象が一変してきたように思う。非常にナショナリズムが強くなってきたというのが大きな特色だ。特にヨーロッパで顕著に表れ、ヨーロッパは分断するのではないかという危機感も出てきている。

【分断危機のヨーロッパ】
どのような状況かを紐解いてみると、イギリスのEU離脱を筆頭に先日行われたオーストリアの大統領選では右派が強いと言われていたが、リベラル派候補緑の党)のファン・デア・ベレン氏が勝利。かろうじて右への流れを押しとどめたが、大接戦でどちらかというと奇跡に近い。そして、イタリアでは上院の権限を大幅に緩める憲法改正国民投票でレンツィ首相が大敗し、辞任に追い込まれた。

さらに来年は3月にオランダで総選挙、4~5月にフランス大統領選挙、秋にはドイツで総選挙と選挙が続く。フランスではオランド大統領が率いる社会党から退陣を表明したオランド大統領の後に続く有力候補の排出がまだ明確になっておらず、ルペン氏の台頭に対抗できるのかどうかに注目が集まっている。また、オランダでは反EUを掲げる自由党ウィルダース党首に勢いがあり、ドイツでは難民受け入れに反対する勢力が勢いを増しメルケル氏の力が弱まっているという。

【過去の歴史から今の右傾化を考える】
いずれも不穏な空気で、世界全体を見回してもナショナリズムが高まり、転機が来ているように感じる。自国の利益や独立というところにだんだん集約し始めている。よく考えてみると、過去のヨーロッパの歴史の繰り返しが起こるのではないかという不安も出てきている。

ここで、今の右傾化の流れについて過去の歴史と比較し、考えてみたい。ヨーロッパには過去にヨーロッパを分断させた苦い経験がある。それは1929年のアメリカ大恐慌から世界恐慌が起こった際にファシズムを到来させたことだ。ドイツではナチスヒットラーが出現し、東欧や中欧を侵略していった。中でもフランスはナチスにパリなどが侵略され、シャルル・ド・ゴール大統領はロンドンに亡命しロンドンからフランス国民にレジスタンスを呼びかけるといった状況に陥った。

また、イタリアでもムッソリーニが出現し、エチオピやアルバニアに侵略。日本も中国や東南アジアに侵略した。この日本、ドイツ、イタリアの3国同盟、枢軸国同盟を締結し、米欧の連合軍と対決することになった。

【持てる国vs持たざる国】
これはどういうことかというと、世界恐慌後広い国土を持つアメリカや各地に植民地を持っていたイギリス、フランスなどの豊かな国が連合軍を結成。それに対して、日本、ドイツ、イタリアのような資源を持っていない国は経済的に追い込まれ、軍事活動に拡散し、最終的に戦争に発展した。このことにより結局世界は分断し、ナショナリズムファシズム双方が侵略戦争に突き進んでいった。国対国の戦いというのが、第二次大戦の流れ。

その後、連合国軍は敗戦前に勝ちを確信し、1944年にブレトン・ウッズ会議にてアメリカとイギリスが主導して自由貿易体制を打ち立て、ナショナリズムが高揚したことを省みて平和に進むことを終戦に先駆けて決定。第二次大戦後もその体制に流れた。それとともに、二度と戦争をしてはいけないと賛否はいまだにあるが日本に平和憲法が作られた。また、数百年にわたって戦争を繰り返してきたフランスとドイツが、 大戦後に重要なパートナーになり、その二国が中心となってEUを作り上げていった。

こうやってEUが作り上げられていったが、ここにきてまた分断の危機に直面しているのが問題。一旦はナショナリズムに対する反省があったものの、最初にお話しした通りそれぞれの国が自国の利益を優先する流れを作り出す人たちが出現し始めた。このことは歴史が繰り返されているようにも見える。

【自国優先主義への変貌】
冷戦終結後の1990年代には、グローバル化のもとで 「ヒト」「モノ」「カネ」の自由移動が加速し、経済成長を促していった。しかしながら、2000年代からの対テロ戦争と連動して、 欧米諸国では徐々にヒトの自由移動の結果である移民や難民に対する偏見や差別が噴出し始めたということがある。さらに、リーマンショックを皮切りに発生した世界金融危機が、 各国を海外との付き合いを制限して自分たちの利益を確保することに 向かわせる転機となっていったように思う。

不況が始まり世界的な就職難や企業成長の停滞 によって、各国で失業や就職できない若者が増加。その結果、裕福な国で職を探すための移民の急激な増加や、中東での難民増加に表れ、ヨーロッパにおける自由な 「ヒト」「モノ」「カネ」の移動に対する疑問が噴出し始めた。その結果、2014年のEU議会選挙では、反EUを掲げる政党が躍進。フランスでは移民排斥を叫ぶ国民戦線が第一党に躍進。さらに、シリア難民の急増も、この動きに拍車をかけていった。

【ヨーロッパの二極化は世界へ!?】
歴史は繰り返されるというが、かつてのナショナリズム高騰の時と今とでは類似点もあれば相違点もある。かつては先に述べた通り、持たざる国と持てる国の戦いとなり、持たざる国が他国に資源や食料を求め侵略していた。現在は一国の中で「ヒト」「モノ」「カネ」の移動やIT革命が起こり、中間層が二極化し、国同士よりも国内での二極化により状況が複雑になっているといえるのではないだろうか。

現在のヨーロッパではナショナリズムというか「自国第一主義」のような考えが進行している。それに輪をかけたのがトランプ氏である。ヨーロッパ各地ではかなり暴動が起こり、ヨーロッパ内での二極化が暴動を引き起こしているのだが、これが世界に波及するのではないかという不安もある。

【外交における日本の存在感の薄らぎ】
もう一つ気になるのは、ロシアと中国の動き。アメリカはこの2国を本当に抑えることができるのかどうか。ロシアはヨーロッパでの経済活動は厳しいため、極東地域に流れてきている。また、トランプ氏は中国と台湾の問題に対し「2つの中国を認める」と発言。これらのことからもナショナリズムや自国第一主義ということが徐々に強まっており、国際関係が複雑になってきているように思う。

アメリカとロシアの接近、その一方でアメリカと中国の関係において緊張が高まる可能性もある中で、日本の存在感が徐々に薄らいでいることが気になる。日本は活発な外交を行なっているようにみえるが、実は肝心なポイントにおける存在感が薄い。日本の外交の山場を越したようにも思う。直近ではトランプ氏との関係構築、プーチン氏がまもなく来日するがどのような対応をするのか、ただ単に会っているだけでは親しいことにはならない。一番最初に面談した、10数回会っているということだけでは実がある会談を行なっているとはいえない。このままで日本が本当にやっていけるのかという点が心配だ。

画像:Flicker(Royal Opera House Covent Garden)

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