時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

覇権の交代に必要な理念

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 2018年は帝国の交代が始まる年になるかもしれない。第二次大戦後の米・ソ冷戦時代にあってアメリカは1990年代初頭にソ連・中国の社会主義国との競争を制して一強時代を築いた。しかし21世紀に入るとイスラム、中国が台頭、アメリカがイスラムのテロ活動に力をがれている間に中国が社会主義強国の旗を掲げて着々と力をつけてきたのだ。

 第二次大戦前の覇権国は大英帝国だった。17世紀から約300年にわたり7つの海と陸を制し、世界を牛耳っていた。しかし覇権国はいずれ衰退し、新興勢力にとって代わられる。イギリスの場合、ドイツの侵攻を受けて衰弱し、かつての植民地だったインド、パキスタン、カナダ、オーストラリアなどが次々と独立し、アメリカに世界統治の座を譲った。

 21世紀に入ると、そのアメリカも段々、力を落とし、この欄で何度も書いてきたように世界をリードする力が衰弱してきている。それは軍事力や経済力だけでなく、世界を引っ張る理念や旗印に魅力が乏しくなってきたからだろう。21世紀のグローバル化時代、価値観が多様化してきた時代、格差の激しい時代、新興国が力をつけてきた時代――などを包含する新しい思想と国力が必要なのにトランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を叫ぶばかりで、評判を落としている。

 一方の中国は国力をつけ、勢いを増してはいるものの、国際社会では拡張主義的な行動や世界を納得させる新しい理念も打ち出せず、強国に走っているだけのように見える。
 こうした両大国の下で競争が続いて行くようでは、世界はますます居心地が悪くなりそうだ。歴史をふり返ると、覇権国の交代は、戦争の勝敗や国力の急速な衰退、理念の喪失などが重なってじわじわと進行してきたようにみえる。

 かつてのイギリスは、封建制から近代国家への移行を推進し、その近代的理念や国家制度、産業革命などによる国力の増進などが他国より一頭地を抜いていたため、世界の先頭を走ることになった。またよその国々もそれぞれの方法でイギリスの思想、国づくりなどの後を追ったため、新しい時代を切り開いてきたといえる。

 新しい技術の相次ぐ革新と国民国家を超える新しいグローバル化時代の到来の中で21世紀は一体どんな世界を作り出そうとしているのか。アメリカ・ファースト社会主義強国を作ろうとする〝中国の夢〟も、その”解”ではなく大動乱時代の一過程なのではなかろうか。

 日本は大国アメリカといれば安心とみているが東南アジアを引っ張る理念、リーダーシップを発揮できないものか。


【財界 2018年2月13日号 第464回】