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仮想通貨の危うさ

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 ブームに沸いていた仮想通貨で580億円の資金流出(被害)が出て、一挙に仮想通貨への関心と不信が高まっている。2016年に香港、17年に韓国でもハッキングやサイバー攻撃で100億近い流出事件が起きており、いずれ日本でも狙われるとみられていたが、十数分で580億円も資金流出したことで日本でも改めて仮想通貨の管理が注目され始めた。

 仮想通貨とは文字通り架空のおカネである。インターネット上で取引される電子データで、普通のおカネと違い実物の紙幣や硬貨は存在しない。利用者はネット上の取引所に口座を作っておカネを振り込んで仮想通貨を買い、保管しておき、必要な時に使うシステムとなっている。

 ただし普通の通貨と違い、国の中央銀行が発行したり、管理しているわけではない。いわば金融当局が価値の裏付けをしているわけではなく、“利用者が信用していること”で成り立っている。いわば商品券のようなものだ。偽造が難しいとされるブロックチェーンと呼ばれる技術を使っているが、ハッキングやサイバー攻撃にさらされて資金が流出した時は、国や中央銀行が保証するわけではなく、取引所を開設している企業が責任を負わなくてはならない。今回の場合、取引所を運営していたコインチェック社が仮想通貨NEMの顧客26万人に流出分の被害額を補償すると発表している。

 取引所は普通サイバー攻撃などを避けるため、通貨の保管データなどをネットから遮断し送金に使う分だけを接続するのが通常のやり方とされている。コインチェック社はビットコインについては送金分だけをネットに接続するなど管理を厳しくしていたが、NEMの場合、全てをネットに接続し、暗号鍵も一つしかなく管理が大甘だったため被害が大きくなった。

 仮想通貨はNEMビットコインなど世界に千種類以上あるといわれ時価総額は59兆円に上るとされる。多くはネット上でおカネの支払いや受取りが簡単にできて便利だということで急速に成長した。しかしリアルなおカネの取引ではないので、管理が問題視されていた。

ブロックチェーン方式は偽造されにくいとみられていたが、コインチェック社は「管理を厳しくしようと対策を練っていたが技術が難しいうえ人材不足で対応が追いつかなかった」と述べている。

 これまで国や中央銀行は仮想通貨について民間主導にまかせ、厳しく監視してこなかったが、仮想通貨が実際のビジネスに利用されるより、投機の対象になるケースが目立ってきたため各国とも規制に乗り出し始めている。EUでは匿名の取引を禁止したり、客の本人確認を義務づけるようにしているし、アメリカでは州によって取引所の免許制の導入を行なっている。また中国では仮想通貨を使った資金調達を禁止したり、一部の取引所を閉鎖した。

 仮想通貨が本当に便利な通貨として認められるようになるのか、それとも投機的な道具として一般には普及しないのか。日本では取引所を登録制にしたり顧客の資産管理を厳格にするといった案が浮上しているようだが、通貨に裏付けがなく投機化していくようだと一時のあだ花に終わるのではないか。

 仮想通貨はリスクが伴うことを知りつつ、国や中央銀行が規制措置をとらず放置していたのは税収などでうまみがあるからとされていたが、通貨、金融の信用を無くしたら元も子もなくなるだろう。
【電気新聞 2018年2月9日】

※参考情報
・13日付けの日経新聞によるとコインチェック社が同日付で金融庁に内部管理体制の強化などを盛り込んだ改善報告書を提出した。大塚雄介取締役は同日夜、記者団に「401億円の日本円の出金手続きを終えた」と語ったが、流出した仮想通貨をいつ補償するか、他の仮想通貨の売買再開の時期などは具体的に言及していない。顧客から預かった資産を凍結していたが13日から日本円の出金を再開。この1日だけで顧客から約401億円の出金依頼があった。

・本日(20日)付の産経新聞によるとコインチェック社が他社との資本提携を模索していることが昨日(19日)判明。役員の受け入れや傘下入りなどを含め、幅広く検討しているとみられる。金融庁も後押しする方向。

・本日(20日)付の日経電子版によると仮想通貨の2つの業界団体である日本ブロックチェーン協会(JBA)と日本仮想通貨事業者協会(JCBA)が28日に統合で合意することがわかった。新団体のメンバーは金融庁の登録業者16社に限り、登録申請中の「みなし業者」を外すことも決定。両団体は改正資金決済法が施行された2017年4月より前から活動しており、独自の活動をしてきた。

 新団体のメンバーは金融庁の登録業者に限定することも了承。改正資金決済法では世界に先駆けて仮想通貨交換業者に登録制を導入。法施行前から運営しており現在申請中であれば、みなし業者として継続できる。登録業者は現在16社、みなし業者は16社。コインチェックはみなし業者で今はどちらの団体にも加盟しているが、新団体には入れなくなる。金融庁の厳しい審査に通った登録業者の団体として衣替えし、利用者の信頼回復を優先する狙い。