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「孤独省」を作った英国は?

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 イギリスのメイ首相が「孤独担当大臣」を新設した。内閣の中に孤独問題を担当する省庁を新設するという発想は、日本人にもハッとさせられる問題提起として受け止められたのではなかろうか。

 イギリスの人口は約6600万人だが、英国赤十字社によると「常に」、または「しばしば」孤独を感じている人が900万人以上いるという。人口の一割以上の人々が、人とのつながりが薄れ、心を閉ざして孤独になっているようだ。

 孤独は長く勤めていた会社を辞めた時や離婚、友人を亡くした時などに始まりやすく、そのまま恒常化する傾向が強いらしい。親しく付き合う人がいなくなり、段々と偏屈になる可能性も強く、友人の多い人に比べると早死にする傾向が50%も高くなるという。

 日本はこれまで共同体社会の特色を多く持ち、近所や親しい人の集まり、親戚の会合などでお互いに腹のうちをさらけ出す傾向をもっていた。また仲間内で助け合う習慣も強かったので、共同体社会から仲間はずれにならない限り、孤独を感ずることは比較的少なかった。日本ではどちらかというと、孤独より共同体社会になじめず仲間はずれに悩むケースが多く、いったん仲間内になれば比較的居心地のよい生活を送れるようになる場合が多い。

 イギリスでは、今後研究や調査、統計などを踏まえて孤独を無くす政策を検討することにしているが、イギリスにとって皮肉なことは、イギリス自身がEU(欧州連合)から離脱しヨーロッパで孤立しつつあることだろう。イギリスが正式にEUに"離婚"表明し通知したのは17年の3月で、6月から離婚交渉が始まっている。ただメイ英首相はEUとの交渉で厳しい状況に立たされ、イギリス国内で政権の求心力を低下させているのが実情だ。

 特に今後、EUとの本格交渉に入り、イギリスが強味を持つ金融分野で有利な交渉を進めたいとしたが、イギリスの金融自由化は限定的だった。このためEUから離脱すると、これまでEU内で他国と平等に利用できた権利の再交渉を迫られるなど、二国間交渉(FTA)に持ち込まれるといった問題も生じている。イギリスとしてはEUルールの単一市場や関税同盟などの枠からは外れつつ、EU域内では自由にモノやおカネを動かせる権利は残しておきたいが、EU側はイギリスの都合のよい部分だけ確保する言い分に反発している。しかもEUとイギリスの交渉が長引けば世界の金融の中心地・ロンドンの地位も低落し、引き揚げる国が出てくる懸念もある。

 イギリス自身が欧州や世界から孤立しない方策を早急に立てないと、かつての大英帝国・イギリスが孤独な国になるかもしれない。
【財界 2018年2月13日号 第465回】