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「虫の目、鳥の目、歴史の目 その1」南北、米朝対話は本当に動き出すか ――カヤの外に置かれる日本――

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 朝鮮半島情勢が一気に動き出し始めた。まず3月6日、韓国大統領府は、北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長が4月末に南北の境界線のある板門店で韓国の文在寅大統領と首脳会談を開くことで合意したと発表。さらに①首脳間にホットラインを設置し、首脳間の首脳会談前に電話協議する②北朝鮮が対話の継続中は核、ミサイル実験をしない③北朝鮮が非核化問題を話合うため、米国と協議する用意があると表明④米韓が4月に合同演習を行なうことに北朝鮮が「理解」を表明⑤北朝鮮は軍事的脅威が解消する理由がないと表明した――と約束したのだ。さらに核兵器だけでなく通常兵器で韓国を攻撃しないことも確約したのである。

 一方、北朝鮮の真意を知ったトランプ米大統領は8日午後、会うなら早い方がよいとし、4月末までに米朝首脳会談を提案したという。朝鮮半島の南北首脳会談から一気に米朝首脳会談へと話が進んだのだ。

 金正恩委員長は昨年8月「グアム島周辺への射撃作戦を検討している」と述べると、トランプ大統領は「世界がみたことのない炎と怒りを受けることになる」と応じていたし、北朝鮮は同年11月29日にICBM火星を発射し「ミサイル強国の偉業が実現した」といえば、トランプ大統領は「小さなロケットマン金正恩は病んだ子犬だ」とこきおろしていた。

 ただその間に北朝鮮は新年に「平昌五輪に代表団の派遣も十分に可能だ」と言い、水をかけ1月9日に南北協議が始まった。これを受けて正恩氏の妹・金与正氏が訪韓し、文在寅大統領に訪朝を要請し、2月10日に金与正氏が訪韓。3月5日には韓国特使団が訪朝し、両国は「南北首脳会談について満足な合意に達した」と述べていた。またアメリカ政府は「南北対話を指示している」と述べるとともに、米朝間でも水面下で接触を続けていた模様だった。こうした一連の接触、流れを受けて朝鮮半島の南北首脳会談、さらにはトランプ大統領金正恩委員長の直接対話の段取りが急速に進展していったのだ。

 この急速な流れと進展に対し日本政府は、「北は日米韓の連携を分断しようとしているのだろう。北朝鮮の過去の対話は非核化につながってきておらず、アメリカの北朝鮮に対する制裁の効果が出ているので、平昌五輪参加などを通じて必死に“ほほえみ外交”を試みているのだろう」と冷ややかにみていた。

 しかし、アメリカが米朝首脳会談に応ずる姿勢をみせ始めたことから、日本の頭越しに話が進んでいることに警戒感を示している。

 実際、ここへ来て急速に南北対話、米朝対話の動きが進展していることに疑念の声もあることは事実だ。アメリカの制裁が厳しくなり北が音をあげてきたため、いつもの北の時間稼ぎだろうという見方など、だ。ただ、アメリカが本気で北を攻撃するとなれば、北の体制は一挙に崩壊しかねないので、対話路線に切り換えたという見方も有力だ。

 いずれにせよ、北が核廃棄を約束したとしても実現までには相当な時間がかかるし、検証も必要になる。事は4月末以降から本格的に動き出すとみられるが、日本はまた完全にカヤの外に置かれている格好だ。また拉致問題などがどう扱われるかも気になるところだが、米朝対話で重要な議題となるかどうかも定かでない。日本はまたもアメリカのシリを追いかけるしか術がないのか。