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まだまだ火種が多い森友問題 ―公文書改ざん、長官辞任、首相の進退にまで発展―

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 学校法人「森友学園」への国有地売却問題に端を発した国会議論は、ますます闇に包まれ、国税庁長官の辞任、公文書の改ざん、安倍首相夫妻への忖度(そんたく)と首相辞任論、財務省官僚の倫理や官僚道・吏道などのあり方にまで発展してきた。国家を揺るがす大事件に至った経緯と背景、問題の所在をもう一度見直してみたい。

―発端は国有地払下げの巨額値下げ―
 事の発端は森友学園が学校建設用地として9億5600万円の国有地の払下げを求めたことから始まる。この過程で森友側が、地中に大量のゴミがあったとして約8億円の値引きを求めた。このため国はゴミ撤去費を約8億2000万円と算定し、2016年に土地評価額から同額を差し引いた1億3400万円で学園側に売却した。ただ、ゴミの推計量などは虚偽だった可能性があり、「特殊な土地だから」などの理由で国と森友側で調整して金額をはじき出した疑惑を持たれている。また安倍昭恵首相夫人が学校の建設現場を視察した際、森友学園の小学校建設理念などを聞いて“素晴らしい、前へ進めましょう”と述べたとされ(安倍首相は否定)、森友学園の籠池理事長夫妻(当時)らと共に撮影した写真などを財務省の近畿財務局に提出されていたようだ。さらに安倍昭恵氏が名誉校長に就任し、森友側は首相夫妻の権威をバックに学校建設を有利に進めていたともいわれる。

―私達夫婦が関係していたら首相を辞めると発言―
 これらの報道について安倍首相は、17年2月17日の衆院予算委員会の答弁で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言明した。ただ、“関係していたなら首相も議員も辞める”という発言は極めて重くとられた可能性があり、その点が後々に言われる“首相から直接言及がなくとも近畿財務局など周囲、関係者が首相夫妻を”忖度“し、事を進める結果につながったのではないかと推測されたのだ。

 この安倍首相の発言でいったん事は収まったかにみえたが、安倍首相の盟友とされる加計学園の加計氏が獣医学部愛媛県今治市に建設することになり、同県がこれに協力したことから、再び森友学園問題も国会で取り上げられるようになった。

 この時、再び値引きの原因となった森友学園のゴミの有無に焦点が当てられたが、16年3月30日に録音されたという音声データによると業者は「地下3メートルより下からゴミが出てきたかどうかはわからない。と述べると、国側は虚偽にならないように“混在している”と。3メートル超も一定にはあると。出るじゃないですか。と発言し、これからゴミを探すような口ぶりで応じていた。」(3月16日付毎日新聞)という。国側が譲歩していたかのような申し出だった。

 結局、その後、国と学園が協議し、ゴミの深さに関する認識をすり合わせ4月に試掘報告書などを国に提出し、国がゴミの撤去費を約8億2000万円と算定したという。

財務省文書の改ざんが発覚―
 ところが3月に始まった国会論議で、最初は「ない」と国側が行っていた森友学園の国有地取引をめぐる財務省の決裁文書が次々と出てきた上、公的文書の改ざん問題まで多数発覚し、安倍昭恵氏や他の政治家の名前などが消去されていることもわかった。このため、佐川宣寿国税庁長官(当時の理財局長)が減給処分を受けて辞任する事態に発展した。

 また森友関係の文書は破棄し残っていない、とされ消去したと思われていた文書が財務省近畿財務局のパソコン内に残っており、原本も本省に残っていたのである。さらに大阪地検の捜査で森友ゴミ報告書は虚偽とわかった。

 このように財務省が決裁文書の書き換えと改ざんしたものを国会に提出していたことは、前代未聞のこと。かつて財務省にいた小黒一正・法政大教授によると「公文書を作成し管理した経験を持つ者としては信じがたい異常な出来事だ。この渦中で職員が自死により命を絶った悲劇には言葉もない。決裁後の文書を変更すれば虚偽公文書作成などで刑法上の罪に問われるし、そんな危険を冒すことはよほどの圧力でもない限りあり得ないことで、安倍首相への忖度の領域をはるかに越えた行為だ。行政は国民の信頼の上に成り立っているが、その基盤を壊す深刻な事態だ」と述べている。

 安倍首相自身は「一切関与していない」と反論しているが、では財務省がなぜそこまでして公文書偽造をしたのか、やはり忖度だったのかどうか。

―本質語らない国会答弁―
 この公文書改ざんの国会議論の中で、責任の所在や中心人物などについて麻生財務相は「佐川が責任者だろうと思う。私や官邸が佐川の答弁に圧力を加えたとの事実はない」と表明していたが、佐川氏について「佐川が、佐川が・・・」と呼び捨てにし続けたことも違和感を覚えさせられた。

 また佐川氏の答弁も木で鼻をくくったような素っ気ないものの言い方ばかりで、国民に丁寧に説明するという姿勢が微塵も感じられなかったのも気になった。このほか財務官僚の一連の答弁は、いずれも官僚的なモノの言い方で聞く人に反発を感じさせたのではなかろうか。

 ただ、太田理財局長は「文書の書き換えは国会答弁が誤解を受けないようにするため」に行なわれたのだろうとした上で“私や妻が関係していれば総理大臣を辞める”と発言した首相談話など「政府全体の答弁は気にしていたと思う。ただ首相答弁の影響を否定する、しないということを申し上げるつもりはない」と述べ、麻生財務相は「私や官邸が佐川氏らの答弁に圧力を加えた事実はない」と語った。

―「特殊性」とは何か、支持率も大きく下落―
 いずれにせよ、国会議論で時間をかなり費やしたものの、森友問題の全貌や忖度の有無など、はっきりしたことは不明のままで証人喚問や今後の議論でどこまで明らかになるかが焦点だ。

 とにかく官庁のトップに立つといわれる財務省が決裁された公文書を偽造したり、白紙を国会や国民の前に提示する行為は言語道断で民主主義の根幹に触れる重大な問題といわざるを得まい。民間企業が偽造の決算書を株主や国民の前に発表した行為と同様の犯罪といえよう。また、答弁の中で何度も「特殊性」という言葉が出てきたが、何が特殊なのかもよくわからず仕舞いだった。特殊性という言葉は裏社会用語で時々出てくるが、そのことを指していたのだろうか。

 この森友問題の政府答弁で安倍首相の支持率は毎日新聞共同通信などの世論調査で軒並み30%台に下落、不支持が40%台にハネ上がった。いよいよ安倍政権は追い詰められてきたといえよう。
TSR情報 2018年3月28日】

画像:Wikimedia Commons (森友学園本部・塚本幼稚園)