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流通を変えるネット通販 

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 ネット通販(電子商取引、eコマース)が爆発的に伸びている。日本のネット通販の大手3社(アマゾン・ジャパン、ヤフー、楽天)の販売額は2017年に6兆7千億円に達し、全国百貨店の6兆円を初めて抜いた。拡大は依然続いており、スーパー、コンビニを追い上げ、ネット通販の拡大は世界的潮流となっている。

 経済産業省によると16年の個人向けネット通販の売り上げは約15兆円で、大手3社はそのうち約4割を占める。ネット通販を利用した世帯は34%に上り前年比6.5ポイント増。1世帯あたりの毎月の消費額も1万円を超えた。ネットで商品を見て注文すれば宅配業者などが届けてくれるので、忙しい共稼ぎ世帯だけでなく、高齢者や地方の買い物が不便な地域でも増大している。

 こうした動きが特に顕著なのは流通基盤がまだ全国に行き届いていない中国だ。中国のネット人口は16年に7億人を超え、オンラインショッピングの利用者は4億5千万人に達しているという。中国でも急速にスーパーやコンビニが増大しているが、国土が広いためなかなか農村部には店が行き渡らない。そこにネット通販が登場し、爆発的に利用されている。

 中国農村部の人口は全人口の約半分にあたる6億人を超える。これまで発展している沿岸部では小売りが伸びて消費ブームが到来していたが、地方やへき地の農村部は消費文化から取り残されていた。しかし中国でスマホが急増し17年の年間販売台数は15億台を突破。大都市の保有率はほぼ100%で、農村部でも1億人を超したといわれる。こうしたスマホの普及がネット通販を成長させているのだ。

 ネットで商品を見て注文すると、ネット通販と提携するコンビニやスーパーに商品が届けられ、購入者は商品を受け取りに行く仕組みらしい。最近では、石油大手がネット通販と提携することで流通に参入し、ガソリンスタンドに併設するコンビニで商品を受け取れるようになった。中国ではネットの配達先をコンビニなどにすることで新たな流通網ができ、地方も都会と同じように商品を手に入れられるようになったのだ。

 中国のネット企業の最大手はアリババ集団で、家具販売大手や百貨店、スーパーなどに次々と出資し、リアル店舗を傘下に収め始めている。また、電子商取引2位の京東集団はネット企業のテンセントなどと手を組み、急速に流通配達網を確保し始めている。

 一方でアメリカのおもちゃ販売大手トイザラスが国内の全735店を数ヶ月以内に閉鎖すると報じられた。トイザラスといえば、おもちゃの店として一時は隆盛を誇り、日本にも支社を出し人気を博していた。しかし米国のトイザラスはアマゾン・ドット・コムなどのネット販売に押されて業績が低迷し、昨年9月に連邦破産法を申請していた。また英国トイザラスも75店の閉鎖が決まっている。

 アメリカ小売り最大手のウォルマートもアマゾンのネット通販に対抗するため、生鮮品宅配事業のサービスを全米6都市から100都市に拡大し全世帯の40%以上をカバーするという。利用客はウォルマートのウェブサイトや専用アプリで注文すれば最短で当日に商品を受け取ることが出来る。主軸の店舗販売から宅配を始めることで即日配達を強化するというのだ。ネット通販が世界で流通のあり方を変え始めている。 
【電気新聞 2018年3月29日】

トップ画像:中国上海で展開するファミリーマートサイトトップ

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