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中国強国路線の波紋

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 中国が着々と強国路線を歩み始めている。今年の全国人民代表大会全人代)で国防予算を前年実績比8.1%増の18兆4000億円とし、4年ぶりに伸び率が前年を上回った。狙いは単に軍事費を増やし強国化をアピールすることより、軍の近代化などにより質の強化を推進していることだ。
 
 このため、国防費を増やすことで「軍の情報化、機械化を進化させ戦略能力を向上させる」と習近平主席は明言し、空母建造を大連や上海で進めるほか原子力空母の開発計画も明らかにしている。またレーダーに探知されにくいステルス性能をもつ新型戦闘機を配備する計画も発表した。
 
 その一方で2015年に打ち出した兵力30万人の削減も達成し、スリム化も図っている。かつて中国は陸軍の国といわれたが、いまや海洋進出を目指し、空軍やサイバー部隊の強化に力点を置いているのだ。特に南シナ海を重視し、人工島を造成して対艦、地対空ミサイルを配備。爆撃機の着陸訓練などを行なったりしている。
 
 こうした中国の動きに対し、アメリカは、6月にシンガポールで開いたアジア安全保障会議マティス米国防長官が「中国の南シナ海における強引な軍事拠点化はアメリカの戦略と明確に衝突する」と名指しで批判。中国の南シナ海における兵器の配備は、脅威や圧力のための軍事利用に直結するものだと非難している。さらに今後は中国に対抗するため日本、オーストラリア、インドなどと連携を強化したインド太平洋戦略を推進すると明言、「いかなる国もインド・太平洋を支配すべきでない」と対抗措置をとることを表明した。
 
 こうした米、中の対立に頭を痛めているのはASEAN各国だ。ミャンマーラオスカンボジアなどは中国の援助に期待し比較的”中国寄り”の姿勢を示しているが、ベトナムブルネイなどは警戒感を強め、中国寄りと見られたフィリピンは中国の軍事拠点化加速に反発。政権交代したマレーシアのマハティール首相も中国離れの動きを見せている。
 
 中国の動きは軍事分野だけに留まっていない。貿易面ではアメリカが対中貿易赤字3750億ドルのうち2000億ドル分を減らすよう求めており、特にハイテク分野の交渉が難航している。特にロボットなど先端技術の国産化を目指す「中国製造2025」のハイテク産業に巨額の補助金を投じていると見るアメリカは、500億ドル分の制裁関税を課すと表明した。中国の強国路線が各分野で摩擦を引き起こしているのだ。中国は強国の具体的中味として民族の再興と豊かな国民経済をあげている。これからの10年はアメリカと中国の覇権争いが激化しよう。その時日本はどう立ち回る?
【財界 2018年夏季特大号 第474回】

画像:Wikimedia commons(中華人民共和国国防部本部 /Netson)

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