時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

ポスト平成社会を考えよう

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 平成時代が間もなく終わる。平成が発足するとき、平成の意義を問われた当時の小渕恵三官房長官は、「平成」と書かれた新しい元号を前に「平らかに成る」と答えた。人々が忙しく立ち働いた高度成長期とは違って、もう少し穏やかに生きて”平らかに成る”時代を目指す願いと受け止めた人が多かった。
 
 しかし現実の”平成”は決して平らかな時代ではなかった。年号が変わる時期(1989年)宮崎勤元死刑囚が、全く関係性がなく動機もないのに女児4人を殺害して幕をあけた。以後、94年の住友銀行名古屋支店長射殺、95年にはあの無差別テロの地下鉄サリン事件が発生、さらに中学生が小学生5人を殺傷する「酒鬼薔薇聖斗」事件(97年)や和歌山毒物カレー事件(98年)、世田谷一家殺害事件(2000年)など動機不明の不可解な事件が相次いだ。
 
 一方で災害も数多く50年、70年に1回という大災害が当たり前のようになってきた。地球や宇宙空間に得体の知れない異変が起き始めていると感ずる人が増え、〝安心、安全〟を願う風潮がますます強くなっている。宗教やオカルトに興味を持つ人が増えているのも無縁ではあるまい。
 
 その一方で2000年代に入るとIT(情報技術)・デジタル時代となり、スマホやインターネットがライフスタイルを大きく変えていった。コミュニケーションの手段は通話だけでなくメール、インターネットで様々な情報を好きな時間に手にすることができる上、買い物や遠く離れた人、企業と空間を越えて取引も出来るようになった。地方の中小企業がネットを通じてビジネスもでき、一挙に爆発的人気を得ることも珍しくなくなったのだ。
 
 もちろん新しい技術、ライフスタイルの変化などにつれて、これまで思いもよらなかった問題を引き起こすことも多い。弊害の規制や法律、対策ができないうちにどんどん新しいアイデアによる製品やシステムができてしまうからだ。
 
 こうしてふり返ってみると、平成の30年は新技術が先導しながらライフスタイルや物の考え方、個々人の生き方などを昭和時代から全く変えてしまった時代だったといえるかもしれない。多くの年老いた人間にはアナログ時代の方が慣れてすごしやすかったと感ずるだろう。若いチャレンジングな若者には長幼を重んずるこれまでの日本社会には無かった新しいチャンスと捉えるだろう。

 平成の後にはどんな社会、人生が待ち受けているのか。それを見通すには平成時代を今のうちにじっくりと考え、総括しておくことが大事になってくるのではないか。
【財界 2018年8月28日号 第477回】

画像:当時の小渕恵三官房長官が掲げた「平成の書」。竹下家の寄贈により現在は国立公文書館に所蔵。