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日本を抜いた中国のIT化

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  バイドゥ、アリババ、テンセント──といった名前を聞いてすぐに「それは中国のIT企業」と答えられる人は、かなりの中国IT通だ。しかも世界のトップIT企業のうち2社は中国企業なのである。いまや中国のIT企業は世界の最先端で活躍しているのだ。

 企業価値が10億ドル(約1120億円)以上の未上場企業のことを最近「ユニコーン企業」と呼び将来性が期待されている。2018年8月16日現在で世界に260社(※)あるが、1位はアメリカの121社、2位がなんと中国の76社でこの両国が断トツに多いのである。3位がイギリスの15社、4位がインドの11社などとなっているが、日本はわずか1社のみだ。

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 中国の先端IT企業は、決済サービス、旅行サイト、シェアサイクルなど様々なサービスを提供している。例えば今急速に普及している決済サービスでは、現金を持ち歩かなくてもスマートフォンをかざすだけで決済ができてしまう。タクシーに乗ってもいちいち小銭を出して支払わずともスマホで決済が完了する。中国の電子決済の比率はすでに約6割を占めているという。日本でもスマホ決済が始まっているがまだ2割程度で、経産省は2025年までに40%到達を目標にしたいとしている。

 かつて日本はモノづくりでは最先端の技術を作り出し世界を席巻していた。現在は中国が既存技術を組み合わせて新製品、サービスを提供することに優れているという。そこでは政府が規制するのではなく、たとえ失敗があっても民間に自由にやらせてみるというベンチャー精神が社会全体に根付いている。いわば社会実験をしながらIT社会の進化を遂げているとみる事ができる。

 むろんその過程では、技術の盗用、模倣問題も少なくない。日本企業が中国などに進出して警戒するのは、技術の模倣だ。ただ、巨大なマーケットで似た技術があちこちで応用されれば社会の発展のスピードも早くなる。何せGDPは日本の2.5倍、アメリカの6割という巨大な国内マーケットを持ち、毎年50万人近い留学生が帰国して起業を争っているお国柄なのだ。最近は逆に中国市場で広がる技術が世界のグローバルスタンダードになるという現象すら起きている。

 しかも中国政府はこうしたオープンな技術開発競争を奨励しているので進化のスピードと広がりは、とてつもないわけだ。

 主要国の研究者数と研究資金で比較しても中国は2002年に日本を抜き、2011年にアメリカを抜いた。研究資金でも日本の2倍以上でアメリカに近づきつつある。IT大国としての中国を見誤ってはいけない。
【財界 2018年9月25日号 第479回】

(※)米国の調査会社、CBインサイツ 世界のユニコーンのリストより(2018年8月15日現在)本日(9月21日現在)では274社あり、日本の社数(1社)は変更なし。 

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