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こじれそうなゴーン解任 フランス側は納得せず?

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 ゴーン“ショック”がまださめやらない。名門・日産自動車の経営危機をわずか1年でV字回復させたその経営手腕に多くの日本人が驚き、ぬるま湯に浸かっていた日本人経営者たちを覚醒させた。ゴーン革命、カリスマ経営などと呼ばれ、ゴーンの唱えた“コミットメント(必達目標)”経営の言葉はブームにもなった。

 ゴーンが日産の再建のため日本に赴任したのは1999年。その直後に早速「日産リバイバルプラン」を発表し、5工場の閉鎖や2万人以上の人員削減、系列にこだわらない調達先の改革、関連会社の思い切った整理――などを次々と実行し、改革をためらっていた日本企業にも大きな刺激を与えた。またゴーンの出身企業だった仏・ルノーとの協業や三菱自動車との連携による経営の一体化推進などによってトヨタ自動車と肩を並べるほどまでになったといわれた時期もあった。

 しかし、19年間の独裁的経営は日産にひずみと緩みをもたらし、チェックする人材も機能も無くしてしまっていた。ゴーン経営から数年経つと日産幹部の中から「統合の利益は少なく、ルノーに日産の技術などを持っていかれるだけではないか」と不信の声が聞かれたりした。しかしカリスマ経営者に直言する人はいなかったのである。

 ゴーンは三社連合に君臨すると、自らの報酬を増やすことに熱を入れはじめ、ゴーンが有価証券報告書に記載せず受け取った報酬は2018年までの8年間で約80億円に上るとみられ、この他にも株価に絡んで約40億円、また親族に対しコンサルタント契約を装って業務実績がないのに少なくとも数千万円の報酬を払ったり、レバノンベイルートやブラジル・リオデジャネイロなどに会社の費用で数億円もする複数の住宅を買ったりしていた。

 今回のゴーン逮捕はこうした不正な報酬を有価証券報告書に虚偽記載し、投資家や株主を欺いた罪を問われたものだった。その虚偽記載にあたってはゴーンの側近中の側近といわれたグレッグ・ケリー元代表取締役も逮捕されている。経営手腕はあったが私欲にかられ、品位に欠ける行為に走ってしまったといえるだろう。

 今回のゴーンと三社連携の取扱いは厄介なことになりそうだ。日本側はゴーンを解任したが、フランス世論はゴーン逮捕に関する日本の司法に不信感を持っている上、仏政府がルノーに15%出資している株主であり、更にルノーは日産に対し43%出資し議決権も持っているからだ。仏側は日産の技術力に対する期待があるため、簡単に提携解消とはいかないし、ルノー側はゴーンの地位もそのままにして変えていないのだ。仏にとっては自動車産業の競争力や雇用問題にもつながるので、今後は民間三社だけでなく、政府も絡んだ交渉へと長引きそうだ。

画像:Wikimedia Commons(Carlos Ghosn (X 1974), President-Directeur General de l’alliance Renault-Nissan Credit photographique : c Ecole polytechnique - J.Barande)