時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

移民拒否でやっていけるか

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 この2、3年で街を歩く外国人の姿が目立って増えてきた。それも中国人や韓国人だけでなく、ヒジャブやサリーを身に着けたインドネシアやマレーシアなど東南アジアやイスラム系の人々が聞き慣れない言葉をしゃべっている。そこで、尋ねてみると「ネパールから来た」とのことだった。むろんフィリピン、インド、タイなどの人も多く、最近は街ではネパール料理と掲げた看板もよく見かける。日本はいつの間にか国際化、多様化している国になっているのだと実感する。

 海外から来る外国人は、ただ漫然と街や観光地を見学しているわけでないことも大きな最近の特色だ。実はネットで、今ならどこの紅葉が美しいか、何が旬の食物でどの店が手頃で入りやすいか、どの宿泊先が便利で安いか――などと細かく調べて来日しており、目的場所に直行する人が増えている。映画で見た北海道の田舎や秋田のなまはげを見物に行ったり、観光客の行動はかつてのように東京、京都、奈良といった名所に限らず、目的を持って訪れている人が多いことがわかる。先日会ったタイ人も「今度は雪景色と雪のお祭りを見に来るつもりだ」と語っていた。

 いまや中国や東南アジアでもネットが発達し、来日前に自国に居ながらにして日本の詳細な情報を調べて来日してくるし、食事や土産物、日用雑貨の値段も十分に知っているのだ。ちょっとした小物や子供の土産にドンキホーテなどに寄って品物選びをしている光景は日常的になってきた。かつてのようにデパートや名店などへ行かなくても気の利いた土産物を安く買えるコツを知っているのである。

 現在、日本に来る観光客は年間約3000万人(※)に増えた。しかも現代の日本では若い働き手不足が目立っているので企業は技能実習生の受け入れに躍起となってきた。こうした企業の実態を受けて政府は新しい在留資格として「特定技能」を持つ人物を優遇する制度を設ける方針で、特定技能が認められれば5年間の実習技能に加えてさらに5年間の在留を可能(※1)とするようだ。

 しかし、日本に10年も滞在するようになれば、結婚や家族の呼び寄せ、社会保障の保護などの福祉、家族対策も同時に考えていかなければなるまい。日本は外国人の“出稼ぎ”は歓迎するが“移民受け入れ”となると消極的だ。いま先進国はどこも労働力不足に悩み外国人労働者の取り合いが始まっているといわれる。

 日本はそろそろ出稼ぎ対象国だけでなく移民受け入れ国としての条件や対応を考える時に来ている。戦前、日本人は中南米や中国、アジアなどに多くの移民を送り出した。日本人の移民の歴史をもっと知って良い時代だろう。
【財界 2019年新年特大号 第485回】

本コラムは11月中旬に入稿しております。
(※)政府は昨日(12月18日)、2018年に日本を訪れた外国人旅行者が発表日当日時点で初めて3000万人を超えたと発表しています。

(※1)「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(改正入管難民法)は12月8日に第197回国会(臨時会)において成立し、14日に公布されました(平成30年法律第102号)。