時代を読む

ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

浮かれていて良いのか

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 今年(※)は、中国の天安門事件から30年という節目の年にあたる。1989年6月の天安門事件では、中国政府が学生や大衆のデモと暴動に危機感を持ち、軍を出動させ力づくで抑え込んだ。途上国に広がりつつあった民主化運動は、この天安門事件の封殺によって鎮静化すると見られたが、世界にくすぶっていた火は半年後、東欧に飛び火し、結局、冷戦終結をもたらす結果となってゆく。

 私は1989年暮れ、TBSのTVカメラマンらと一緒に東欧取材に行っていた。中国では天安門事件を完全に封じ込めたが、東欧ではソ連の統治下にあったポーランドハンガリーチェコスロバキアなどの民主化運動が火を噴く寸前にあった、特にポーランドではワレサ氏の率いる労働組合「連帯」が運動の先頭を切っていた。

 現地に行ってみると東欧だけでなく、ソ連もまたゴルバチョフ書記長のペレストロイカ(改革)とグラスノチス(情報公開)の動きもあって揺れ動いている鼓動がびんびんと伝わってきたものだ。その間、ルーマニアではチャウシェスク大統領が抑圧運動に乗り出したものの、逆に革命軍に殺されるというひと幕もあった。

 東欧の動きを現地で見ていて感じたことは、一旦、大衆の力が解き放たれると、多少の力では抑え切れず逆に軍隊の一部も大衆の側についてしまい、強そうに見えた権力をあっという間に崩してしまう現実の凄さだった。中国が軍隊まで動員して天安門事件を抑え込んだのは、半年後に起きた東欧の権力の崩壊を予見していたのだろう。中国のリアリズムを感知する能力にびっくりさせられたものだ。

 だが民主化の春をもたらした東欧諸国も30年経った現在、再び右傾化の波がやってきている。ハンガリーのオルバン首相は、メディアへの規制強化や憲法裁判所の制度改変などを進めるとともに、東欧出身のアメリカの投資家ジョージ・ソロス氏が民主主義の人材を育成するために1991年に創立したブダペストの大学院「中央ヨーロッパ大学」の学生募集を禁じてしまった。オルバン氏は30年前の民主化運動の時、先頭に立ってきた一人として知られていた人物だった。

 またポーランドでは右派政党の「法と正義」が政権を握り、移民の流入に反対し、裁判官の人事についても与党寄りの判事を増やすよう制度を変えようとしている。さらにドイツではメルケル政権の自由主義、民主主義的な拡大政策が移民の流入などにつながると反発が強まり、遂にメルケル首相は退任予定を発表するハメになった。

 この30年はグローバリゼーションの進展で豊かになった面もあったが、半面では分断と格差を生み、なかんずく移民と失業問題で再び世界に対立の芽をもたらしたともいえる。

 そんな中で日本の平成の30年は、自然災害に悩まされたものの、東欧や新興国の動乱に比べると比較的平穏に時代は推移した。ただ、自動車や電化製品、通信機器などの新製品を数多く生み出し世界を席巻した高度成長時代に比べると、かつての日本人の熱気と活力は失せてしまったように思える。まだバブル期の余韻に浸っているようで、外交もアメリカに寄り添う姿勢ばかりが目立ち、明らかに日本の意気地と国力は落ちてきた。日本に30年前のあの活力が戻ってくることは当分なさそうな気がしてならない。

※2019年

【電気新聞 2019年12月20日

 

画像はphotolibraryベルリンの壁「ホーネッカーとブレジネフの熱いキス」shige-chan

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:北極冒険家 荻田泰永氏 音源掲載

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スタッフからのお知らせです。

新年初の投稿です。本年もよろしくお願いいたします。
皆様にとってよき一年でありますことを祈念しております。

昨日のTBSラジオ 『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲスト北極冒険家 荻田泰永氏をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

20年間で16回の北極冒険でわかったことや、カナダ北極圏やグリーンランドなどを中心に単独徒歩による冒険に拘る理由などについてお伺いしました。

次週も引き続き荻田氏をお迎えし、世界有数の北極冒険キャリアを持ち、単独無補給徒歩での北極点挑戦や、国内外のメディアからも注目される日本唯一の「北極冒険家」の人生観についてお伺いする予定です。

荻田氏のサイトのトップに北極での冒険の様子がわかる動画が掲載されていますので、ぜひ合わせて参照ください。

また、荻田氏は北極での冒険をつづられた本を上梓されておりますので、合わせてご紹介いたします。

 

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:蚊帳でマラリア撲滅 住友化学株式会社執行役員 広岡敦子氏 二夜目 音源掲載

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スタッフからのお知らせです。
昨日のTBSラジオ 
『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストに蚊帳でマラリア撲滅に尽力されている住友化学株式会社執行役員の広岡敦子氏をお迎えした二夜目の音源が番組サイトに掲載されました。

大学のフランス文学科を卒業後、外資系化学薬品メーカーなどを経て、「シロアリの女王」から「蚊帳の女王」へ転身してマラリア予防の蚊帳一筋、ずっと傍流でキャリアを積んでこられた人生観につきお伺いしました。

ラジオ内で広岡氏が紹介されたビル・ゲイツ氏が発表された死亡原因の一位が蚊という図は2014年にビル・ゲイツ氏がブログに掲載されたものです。参考まで図とリンクをご紹介します。

The Deadliest Animal in the World

The Deadliest Animal in the World


前回の防虫蚊帳をアフリカで現地生産するビジネスは、交渉や取引ともに一筋縄ではいかないという。問題が発生するたびに現地へ飛び、直に交渉してきたというアクティブな生き方についてお伺いした放送音源は番組サイトにて今週水曜正午までお聞きいただけます。

 

住友化学様がアフリカで蚊帳を販売されているプロジェクトについて関わられた浅枝敏行氏が書籍を上梓されておりますのでご紹介します。合わせてぜひ参照下さい。

次回、1月5日は北極冒険家の荻田泰永氏をお迎えする予定です。

日曜(29日) TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:蚊帳でマラリア撲滅 住友化学株式会社執行役員 広岡敦子氏 二夜目

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スタッフからのお知らせです。
日曜(29日)のTBSラジオ 
『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストに蚊帳でマラリア撲滅に尽力されている住友化学株式会社執行役員の広岡敦子氏をお迎えした二夜目をお届けします。

大学のフランス文学科を卒業後、外資系化学薬品メーカーなどを経て、「シロアリの女王」から「蚊帳の女王」へ転身してマラリア予防の蚊帳一筋、ずっと傍流でキャリアを積んでこられた人生観につきお伺いする予定です。

前回の防虫蚊帳をアフリカで現地生産するビジネスは、交渉や取引ともに一筋縄ではいかないという。問題が発生するたびに現地へ飛び、直に交渉してきたというアクティブな生き方についてお伺いした放送音源は番組サイトにて来週水曜正午までお聞きいただけます。

 

住友化学様がアフリカで蚊帳を販売されているプロジェクトについて関わられた浅枝敏行氏が書籍を上梓されておりますのでご紹介します。合わせてぜひ参照下さい。

昨日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』 ゲスト:蚊帳でマラリア撲滅 住友化学株式会社執行役員 広岡敦子氏 音源掲載

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スタッフからのお知らせです。昨日のTBSラジオ 『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)はゲストに蚊帳でマラリア撲滅に尽力されている住友化学株式会社執行役員の広岡敦子氏をお迎えした音源が番組サイトに掲載されました。

防虫蚊帳をアフリカで現地生産するビジネスは、交渉や取引ともに一筋縄ではいかないという。問題が発生するたびに現地へ飛び、直に交渉してきたというアクティブな生き方についてお伺いしました。

次週も引き続き広岡氏をゲストにお迎えし、大学のフランス文学科を卒業後、外資系化学薬品メーカーなどを経て、「シロアリの女王」から「蚊帳の女王」へ転身してマラリア予防の蚊帳一筋、ずっと傍流でキャリアを積んでこられた人生観につきお伺いする予定です。

 

住友化学様がアフリカで蚊帳を販売されているプロジェクトについて関わられた浅枝敏行氏が書籍を上梓されておりますのでご紹介します。合わせてぜひ参照下さい。

感銘深いウズベキスタンへの旅

ジャーヒズィンダ廟群よりビビハニム・モスクを望む

ジャーヒズィンダ廟群よりビビハニム・モスクを望む

スタッフからのお知らせです。既報の通り、嶌が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催の20周年記念旅行が開催され、9月6日から13日までウズベキスタンに行ってきました。参加された方より続々と感想が寄せられています。今回の旅行の写真とともに紹介します。

今回は、河内 若菜さんからの寄稿文を紹介します。河内さんは、非常に上品な出で立ちの素敵な方で、これまで世界各地を旅行されていらっしゃるようですが、ウズベキスタンは初めての訪問とのことでした。各地を訪問した際、特にサマルカンドの各遺跡の雄大さに感動されていらっしゃる姿が印象的でした。

以下、河内 若菜さんの寄稿文をご紹介します。

河内 若菜さん

河内 若菜さん

今回の旅の参加者の中で私が一番ウズベキスタンについて無知な人間だったと思います。友人に誘われ、どこか珍しそうなところに行ってみようと安易に参加しました。最初は参加の皆様の知識に驚き、お墓参りやパーティーにおろおろしてしまいました。

千葉百子さんと藤山大使

千葉百子さんと藤山大使

しかし、いろいろ教えていただいているうちに本当に素晴らしい旅に参加させていただいているのだと実感しました。アラル海へのバス旅の車中での千葉先生の講義、折々の嶌会長のお話、参加された方々の含蓄ある話の数々に教えていただくことばかりでした。

サマルカンドレギスタン広場に隣接するシェルドル・メドレセ

サマルカンドレギスタン広場に隣接するシェルドル・メドレセ

ウズベキスタンの風物、素晴らしい遺跡、街並みの美しさ、歴史の深さどれを見ても感銘深くあっと言う間の8日間でした。

今になって遅ればせながら歴史の本を読んでいますが、次回はもっと丁寧に深くウズベキスタンを理解できるようになりたいと思っています。モスクの前で拾った小さな青色のタイルの破片を大事にしまっています。 

シャーヒズィンダ廟群にさす夕日

シャーヒズィンダ廟群にさす夕日

会長はじめ協会の皆様方には大変お世話になり、ありがとうございました。日本ウズベキスタン協会の会員にすぐ申し込みいたします。

まぐまぐのメルマガ「時代を読む」が3年連続「まぐまぐ大賞」2019を受賞しました

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スタッフからのお知らせです。

 まぐまぐにて2016年12月に配信を開始したメルマガ「時代を読む」がこのたび「まぐまぐ大賞2019」のジャーナリスト部門で2位を受賞した旨が本日発表となりました。まぐまぐ大賞での受賞は2017年のジャーナリスト部門4位、昨年の2位に続き3度目となります。

 「まぐまぐ大賞」はまぐまぐ社が配信するメルマガ「まぐまぐ」の読者の方々が「今年いちばん読みたい、読んでもらいたいメルマガ」という視点で投票され、決定されているものです。

 3年連続で多くの読者の方にご投票いただきましたことを感謝申し上げます。また、編集部の皆様には「まぐまぐニュース」に取り上げていただくことで、より多くの方にお読みいただく機会をいただきましたことを重ねて感謝申し上げます。


 最近、本メルマガを購読いただいている方が2ヵ月に一度程度、開催される「嶌信彦の出前講座」にお申込みいただいたり、本年9月に開催された日本ウズベキスタン協会主催の「20周年記念旅行」にご参加いただくなど、本メルマガを通じて日本ウズベキスタン協会のイベントに足を運んで下さる方も増えてまいりました。

 出前講座では記者生活含め、半世紀あまりのジャーナリスト人生で得た情報や経験などのエピソードなどやオフレコの話もしておりますので、よろしければ足を運んで頂けると幸いです。

 

 今年も残すところ半月あまりとなりました。今年は甚大な被害をもたらしたかつてない規模の台風が続くなど自然災害の多かった年でした。困難な状況に置かれていらっしゃる方も多数おり、一日も早い再建を祈っております。少し早いですが、皆様どうかよい年をお迎え下さい。

今回の大賞に関する詳細は以下の特設ページを参照下さい。

www.mag2.com

また、有料メルマガも配信しておりますので、合わせて購読いただけると幸いです。
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嶌信彦の一筆入魂

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