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強権・中国が悩ましい 日米の新政権

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※本コラムは11月下旬に入稿しております。

 

 中国・習近平総書記(国家主席)の権力基盤固めと長期独裁政権への布石が急速に進行している。今や建国、革命の父・故毛沢東主席と並ぶ権威を誇り、”習近平思想”で中国全体を覆ってアメリカとの覇権争いに勝利を目指そうとしているようだ。

 習主席は2012年11月に中国共産党トップの総書記に就任、13年に〝虎もハエも叩く〟猛烈な反腐敗運動を展開して重慶市書記・薄熙来らライバルを次々と失脚させた。16年には別格の指導者である「核心」と位置づけ、17年の党大会で〝習政治思想〟を党規約に盛り込んで後継者含みの人事も見送った。18年には憲法を改正し国家主席の任期を撤廃。19年になると習氏を毛沢東氏以来となる“人民の領袖”の呼称を使用し、さらに20年には清華大学など37大学でマルクス主義毛沢東思想など4科目の必修授業に加え習思想を必修化し、この年の5中全会でも後継者を決めなかった。

 一方で20年末までに“いくらかゆとりのある小康社会”を実現し、35年には1人当たりDGPを3万ドル前後(現在は約1万ドル)に上げてイタリア、スペイン並みの中流先進国に追いつく。またアメリカのハイテク技術封鎖に負けないコア技術の突破を図るとともに、貿易と内需の消費を刺激して21~25年の第14次新5ヵ年計画ではGDPに占める個人消費の比率を現在の約40%から日・米・独並みの5~7割に引き上げ、質の高い“双循環”の成長を目指す。20年末のGDPアメリカの4分の3の水準にし、35年にはアメリカを抜き、全国民の格差をなくして共に豊かな“共同富裕”社会を実現すると宣言している。

 さらに国際的なパワーバランスは深刻な調整時代に入っているので特色ある大国外交を積極的に推進、軍事力の強化も図る。また35年には全ての車を環境対応車にし、従来型のガソリン車などの製造・販売を停止して60年までにCO2の排出量を実質ゼロとする脱炭素社会にすると表明した。新車販売台数で世界最大の中国が脱ガソリンで先行すれば、中国を最も大きな輸出市場とする欧米や日本の自動車メーカーも追随せざるを得なくなることが必至だ。

 中国革命100周年の2049年には、世界一豊かで強い国になると宣言しているが、新大統領を決めたアメリカと発足したばかりの菅政権は今後米・中二極の覇権争いの時代に突入した時、どう折合いをつけてゆくつもりなのか。親米路線を貫きこれまで通りアメリカに追随してゆくのか、それとも米中の衝突を避ける独自外交の道を見つけ出すのか。内政で生きてきた菅首相にとっては、この捌きが今後の政権の寿命の長さにもかかってこよう。
【財界 2021年1月6日号 第532回】

■参考情報
・Preliminary Accounting Results of GDP for the Fourth Quarter and the Whole Year of 2020 1月20日 中国国家統計局
 中国は、昨年の第四四半期と2020年通期のGDPを発表した。通期で101兆5986億元(約1628兆円、1元=16.02元)前年比2.3%増。
 http://www.stats.gov.cn/english/PressRelease/202101/t20210120_1812680.html

 日本語ニュースは「中国経済のGDP100兆元突破、質の高い発展と活力の表れ」(1月22日 AFP)を参照ください。
 https://www.afpbb.com/articles/-/3327630

画像:Photo AC ハダシストさん(天安門)

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