森林火災で国土の半分消失 豪州でコアラなど13億匹が犠牲
オーストラリアの森林火災が深刻な状況だ。発生は何と2019年の後半からといい、これまでの消失面積は日本の国土の約半分にあたる1700万ヘクタールに上り、韓国の国土より広い。また消防隊員らが少なくとも30人が死亡、2700棟以上の住宅が焼けたという。さらに世界自然保護基金(WWF)によるとコアラやカンガルー、鳥類などを含め約12億50000万匹が犠牲になった。
南半球のオーストラリアでは暑い時期になると森林火災が発生しやすく、2019年は特に気温が高く降水量も少なかったため、長期にわたる森林火災になったようだ。
19年12月の平均最高気温は40度を超し、観測史上最も暑く乾燥した1年だったとされる。当然ながらこの森林火災はオーストラリア経済にも深刻な影響を及ぼしており、これまで世界最長の113四半期連続で景気後退を経験してこなかったオーストラリア経済にとって実質GDPの伸びを約0・4ポイント押し下げ、その被害額は個人消費の落ち込み、労働日数の減少、外国人観光客のホテルのキャンセルなどで最大約80億豪ドル(約6000億円)減少させるという。また畜産業では東部の3州で焼死や殺処分された牛肉、羊などの家畜はすでに8万頭に上った。
この火災は東部のニューサウスウェールズで特に酷く、なおも約70地点で火災が続き、うち25地点は制御不能とされ、今後もほぼ全土で気温が平年を上回るとみられる。ただ2月中旬の大豪雨で何とか鎮火に向ったが今度は洪水が懸念されているという。
昨年9月以降に発生した森林火災1068件のうち故意の放火や火の不始末など人為的行為は約1割程度で、多くは落雷や地球温暖化による気候変動に起因したものだった。また、有名なユーカリは、今回の火災や規模や激しさからみて延焼した地域では「回復には数十年かかる」という。
現在、地球の平均気温は1850年代より1度上昇しており、CO2の排出規制を進めても世界の平均気温は今世紀末までに約3度上昇するとされる。世界気象機関は、2019年の世界の平均気温は観測史上2番目に高く「今後重要なことはCO2や温室効果ガスの排出量をネットでゼロにすることだ」と指摘している。
なお、日本は国土の66%が森林面積(約2500万)となっており国土面積に対する割合は世界で17位と大きい。最近5年間の平均でみると山火事は1日当たり4件、年間1万4000件発生し、その消失面積は約800ヘクタール、損害額は5憶8000万円。日本は減少傾向で推移しているというが、山火事の恐ろしさを知っておくべきだろう。
【財界 2020年3月11日 第513回】
・参考記事
3月18日付のニューズウィークに以下の記事が出ておりましたので参考までお知らせいたします。
画像:コアラ acworksさんによる写真ACからの写真