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アメリカ大統領選にモノ申そう

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 11月3日に向け、アメリカ大統領選がいよいよ本格化してきた。民主党の大統領候補を選ぶ予備選がアイオア州を皮切りに始まったことでアメリカ政界は今後、大統領選一色に染まりそうだ。ただ民主党予備選は出足で集計のやり直しが行われるなどすっきりせず、候補者も乱立し、まだ本命が見当たらない。このままだと40%以上の貧しい白人層に固い支持を持つトランプ大統領が再選される可能性が強いとの見方も強まっている。

トランプ大統領は弾劾裁判で無罪を評決され「ようやく民主党魔女狩りが終わった」と一時間以上にわたり弾劾批判を繰り返した。しかしトランプ大統領ウクライナ疑惑は、結局、ウヤムヤに終わるなど、トランプ氏のやり方は民主党との対立、議会を混乱させてアメリカの政治、社会を分断させる結果となってしまっている。このためか、無罪評決が出た後には全米270カ所で数千人が抗議のデモに参加したという。また年初の演説でトランプ大統領を批判していた民主党ペロシ下院議長はトランプ氏の演説原稿を破り捨てる挙に出て激しい対立を国民の前にさらけ出した。

 “自国第一主義”を強調し、移民・難民の排除を声高に叫ぶだけでなく、気候変動やイラン核問題の国際合意から相次いで離脱、さらに一方的な保護主義貿易に走るトランプ大統領の任期がさらに4年も続くようだと、世界は大きく変質していくとみられる。ロシアや北朝鮮などの強権的な指導者に親近感を示し、逆に同盟国の韓国や日本の米軍駐留費分担金について大幅な増額を求め欧州などの友好国との協力も熱心でない。目先の損得とディール(取引)を外交方針とするトランプ氏の手法は、これまでアメリカを中心に自由世界陣営が進めてきた国際協調路線を根底から崩してしまう恐れさえある。

 その上、グローバル化現象で収入や雇用機会を巡る格差拡大や産業構造の変革に伴い各国間に不満が高まり、これらがポピュリズムを生む下地にもなってきている。

 こうしたことを考えると、今年のアメリカ大統領選でどんな潮流、思想が主流となり、誰が大統領に選ばれるかという問題は、単にアメリカだけの問題にとどまらず世界の動向にも大きな影響を与えるに違いない。世界が内向き志向にならず、自国第一の道から抜け出さないと、国際社会の成長と国民の繁栄や幸福は遠のくばかりだろう。

今年のアメリカ大統領選はその意味で世界の岐路を決めるものともみることができる。各国は世界の方向を決めかねないアメリカ大統領選に向けて明解なメッセージを発信することが重要ではないか。

 【財界 2020年3月25日号 第515回】

※本コラムは2月下旬の新型コロナウイルス感染症拡大前に入稿したものです。

■補足情報
・4月22日のロイターによると、イプソスがロイター向けに実施した世論調査によると、11月の米大統領選で重要州とみなされている激戦州3州で、共和党トランプ大統領が、民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領を追う展開となっている。

調査はミシガン、ウィスコンシンペンシルベニア3州の登録有権者を対象に今月15─20日に実施。それによると、45%がバイデン氏を支持するとする一方、39%がトランプ氏を支持すると回答した。

・22日の日経新聞全米自動車労組UAW)は21日、11月の米大統領選で民主党候補の指名を確実にしたバイデン前副大統領を支持すると表明したと報じています。

画像:画像:アメリカ合衆国議会議事堂・makoto.hさんによる写真ACからの写真

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