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コロナ時代の生き甲斐は?

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 5月に入り新型コロナウイルス(以下コロナ)の世界の感染者数が350万人、死者は25万人を超えた。アメリカ、スペイン、イタリア、イギリス、フランスまでの上位5ヵ国で世界全体の半数を超えている。5月7日現在、日本は15,253人、死者556人で世界と比べ極めて少ないが、これは日本の対応が良かったせいなのか、時間的に遅れているだけなのかはまだわからない。欧米では緊急事態を解除した国や地域もあるが、日本は初動対応の遅れにより1ヵ月程度延長してもう少し様子をみることになる。

 WHO(世界保健機関)が「緊急事態」を宣言し、国際社会に警告したのは1月30日。安倍首相はそれから2ヵ月以上経ってから緊急事態宣言を出した。日本の関心時はオリンピックにあった。その間に安倍首相がコロナ対策として発した発言は「全世帯にマスクを2枚配布」といった程度で、その配布マスクも途中で欠陥が見つかり回収騒ぎまで起こした。
 お隣の台湾では、中国武漢市が原因不明の感染症の発生を認めた昨年末に早くも武漢からの直行便で機内検査を始め、1月21日に感染症を見つけている。マスクも政府が全て買い上げ、一人が買える枚数を制限して行き渡らせたという。

 感染症パンデミックは今回が初めてではない。紀元前から天然痘、14世紀にはペストで2億人が亡くなっている。最近では100年前にスペイン風邪により4~5千万人、その後も70年代からエボラ出血熱エイズ牛海綿状脳症BSE)、ラッサ熱などが続き、免疫が出来て人類が抑え込んだとみられたマラリア結核なども再び出始めたとも聞く。

 エボラ出血熱SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、今回のコロナもコウモリのウイルスに由来し、新興感染症の4分の3までが動物が持つ病原体が人間の間で蔓延する人獣共通感染症だという。昔は地方の風土病だったものがグローバル化時代の到来によって瞬くうちに世界に伝染するようになったのだ。また環境破壊や気候の温暖化、人口爆発、都市化などによって現代の感染症は感染経路、原因などを探ることも難しくなっている。

 しかし何より1ヵ月以上も外出禁止となり、原則3~4人以上の集まりが制限される生活が続くと一体何を生活の楽しみ、生き甲斐にしていくのだろうか。仕事や対話はテレビ会議などで十分できるだろう。だが人間の生活はお互いの顔をみて、触れ合って生きているからこそ刺激もあり、想像力、創造性などが出てきて新しい世の中を作っているのだ。今後、コロナ禍が長く続く時に人間らしい生き方をどう作り変えられるかの知恵も出し合う必要があろう。
【財界 2020年6月10日号 519回】

※本コラムは5月上旬に入稿しております。
 日本は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除した後も、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県と北海道については都道府県境をまたぐ移動を控えるよう求めていましたが、6月19日に移動自粛要請を解除しました。


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