コロナに蹂躙(じゅうりん)される世界 ~見えない新型ウイルスの恐ろしさ~
「新型コロナウイルスの大きさは100ナノメートル、1センチの10万分の1しかない。光学顕微鏡では捉えることができない。研究者によると人類が世界に拡散するには6万年かかったが、新型コロナウイルスは2カ月で成し遂げた」(20年4月28日付日本経済新聞)という。まさにコロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、人類がここ10年以上かけて築き上げてきたグローバル化現象をあっという間に“巣ごもり状態”に変えてしまいつつあり、グローバル化の流れは終わったといえる。
コロナウイルスが中国政府によって検出され発表されたのは2020年の1月9日だった。20日に「人から人への感染」を認め、武漢市を事実上封鎖した。30日にWHOが「国際的な公衆衛生上緊急事態」を宣言し、翌31日にアメリカが最近中国へ渡航した履歴がある外国人および中国からの渡航者の入国を原則禁止にすると発表、次いでロシアが2月20日から中国、香港、マカオ国籍の人の入国を原則禁止、24日に中国が3月の全国人民代表大会の延期を決定した。
以後3月10日にイタリアが全土で外出制限、WHOが11日にパンデミックを表明、同日アメリカが13日から欧州26ヵ国に滞在歴のある外国人の入国を原則禁止に、13日にはトランプ大統領が国家非常事態を宣言。さらに17日以降EUが域外から外国人の入国を原則禁止、米カリフォルニア州で外出禁止令を発令、各国が死者数を発表しイタリアで死者数が中国を超えて世界最多に。夏の五輪延期決定、中国が28日から外国人の入国を禁止。
4月の世界の感染者数が130万人を超し、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると6月22日午後6時時点でアメリカの228万人以上の感染をトップにブラジル、ロシア、インド、イギリス、ペルー、スペイン、チリ、イタリア、イランの上位10ヵ国を含め世界で896万3439人に及び死者は46万8485人に達している。日本は上位30ヵ国に入っておらず1万7,810人(死者955人)と世界に比べると少ない。
■経済は大恐慌以来か
一方この新型コロナウイルスによって世界経済の成長率はIMFによるとマイナス23%に陥ると予測され、リーマン危機のマイナス0.1%よりはるかに深刻で1930年代の世界大恐慌以来の大不況になる恐れが大きいとされる。IMFによれば世界経済のGDP損失額は5兆ドル(540兆円)に及び、時価総額の損失は19兆ドル。今後回復に要する財政出動額は8兆ドルと見込んでいる。IMFはこれまで20年のGDPは90兆ドルと見込んでいた。
さらにILO(国際労働機関)は、世界の労働人口の4割近い12億人強が解雇や給与減のリスクに直面していると推計している。
日本では新型コロナウイルスの感染拡大で4月の休業者は597万人と前月の2.4倍に急増した。これはリーマン・ショック時の4倍近い水準という。業種別の生産、小売販売では4月の鉱工業生産指数は前月比9.1%低い87.1と3カ月連続の下落。全15業種のうち自動車が33.3%減と最も大きく、小売りでは百貨店が71.5%と大幅に落ち込んだが、巣ごもり生活の需要からスーパーだけは3.6%増と堅調だった。ホテル・旅館は前年同月比76.8%減と調査開始以来最大の減少幅で、外国人客は97.4%減、客室稼働率は48.1ポイント低い16.6%と調査開始以来の低さだった。
政府は今後、史上最大規模の財政出動で景気の落ち込みをとどまらせるとしているが、財政赤字が増える可能性があり、下手をすると金利の上昇を招きかねず、再び不況に逆戻りする可能性もある。政府に最も望まれるのは検査の充実とコロナ対策の新薬の作成に支援することだろう。
と同時に、世界的ウイルスに対応するには世界の連携が欠かせない。それにしては、アメリカと中国の対立が激しさを増し、コロナを巡っても言い争っている状況は困ったもので、日本は何らかの役割を担うべく動くべきだろう。特に第二波、第三波もありうる状況だけに世界の連携に日本は傍観すべきではない。
【TSR情報 2020年6月26日】
■参考情報
・完全失業者、緩やかに増加 5月の休業者なお423万人(日経新聞 6月30日)
雇用が一段と悪化してきた。5月の完全失業率(季節調整値)は2.9%と前月比0.3ポイント悪化し、完全失業者数は197万人と同19万人増えた。総務省によると、4月に600万人近くまで膨らんだ休業者の約7%が5月に職を失った。潜在的な失業リスクを抱えた休業者は423万人となお高水準で、今後も失業者や労働市場から退出する人が増える恐れがある。
・中国が新型コロナウイルスは「アメリカ病」と非難(ニューズウイーク 7月6日)
中国の国営メディアはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策を誤ったとトランプ政権を酷評し、この病気を「アメリカ病」と形容し、 トランプ積怨の失敗が世界に脅威を与える可能性があると警告した。
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