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安倍政権はコロナ対策への全力姿勢を示せ

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 安倍首相と西村康稔・経済再生担当大臣がしゃかりきになって旗を振った『Go Toトラベル』キャンペーンは完全に失敗に終わった。国民は旅行や観光より、今はいつ終息するか、と気に病んでいるコロナ感染対策に全力を挙げて欲しいと願っているのだ。経済対策より命が大事、という当たり前の事に気づかない政権では支持率が低迷したままの状態におかれているのは当然のことといえよう。

 政府が7月から実施しているGo Toトラベル事業について、世論調査の結果は「適切でなかった」が85%に達した(読売新聞調査)。「適切だった」はわずか10%にすぎなかった。Go Toトラベルで観光すると、旅行代金などを最大35%割引し、さらに旅行代金の15%分を土産物店や観光施設でクーポンとして使えるという内容だ。観光消費を刺激し経済の活性化を図る狙いだった。

 しかし、新型コロナウイルスに感染し重症化すると不安を感じている人は70%を超え、感じていないとする人の27%を大きく上回った。不安を感じている人の年齢も高くなるほど割合が上昇し、18~39歳は62%、40~59歳は72%、60歳以上は何と80%に達している。

 しかも今年のお盆期間中の帰省についても「自粛すべきだ」が76%に達し、北海道・東北では87%、最も少ない近畿、東京でも67%だった。さらに帰省先の自治体の首長が「できれば今年の帰省は遠慮して欲しい」と訴えるケースが目立ったのだ。大都市から帰省してコロナウイルスを持ち運んでくることや、そこからクラスター(集団感染)が発生することを警戒しているためだ。また帰省者も自分の帰省によって田舎に迷惑がかかることを懸念して「今年は帰省を取り止めます」という人も多かったという。

 こうした国民の不安に気付かず、クーポンなどのおまけをつけて帰省を促し、経済の活性化を図ろうという政府の発想はどうなっているのか問いたいぐらいだ。さらに助成の対象になっている観光業の人たちでさえ、無理に帰ってもらってコロナを発症されてはかえって困るし、地元の人に迷惑をかけてしまうと述べているのである。

 政府が今やるべきことは、コロナのワクチンを一日でも早く作り、国民に接種して安心してもらうことだろう。ところが肝心なコロナウイルスへの対策や指導力はさっぱり見えず、ようやく8月になって国民にわかりやすい指標を出し、悪くなる前に感染症対策、危機管理を行なう数値を出す方向になった。

 安倍首相は8月になって一ヵ月半ぶりに会見を行なったが、そこでも「緊急事態宣言の再発令については経済への悪影響について懸念しており、感染防止と社会経済活動との両立を図って考えてゆきたい」と歯切れが悪い。今はとにかく政府と医療界が一丸となってコロナウイルスの脅威を取り除く努力を見せることだろう。検査の強化や医療施設の充実、各国でのコロナ対策への連携などを国民にみせてゆくことが指導力を発揮すべき方向ではないか。PCR検査の人口千人当たりの累計検査数は、先進国のなかでは世界最低水準の5.57で、アメリカ152.98やイタリア108.51、韓国29.33などを大きく下回っている。2月の検査能力は、一日最大300件程度しかなく、4月に入って「1日2万件検査」を宣言したが、実際は8千件程度だったという。

 世界の感染者は8月18日15時時点で2188.2万人、死者が77万4000人に達しており、日本国内でも感染者は5万7000人、死者も1000人を超えた。しかし安倍政権と政府は感染防止に指導力を発揮していないとみる人は6割に上っているのだ。支持率が低迷し続けるのはむべなるかな、と思わざるを得まい。
TSR情報 2020年8月20日

 

■参考資料
・内閣支持32%、過去最低目前 コロナ対応「評価せず」6割―時事世論調査(時事通信 2020年08月14日)
 抜粋:感染が全国で再拡大する中、政府が観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンを7月下旬に始めたことについて、「早過ぎる」が82.8%を占めた。「適切だ」は9.0%、「遅過ぎる」は4.0%だった。 

画像:Go Toトラベル旅行者向け公式サイトトップ画像

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