巨大IT企業へ分割提案 米議会司法委が独占に警告
「GAFA」と呼ばれるアメリカの巨大IT企業の行為は、独占的支配が目立つので事業分割をすべきだと、アメリカの下院司法委員会や司法省の独占禁止法当局、連邦取引委員会(FTC)などが一斉に批判し始めた。ただ事業分割など大幅な規制強化には共和党が慎重なので実現するかどうかは、11月の大統領選挙、上下両院の選挙結果に左右されそうだ。
GAFAとはグーグル、アマゾン、フェイスブック(FB)、アップルのIT大手を指す。これらの4社は、市場での圧倒的優位な力を使って反競争的な行為を行ない経済と民主主義を脅かしてきたと、米下院の司法委員会は10月6日の調査報告書で弾劾し、事業分割などを提言している。下院の調査は1年4ヵ月に及び、GAFAの取引先の資料や押収した文書などは130万件に上った。
報告書によると、グーグルは検索サービスでユーチューブなど自社のサービスを優先表示するなど広告市場で独占的地位を利用した。アマゾンはオンライン市場のマーケットプレイスで出店企業のデータ・情報を利用して自社ブランドを開発し自社商品の販売を拡大した。アップルはアプリ配信サービスを独占して高額の販売手数料を義務付け自社のアプリサービスを優先提供した。FBは画像共有アプリ「インスタグラム」などを脅威とみなして買収し、膨大なデータをサービスの模倣や買収などに利用した──などを問題行為として挙げている。
報告書では4社はいずれも消費者と様々なデジタルサービスの仲介役となるゲートキーパー(門番)の立場を乱用し、競合他社に不当な契約を押し付けるなどして市場競争をゆがめてきたうえ、その強大な市場支配力が技術革新や起業を妨げてきたと断じている。これに対し4社はそれぞれ「企業買収は全ての業界で行われており技術革新を進める方法の一つ。SNS(ネット交流サービス)市場には激しい競争がある。競合企業による時代遅れで不正確な主張に基づく報告書には同意できない。手数料の水準は妥当だ。」などと反発している。
報告書はGAFAの規制を強く主張する民主党主導の委員会で作成されたが、共和党の委員は認めていないため、報告書の提言がそのまま実現するかどうかはわからない。ただ、司法委員会の提言とは別に、司法省はグーグル、連邦取引委員会はフェイスブックを独占禁止法違反で提訴する方針という。法律の成立には上下両院の承認と大統領署名が必要で、現在米議会の上院は与党共和党、下院は野党の民主党が過半数を占めているので、11月3日の大統領選挙と上下両院選挙の行方が左右することになる。
【財界 2020年11月18日号 第530回】
■参考情報
・欧州連合、IT大手を規制する2つの法案を発表 企業買収の事前通知や不適切投稿の迅速な削除を義務付け 2020年12月16日 IT media
欧州連合(EU)の欧州委員会は12月15日(現地時間)、IT企業を規制する「Digital Services Act(DSA:デジタルサービス法)」と「Digital Markets Act(DMA:デジタル市場法)」の2法案を発表した。EU人口の10%に当たる4500万人以上のユーザーを擁する企業を大手と定義し、規制対象とする。
SNS大手への規制をめぐっては、英国政府も同日、同様の法案を発表した。こちらは違反企業への罰金に加え、経営陣を刑事罰に問う条項も設定している。
画像:Wikimedia commons Googleplex Headquarters The Pancake of Heaven!さん