強くなってきた日本ラグビー エディー監督の言葉の魔術
ラグビーが面白くなってきた。世界的名将といわれるエディー・ジョーンズ氏が日本代表の監督に就任してから日本ラグビーが急成長しているからだ。まだなでしこジャパン、男子サッカーの方が注目されているが、2019年に日本で開催されるワールドカップで、世界の強豪を向こうにまわしてベスト8を目ざすと頼もしい。
エディ監督になって以来、2013年の正式な国際試合でウェールズ代表に快勝、翌14年にはヨーロッパ対抗戦の強豪イタリアも破り、世界ランキングは最高の9位まで上昇している。19年のワールドカップではイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランスなどの欧州勢、ニュージーランドの世界最強チーム・オールブラックス、そして強豪オーストラリア、南アフリカなどに伍して8位以内に入ることは、至難の業だ。 ただ最近のエディ監督率いるラグビーをみていると、だんだん「もしかしたら」という期待をもたせてくれる。男子サッカーより先に世界のトップクラスに躍り出れば、ラグビー人気は往年を上回るようになるだろう。
先日、エディ監督について書かれた『エディー・ジョーンズの言葉──世界で勝つための思想と戦略』(柴谷晋著、ベースボール・マガジン社)が発売された。読んでみると、これまでのラグビーの名試合が具体的に面白くエキサイティングに書かれているだけでなく、企業の経営戦略や目標設定、組織論、教育論、準備計画、規律論などと比較して書かれているので、卓越したマネージメント、コーチング、経営哲学論にもなっているのだ。 エディー氏はこれまで、ラグビーワールドカップでヘッドコーチとして準優勝1回、コーチとして優勝1回、また日本の東海大学、サントリーのコーチなどを務めている。そんな経験の中で日本ラグビーの本質や弱点、強みなどを様々なデータ分析や練習方法の工夫などでみつけ出し「体が小さいことは言い訳にならない。日本企業は敗戦の廃墟から世界の経済大国へ登りつめた。そんな企業経営戦略の中にラグビーにも通ずる大きなヒントがあるはずだ」と指摘し、本の中では約40の経営とラグビーに通ずる語録から〝世界で勝つための思想と戦略〟を披露しているのだ。
エディー氏の奥さんは日本人でエディー氏の日本への思い入れは人一倍であることが行間ににじみでている。また筆者の柴谷晋氏も茗渓高校時代に高校代表候補、その後フランスにラグビー留学、茗渓高の英語教員・同校ラグビーコーチを経て退職、母校の上智大学コーチの後、現在はトップリーグ東芝の専任アナリストに就任している。エディー氏とは長い交友関係があり、日本代表の合宿もみており、エディー氏とのインタビューを何度も行いまとめあげた本だという。読みやすい文章とエディーさんの独特のコーチ術を企業経営と重ねあわせて書いたところに、読者はラグビー、経営戦略の共通性を理解し、日本ラグビーの未来に希望をもつのではないか。
【財界 夏季第2特大号】