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【見過ごせない世界の“難民問題”】~問われる日本の対応~

ドイツのメルケル首相が「難民問題」は欧州各国が公平に分担し負担すべきだと主張しはじめた。中東やアフリカの難民は、様々なルートを活用して欧州で一番豊かなドイツを目指すケースが急増しているからだ。
今年のドイツへの難民申請者数は、戦後最高の80万人に達する見込みといわれる。このため国内の保護施設は満杯だし、巨額の税金も使用されている。また国内の治安も悪化の傾向をみせ、賃金の安い難民労働力の増大でドイツ人の賃金や求職にも影響が出始めているのだ。

難民たちがドイツを目指しているのは、欧州域内の人々の自由な移動を定めている「シェンゲン協定」を締結しているためだ。同協定はひと言でいうなら国境検査なしに国境を自由に越えて移動できるというもので、イギリスやスイス等を除くEU各国はこの協定を締結しているので、EU内を自由に移動できる。そこで中東やアフリカからEU内に足を踏み入れた難民は、直ちにドイツを目指しているのだ。ドイツ行きの列車は隣国のハンガリーで超満員となり、一時的に発車をやめているほどだ。

難民の多くは内戦が続くシリアと内政の混乱しているアフリカ東部のエリトリア出身者が多く、アフリカ北部から地中海を渡ってゆくケースと、トルコからバルカン半島を経てEUに入るルートがあるとされる。普通は欧州の第一到着地にある難民センターで難民審査を行ない、本当の難民か不法入国者を審査することになっているが、第一到着国のイタリアやギリシャは難民センターが足りず、申請処理が出来ずそのまま欧州諸国内に散らばってしまう実情にあるようだ。

ドイツはかつての第1次、第2次大戦などで他国に迷惑をかけた償いもあって、これまで難民の受け入れを大目にみてきたが、さすがに最近の人数の多さに国内の不満が高まり、排他運動まで目立ち始めてきた。

難民受け入れは国際的な人道支援の一環とされているが、メルケル首相は「ドイツだけが多くを背負うのは不公平だ、各国が公平に負担を分かち合えないなら、域内の移動の自由を認めているシェンゲン協定の見直しも検討課題になる」と牽制し出した。ただ、欧州内の移動の自由を認めたシェンゲン協定は、EUのシンボルとみる国も多いだけに取り扱いは厄介である。

一方、日本も実は難民条約に加盟しており、難民受け入れの義務を負っている、しかし、日本は難民の認定が極めて厳しく、国際的にも批判されている。2014年度に日本に難民申請した人数は5000人を超えたが、認定した人は11人しかいない。2013年の統計だとアメリカは21000人、ドイツは11000人、フランス9000人などと比べると先進国の中では極めて低い。

2014年末で世界の難民は5950万人いるとされ、このうち1950万人が母国を離れている。2014年末ではシリア難民が388万人で最も多いとされ、次いでアフガニスタンの259万人、ソマリア110万人などとなっている。

日本はいま“国際化”や“多様性”の重要性が各方面で叫ばれているが、依然国際化も多様性も遅れた国だと国際社会からは見なされているようだ。

【Japan In-depth  2015年9月19日掲載】

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