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日本生かせ アイデアはある

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「保育園落ちた。日本死ね」
「1億総活躍社会じゃねーのかよ」

 春の新学期を前に公立の保育園に入れない乳幼児がことしも多い。「子育て支援」「日本人1億人が総活躍できる社会に…」などと政府のスローガンは華々しいが、現実は合格できても家から遠く送迎が厄介だったり、2~3人の子供をもつ親が別々の保育園に行かざるを得ないケースもあるようで、時間と労力の負担も想像以上だ。私立だと、費用は公立に比べ1万~3万円は高いという。

 高齢化、人口減少社会がどんどん進む中で、政府は「子供は宝だ」という。しかし、いくら政府や自治体がスローガンを叫んでも虚しく響くだけ。もはや政治や役所にまかせられないという不満がネット上で炎上したのだ。炎上したのは、安倍首相が国会で「実際にどうなのかということは、匿名である以上、本当かどうか確かめようがない」と疑惑の発言をしたのがきっかけだ。すると「私も落ちた」とたちどころに反論の声が飛び交ったのである。

 それにしても「日本死ね」「1億総活躍社会じゃねーのかよ」などのコピーは強烈だ。政府や自治体、お役所の言い分は〝もう沢山。スローガンはいいから、子育てを安心してできる環境を作ってくれ〟というイライラと怒りの本音が実にストレートに短い言葉に込められているので一挙に共感の声が広がったのだろう。

 中国も人口減少時代に入り始めたので〝一人っ子政策〟をやめると宣言した。しかし実際に2人以上の子供を産む世帯は33割にも満たないようだ。共稼ぎ世帯で2人を育てるのは難しいのだ。多くの親は子供を2人以上欲しいと思っている。それが実現できない環境・家庭事情があるのに為政者はその現実を深刻に受け止めずに軽々しく「出生率を1.8人に伸ばし2080年には人口1億社会に戻したい」などというから〝日本死ね〟と反論したくなるのだろう。多分、こうした感覚は政治家や私立などに入園させられる恵まれたサラリーマン、コネを使って裏口から何とか入れられる、などと思っている人種には〝死ね〟という怒りは到底伝わるまい。

 3月13日付毎日新聞によると、都内保育所の倍率は22倍以上で「申込みが想定以上にふえた」というイタチごっこが20年以上続いているそうだ。夫婦で働いている家族に対しては、支援額をふやすバラマキ対策だけでなく、駅舎を中階層にして保育所、スーパー、市町村役場の支所、医院なども入れるよう鉄道会社と協力しあうなどの案も検討したらどうか。ライフスタイルの変化にあわせ保育所や買物、交番、医院、老人の集会所などを整備していかないと、1億総活躍どころか〝日本死ね〟の声はますますふえよう。
【財界 2016年4月19日号 第421回】

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