TBSラジオ「人生百景」よもやま話―私の会った人々① 宮川大助・花子さん―
私がインタビューアーを務めるラジオ番組『嶌信彦 人生百景「志の人たち』(TBSラジオ / 提供・NTTドコモ)が毎週日曜日の午後9時半から放送されている。前身の「嶌信彦のエネルギッシュトーク」(同時間帯)から数えるとすでに13年を過ぎ、ゲストは450人近くに上る。人生の挫折、失敗などをどう乗り越えてこられたのかといった話題を中心にその人の「志」を聞く番組だ。
これまでもたまに感想を書いてきたが、記録に留めたい話も多いので、今後は過去や最近収録したゲストの記憶に残る話をメモにして残していきたいと思う。これまでゲストに学者、文化人、芸能人、役者、小説家、スポーツ人などあらゆる分野の方に登場頂いている。これまでのゲスト一覧はこちらに掲載している。
今回は先日収録し、次回15日、22日の2回にわけて放送される予定の「宮川大助・花子」さんの話を紹介したい。
ご存知、関西の夫婦漫才の第一人者だ。ひと言でいうと”あったかい夫婦”だった。
舞台を見ているとけなしたり、どついたりしているが、楽屋で話を聞いていると二人はともに惚れあって、暇な時は生駒の農園で野菜などを作り人生を楽しんでいるようだ。激しい言葉のやりとりはあるが、互いに信頼し合い、夫婦仲の良いことが感じられるから、お客さんは安心して心から笑っているのだろう。
しかし、今日までに離婚の危機もあった。真面目な大助さんがほとんどの台本を書き、練習するのだが、当初はその稽古が厳しく、花子さんは自立神経を患い、1987年に入院。翌年ガンを患った。漫才をやっていても面白くなくなり、ある時「離婚届け」にサインして大助さんに渡した。生活も荒れ、ケンカになった。
花子さんは「病気の私は彼に必要ないじゃない。私別れてもええで…。もう看病せんでもええから」と言ったのだ。すると大助さんは「お前、アホか。俺を甘くみるな。自分の選んだ嫁をこんなこと位でお前を捨てて逃げるような弱い男と違うぞ。オレは雑草、あんたはヒマワリでいればいいんや。お前はまだ俺を好きか」「好きや」「俺も好きや」と言って花子さんを叩いた。「痛いか。叩いている俺の方がもっと痛い。好きな者同士が一緒にいて何でこんなになるんね」
二人は泣きながら、家の中のモノも壊した。しかし「心の安らぎが戻ったなら安いもんや」と笑いあったという。
花子さんは3ヵ月の闘病生活を終え、89年1月に退院。再発の危険のある5年間を過ぎ再びパワーアップしつつも舞台以外ではゆったりとした田舎ぐらしを親子3人で過ごしている。舞台で見るお二人とは全く違った一面を見せてもらった。