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ジャーナリスト嶌信彦のコラムやお知らせを掲載しています。皆様よろしくお願いいたします。

本日のTBSラジオ「日本全国8時です」の内容~日本とウズベキスタンの文化交流報告~

スタッフです。
本日の「森本毅郎・スタンバイ」の「日本全国8時です」の放送内容をお届けします。

テーマ:ウズベキスタン取材から考える、日本と中央アジアの今後

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先週の放送をお休みした間、8月2日から6日までウズベキスタンに行ってきた。実は以前もこの放送で紹介したが、5月にも本田財団の環境と技術というテーマのシンポジウムに参加する為ウズベキスタンを訪れている。


中央アジア5ヵ国との交流の促進】
今回の訪問は国際交流基金による文化事業が目的。昨年10月に安倍首相が中央アジア5ヵ国をまわり、そのフォローアップとして「中央アジア文化交流ミッション」を派遣。その一員としてウズベキスタンを訪問した。これは、今後カザフスタンキルギスタジキスタントルクメニスタンをまわり、中央アジア5か国との交流を深めていくことを目的としたものである。

当初、団長を固辞していたが、これまで民間でウズベキスタンと交流を続けてきたので適任と多くの方に推され団長として参加。参加されたのが元駐ウズベク大使の河東哲夫さん、中山恭子さん、デザイナーのコシノジュンコさん、東大名誉教授の小松久男さんなど錚々たる面々で嫌だと断わっていたが、最終的にはやむをえず受諾した。

NHKニュースにて今回の訪問に関するニュースが報じられております。以下リンクをクリックすると別ウィンドウで記事を閲覧できます。
「首相夫人らウズベキスタンで日本人抑留者を追悼」


ウズベキスタンで活発な意見交換を実施】
滞在中は文化人会議、メディア視察、若い世代、特に日本に留学経験のある方々との討論会などを実施。出席された若い世代の方の中には非常に成功している人も多く、そういう意味でも非常に面白かった。さらにコシノジュンコさんが衣装をデザインされた和太鼓TAO(タオ)の公演も超満員で、大変な人気を博していた。

NHKニュースにてTAOの公演に関するニュースが動画にて報じられております。以下リンクをクリックすると別ウィンドウで記事を閲覧できます。
「ウズベキスタンで和太鼓の公演」

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※画像はウズベキスタンの次世代リーダーとの意見交換(国際文化キャラバンサライにて)


親日の象徴「ナボイ劇場」】
TAOの公演は日本兵捕虜が作ったことで知られる「ナボイ劇場」(※1)にて行なわれた。「捕虜とはいえ後世に日本の恥となるような建築は作らない仕事をしよう。」という意気込みで日本人が建設に携わった劇場。ウズベキスタンにきていたイタリアやドイツの捕虜は「捕虜なんだからそんなに仕事をする必要はない」と言い、さぼった人も多かったようたが日本人は勤勉に働いていた。

当時から日本人の働きぶりは素晴しいと言われていたが、1966年にウズベキスタンで大地震が起り、約8万棟の建物が崩壊、官庁街も全て崩れていたがこの「ナボイ劇場」だけが凛として建っていた。そしてここがタシケント市民の避難場所となったことから、「日本人伝説」が広まっていった。そして、日本人を尊敬し、友好関係を築くきっかけになったのであった。ナボイ劇場は昨年秋、改修工事を行ない、一段と綺麗になっている。

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※ナボイ劇場正面


【日本を国づくりのお手本に】
ウズベキスタンから日本への留学生も非常に多く、日本人は途上国から先進国に追いつき追い越したという歴史があることから1991年にウズベキスタンソ連から独立した際に「日本に国づくりを学ぼう」という流れが中央アジア全体にも広まった。そして、今なおシルクロードの日本人伝説は、中央アジアで語り継がれている。

最近の日本との関係は、中国、韓国と比べると少し遅れをとっているように感じる。
各国の比較は以下の通り。
■進出企業
 中国(580社)、 韓国(410社)、日本(10社)
ウズベキスタンにいる在留人数
  中国(1500人)、 韓国(2000人)、 日本(110人)
■貿易額
  中国(47億ドル)、 韓国(20億ドル)、 日本(2億ドル)

過去の歴史を遡ると千数百年前の日本はシルクロードの東の端の国で、奈良にシルクロードの文化・文明が伝わった。その後日本は鎖国を続け、先進国に目が向いていたこともあり、ここ1000年位は中央アジアに対して目が向いていなかった。ようやく最近になって状況が変わってきたといえる。


【成長著しいウズベキスタン
中国、韓国がこれだけ進出しているということは、それだけウズベキスタンという国にはメリットがあるということ。ウズベキスタンはかなりの成長市場で、7~8%の成長率。同時に、ガス、石油、天然ガスレアメタルといった地下資源が非常に多いことでも知られている。ただ、昔からインフラ整備がきちんと行われておらず、内陸国であることから資源を中国やロシアには輸出することはできたが、それ以外の国に輸出することができなかった。最近は中国のパイプラインを使い、日本にも輸出が可能となったことで成長が非常に強まってきたといえる。

人口は私が初めて訪れた1996年は2300万人だったが、現在は3200万人にまで増加。今後10~20年の間に中央アジア全体の人口は1億人位を見込んでおり、日本と同様の大きなマーケットとなることから中央アジアは非常に注目されている。


イスラム過激派の封じ込めに成功】
企業にとってみるとテロの心配があるように思える。確かに過激派ISの影響は中央アジアにも拡がっている。先日、カザフスタンでISによる銃撃事件があったが、ウズベキスタンイスラム過激派の封じ込めに成功している国。イスラム教徒に寛容な政策をとり、過激派に対しては徹底的に厳しい対応をとっている。入国管理や税関もかなり厳しく、そのために普通の旅行者もかなり迷惑するということがあるが国内の治安を守る体制は整っている。

その反面、この規制の厳しさがビジネスのやりにくさにもつながっており、日本企業が進出しようとした場合、国外への外貨持出し等の弊害により進出することが厳しかった。最近は、徐々に自由となりつつあるというのが実態。ただ、外国企業の進出は一業種一企業との制限があり、世界銀行のビジネス難易度のランキングでは87位。この辺をどうやって開放していくのかというのが、ウズベキスタンの課題である。


【期待が高まるウズベクとのネットワーク】
現在、日本企業ではいすず自動車が進出し、トラックやバスを作っている。また、最近では三菱グループが肥料工場や水力発電所を作る契約をとり、これから日本企業がインフラ事業、食品、肥料、農業といったところに相当進出する可能性があるように思う。

そういう意味では「親日感」を味方にするというのは非常に有効的で、私が会長を務める日本ウズベキスタン協会がこれまで付き合ってきたウズベキスタンの留学生たちは、国に帰り国会議員やビルを作るゼネコンの社長、学者などになった人たちなど優秀な人材が相当いる。今回、そういった若い人達10人と会って、今後日本との関係を強化するための流れやネットワークを作ろうと約束してきたのでかなり良くなってくるだろう。

さらに、筑波大学名古屋大学ウズベキスタンに支局のようなものを作り、日本の法律を教えようという動きもある。そういう意味では、日本の文化交流も相当強くなってきていると言える。そして、昨年10月の安倍首相訪問のフォローアップも充実し始めてきたようにも思う。

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※画像は観光名所としても有名なサマルカンドの「レギスタン広場」


【観光のみならず経済面にも注目を】
今後中央アジアは重要なポイントとなるだろう。今後は、中小企業の技術を教えることによって日本と中央アジアの関係はさらに良好なものとなるだろう。1億人市場になると、日本から輸出もできるようになると思われる。今後は、ただシルクロードにあこがれると言うだけではなく、経済的な面からもみていただけるとありがたいように思う。

観光は非常に人気で先に述べた通り、ある意味で安全なところであることからオススメな場所でもある。

(※1)「ナボイ劇場」建設秘話については嶌が昨年9月末に日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」(角川書店に詳細を上梓しております。ご興味をお持ちの方は本書の特設サイト がござますので、合わせて参照ください。

※トップの画像は今回参加された安倍昭恵様のフェイスブックに掲載されたものを掲載しております。
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