米・英製の家庭用掃除機が話題となっている。ひとつは米・アイロボット社の自動掃除機「ルンバ」。人工知能が搭載されており、まず部屋全体の状況を調査し、どのような手順、方法で掃除するかを考え、クリーニングに入るという。掃除機の中にカメラが入っており汚れ具合や部屋の形状、段差などを事前に把握し、一人で勝手に掃除するわけだ。掃除を終えると自ら充電器に戻り充電も行なう。
元々がロボットメーカーだから自走は得意で、そのロボットに必要な人工知能を組み込んだところがミソのようだ。共稼ぎ世帯にとっては、留守中に勝手に掃除をしておいてくれるのでかなり利用する人が増えているという。初めてお目見えしたのは10年以上前の2002年。TVコマーシャルに流れた時はオモチャのように見え、部屋の隅やテーブル、椅子の下などもきちんときれいにしてくれるのか、と首をかしげた人が多かった。部屋が狭くゴチャゴチャとモノを置く日本家屋には不向きとみられたのだ。
ところが、いろいろ改造されたこともあって2010年頃から急速に認知され始めた。それまでは年間4万台程度だった販売台数が2010年には10万台を突破。以後毎年10万台ペースで増え、2013年には47万台まで急増した。以後も毎年30万台以上売れ、まだまだ普及する可能性があるらしい。価格は10万円前後なので30億円市場を軽く超えているのである。
もうひとつの商品は専門メーカーの英・ダイソン社だ。こちらも最近コマーシャルでよく目にするようになった。利用している知人に聞くと、吸引力などがまるで違い、さすが専門メーカーだと感心していた。価格は日本製品の2倍以上もする高級志向だが、ジワジワと人気が出ているという。
米・英製掃除機の進出で、日本の家電各社は、掃除機にも新しい需要が掘り起こせるとみて次々と新機種を投入し始めている。パナソニックの「ルーロ」は本体を三角形にして部屋の隅をていねいに掃けるようにしたり、日立の「ミニマル」は小型化を追求し、狭い場所にも入り込める工夫をした。シャープの「ココロボ」は、人と挨拶も交わすことができる会話機能まで取り込んでいる。日本メーカーは日本人の感性や住宅事情を考えた新技術を開発して対抗しているが、米アイロボット社は、日本の生活に多い拭き掃除に目をつけ、水拭きのできる新製品まで出した。
日本の消費不況について企業関係者は「最近は欲しいものがなくなっているようだ」と嘆くが、どこの家庭にもある掃除機で新風を巻き起こした米・英社の発想は、元来日本メーカーが得意としてきた発想と技術開発だったのではないか。
【財界 新春特別号・2017年1月10日号 第439回】
※トップ画像はアイロボット社サイト「ルンバ」紹介ページより。
下の画像はダイソン社サイト「掃除機」紹介ページより。