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覇道の解散 動乱の兆しも 

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 衆議院の総選挙が面白くなってきた。安倍首相が解散宣言した時は、野党がバラバラで勝負にならないとみる向きが多かった。

 しかし小池百合子氏が「希望の党」の代表となって戦うと宣言した途端、野党勢力がまとまり始めた。東京都議選自民党を惨敗に追い込んだ印象はまだ国民に生々しく残っている上、枝野氏が左派新党をつくりスッキリした。

 今回の解散は与党の都合ばかりがみえて日本をどうしたいのか、という大義が見えにくかった。今の日本は、株価や失業率、企業収益などのパフォーマンスも決して世界で悪い方ではない。にも拘わらず、バブル時代のように世界に“日本買い”の動きは出てこない。要するに“人気”がないのだ。世界の先頭を走っているというイメージが見当たらない。

 アメリカは、アップル、マイクロソフト、グーグル、電気自動車のテスラなど気になる企業が多い。政治ではトランプ大統領の“オレ様第一主義”は鼻につくが、何を仕出かすかと常に気になる発言を次々とぶち上げるので世界中が常に注目する。

 バブル時代の日本はとにかく経済で突出し、日本式経営がハーバード大学の研究対象になるほどだった。日本はアメリカ、ヨーロッパの企業を次々と追い落とし、常に経済摩擦のタネをつくっていた。しかも当時の新興国の中国、東南アジアはまだ競争力がなく日本の一人勝ち状態だった。

 いまは、ちょっと株が高くなって注目されないし、世界を驚かすような商品や発明もない。

 かつてはソニートランジスタラジオやウィークマン、シャープの電卓など日本のメーカーが世界の話題になるような商品を次々と出したものだ。世界のどの飛行場に行っても乗降通路にはデカデカと日本商品の広告があったし、欧米のテレビでは日本商品が常に映り、旅行中も日本にいるような気分になった。今やその座は中国などに奪われた。

 そんな時、日本で与党が大義の見えにくい解散を打っても、何の興奮も感じないだろう。

 逆に、都議選で鮮やかな大勝を演出した小池氏が、国政にも“希望”を掲げて打って出たことで、“また何かが起こる”という予感を与えているのではないか。だから野党が相乗りしたがっているし、自民党の現職副大臣までが離党して馳せ参じてきているのだろう。

 もし自公の与党が50議席前後になったり、よもやと思うが過半数割れなどしたら安倍政権は終わり、本当に日本は“リセット”されることになろう。安倍首相の大義のみえにくい解散権行使は日本政界に大動乱を引き起こす可能性が出てきた。
【財界 2017年10月31日号】

※なお、このコラムは10月17日発売の財界誌に掲載されたものです。衆院選の結果が出る前のコラムですので結果が出る前のものです。一部状況が変化しておりますので、ご了承下さい。
画像:立憲民主党サイトトップのキャプチャー

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