2018年は世界の構造変化に備える年に
2017年は"動乱の年"だった。では、2018年は動乱から安定・躍進の年に成り得るのだろうか。現状を見る限り、動乱状況はまだ2ー3年は続き、各国は自ら自国の行き方を模索しなければならない年になりそうだ。
動乱を引き起こした要因の第一はトランプ米大統領の登場だ。少なくとも戦後70年は、アメリカが掲げた自由、民主主義、人権などの理念が戦後の普遍的価値として、対抗的だった旧ソ連の社会主義的価値や理念とこれに基づく経済体制、安全保障に勝ることを実証した。1990年の冷戦崩壊とそれに続く社会主義圏の解体、さらには世界のグローバル化現象は米ソ二大勢力時代の終わりを告げたかに見えた。
しかしグローバル化、IT社会の進展、超低金利時代の到来などは世界経済に新たな混乱を招いた。そこへ登場したトランプ米大統領は多くの自由主義国が信奉してきた戦後の普遍的価値をいとも簡単に否定し、アメリカ・ファースト主義を唱えだしたのである。
その結果、多国間の貿易協定入りを拒否し、環境保護の協定からも離脱すると宣言、今後の経済協定は二国間取り決めを主体にすると主張し始めた。さらに安全保障の各国分担の増額を要求。パレスチナの米国の中立的立場をかなぐり捨てエルサレムをイスラエルの首都と認める宣言を出し中東に混乱を引き起こす状況まで作り出した。
他方でEUではイギリスがユーロからの離脱を決めEUの一体化が崩れ出したし、中東ではサウジの王族の内紛や脱石油化、工業化への動き、イランとの国交断絶などで混乱が続いている。アジアでも北朝鮮の核開発が止む気配はなく、中国など近隣諸国の抑制に耳を傾ける動きもみられず米朝戦争の緊迫化が続いているのだ。
しかも米ソ、あるいはアメリカの一極支配の統制はゆるむ一方で、代わって中国が海洋国、空の支配、サイバー分野、宇宙などに着々と力をつけているのが実情だ。ロシア、トルコ、フィリピンなどに一強支配の統治者も次々に出現、世界はだんだん無秩序になってきたというのが2017年の特色といえる。
そんな中で、超低成長ながら世界経済が比較的安定しているのが救いといえる。しかし世界の政治が一角でも動乱期に入れば株、為替、金利なども一挙に混乱し世界に伝播してゆくに違いない。まさに世界は砂上の楼閣の上にあるようなものなのだ。
安倍政権はアメリカと歩調をあわせていれば安心だという幻想を何度も口にしているが、アメリカにハシゴをはずされ苦い目にあった経験は鮮烈だ。日本も自分の足で立つ時だろう。
【財界 2018年1月30日号(1月16日発売) 第463回】
※本コラムは昨年末に入稿しております。トランプ大統領は昨日のCNBC社番組内のインタビューにてTPPに関して「今より良い条件になるのであればTPPに参加する可能性が十分にある」と述べていますので補足情報としてお知らせいたします。